INTERVIEW
vistlip
2021.04.26UPDATE
2021年04月号掲載
Member:智(Vo) 海(Gt)
Interviewer:杉江 由紀
-先ほど、「Act」について海さんは"この時期にこのタイアップありきで作った、というのは大きかった"と発言されていましたけれど......過酷なコロナ禍を生き抜いている小学生たちはきっと、TVアニメの映像と共に流れてくるこの曲に対して、明るい希望の光や力強さを感じてくれるはずです。
海:そういうふうに感じてもらえるのは非常に嬉しいです。ありがとうございます。
-そして、「Act」がこれだけ明確な意志を持った曲に仕上がったのはメッセージ性のこもった歌詞がそこに乗せられているからだとも言えそうです。智さんは何を思い、何を伝えるべくこの歌詞を書いていかれたのですか。
智:前提として意識していたのは"少年たち"のことでした。彼らに向けての言葉として夢について描いてますし、同時にvistlipの智が今どんなスタンスで自分たちの夢を追い続けているのか、その過程で今どんなことが起きているのか、ということも詞にしていきました。あと冒頭とかで使っている火花という単語に関しては、自分の中にある行動のスイッチが入ったときにしか為し得ないことっていうのもあるよ、ということを表したものですね。それってパッと火花が散る瞬間に似てるな、って思うんですよ。
-鮮烈ではあるけれども、どこか刹那的なものでもあるという意味で火花という言葉を使われているのですね。
智:自分に火がつく瞬間そのものは誰にでもあるのかもしれないけど、意外とその火花はすぐ消えちゃうこともあるし、そのうち火花のこと自体を忘れかけちゃったり、どうでもよくなっちゃうことなんかもあったりしてね。でも、ひとつひとつの火花を大事にしていけば、それがいい意味での欲とか向上心というものに繋がっていくんじゃないかと思うんですよ。いずれにしても、最初の火がついて火花が散る瞬間を大切にしてほしいなっていう思いでこの詞は書きました。これはコロナ禍やここ数年で自分自身が感じてきたことでもあります。
-それだけに、この歌詞には含蓄とリアリティが色濃く滲んでいますね。小学生にわからないような難しい単語は出てきませんが、ここに託されているメッセージ自体は大人の私たちにとっても深く響くものになっていると感じます。
智:思い通りにいかないことなんかは、おそらく誰にでもあるでしょうしね。悔しい思いも悲しい思いもいろいろしてきて、時には周りの他のバンドが活躍しているのを見て嫉妬したりなんていうこともありましたけど、結局それって自分のバンドが好きだし、音楽を愛しているからこそ負けたくないっていう気持ちの裏返しなわけです。自分の根底にはその気持ちが常にあるんだなって、この詞を書いて改めて感じました。
-作曲者である海さんからすると、「Act」の歌詞がこのように仕上がったことに対してはどのように感じていらっしゃいます?
海:前向きな歌詞にしてほしい、っていうことと熱さのある歌詞にしてほしい、というオーダーはもともと番組側から貰っていたというのもあるとは思うんですけどね。その本筋を踏まえつつ、これは僕が思っていた以上にわかりやすい言葉がたくさん詰まった歌詞に仕上がったなって思いました。
智:今回はしっかりと"アニソン"にしたかったからね。わかりやすさは重視しましたよ。
-そうした一方、この曲ではTVサイズにはない後半部分で海さんによるラップが繰り広げられていたりもしますが、これを入れた理由はなんでしたか。
海:あれは仮歌詞というか、曲を作った時点で自分の中で浮かんでいた言葉たちをベースにしてレコーディング前に新しく構成したものですね。ここで言ってることのイメージは今回MVの映像とかジャケットのデザインにも生かしていきました。つまり、わかりやすさは前面に出しつつも掘れば掘るほど......っていうウチらしい仕組みもちゃんと作ったんですよ。
-今回のシングルでは【vister】盤にMVがついておりますので、そちらもチェックしていただきたいところですね。
海:ただ、MVでもそこまで直接的な表現はしてないですけどね。歌詞がわかりやすいぶん、あえて映像のほうはわかりにくくしました。あと、この曲はある意味ちょっと歌もわりとわかりにくいかもね。特に最後のほうとか、歌詞見なかったら"何言ってるかわかんねー"ってなるから。でも、そこがまた智っぽいっていう(笑)。昔からvistlipを聴いている人たちからしたら"懐かしい、この感じ!"ってなるんじゃないですかね。
智:歌詞を詰めたらああなっちゃった(笑)。でも、どうしてもあの言葉を入れたかったし、今回ここでこの歌い方ができて良かったと思います。
-なお、そうした智さんの歌を彩っているのが楽器隊のみなさんの放っている頼もしいバンド・サウンドということになりますが、海さんから各パートに対して何か具体的にお願いをしたことはありました?
海:瑠伊(Ba)には"いつもどおりで"って言いました。あと、俺のラップが入っているところは"あれはベース・ソロのほうが主役だからね"とも言いましたね。Yuhは今回デモのアレンジ段階でコード進行のアドバイスをいろいろくれていたので、イントロとサビとギター・ソロではそれを活用させてもらいました。録る段階では"もっとギターで闇を切り裂いてほしい"みたいなことは僕からLINEでメッセージを送りましたけど、Yuhはリアルにそれを音で表現してくれるからすごいんですよ(笑)。
-Yuhさんが海さんの思いを汲み取ってくださったのですね。素晴らしい!
海:ほんと、これはありがたいことですよ。逆に、メンバーのみんなに汲み取ってもらえてなかったらここまでの曲に仕上げることはできてなかったですし。そういえば、今回Tohyaには怒られましたもんね。"このデモじゃ意味がわからない!"って。
-あぁ、先ほどの"できたデモは歌とドラムがズレてた"という件ですか。
海:自分としては、なんとなくブレイクビーツっぽい感じを想定しながら打ち込んでたんですけど、なかなかそうはならなくてそれをそのまま渡しちゃいましたからね。自分で聴き直してもあれは"意味わかんなかった"し、そこに関してはTohyaだけじゃなくて瑠伊もYuhも"わかんない"って言ってました(苦笑)。
智:メンバーみんな、"ふざけてんのか!"って怒ってたよね(笑)。
海:普通にめっちゃ怒られましたよ。タイアップ決まってるのにどうするんだ! って。そこからはみんなの力を借りながら、この完成形へと至ったわけです。
-「Act」はアニソン然とした明解さは漂わせつつも、vistlipならではの躍動感あるバンド・サウンドをたたえた逸品に仕上がりましたね。
智:僕らとしても、そこは必ず伝わってほしいなと思うところです。
海:激ロック読者の方に向けて言っておくなら、「Act」はTHE ORAL CIGARETTESとかELLEGARDENみたいなギター・ロックとかラウド系を聴く人にも親しんでいただける音になってます。そして、ヴィジュアル系に造詣が深い方たちには「John Doe」も楽しんでいただけると思いますね。
-そんなこのシングルに、"Act"というタイトルを付けた理由についてもぜひ教えていただけますか。
智:行動すること、演じること、フリをすること。Actっていう単語の持つほとんどの意味が、この曲とこのシングルにはあてはまるなと感じたからですね。タイトル自体はシンプルなんですけど、この言葉はわりと試行錯誤しながらたどり着いたんですよ。
海:みんなで何時間も話し合ったもんね。
智:それなのに、最後になって俺が突然それまで出てなかった"Act"って言い出したんです(笑)。自分の中ではこれしかない! って思えるタイトルになりました。今の時代っていうものを考えても、この言葉しかなかったですね。
-かくして、vistlipにとっての次の"Act"はいよいよ再開したライヴ活動ということにもなってくると思います。ツアー"Good vibes CIRCUIT ZERO"もすでに始まっていますし、今年こそは結成日7月7日に行われる恒例のワンマンも開催することに......?
海:まだこの取材の段階では正式決定してないですけど、今年はやれるならやるつもりではいます。あと、今やってる"Good vibes CIRCUIT ZERO"はいわゆる定期ライヴで、アルバム・ツアーみたいなコンセプト性とかは度外視した、ラフなライヴそのものを楽しむ場としてやってるものなんで、激ロック読者の方にはこちらもおすすめですよ。決め込んだ衣装とかも着ないし、派手なメイクもしないので、音そのもので勝負しますから、7月7日以上に初めて来ていただくには最適なライヴかもしれません。まぁ、いずれにしてもコロナ禍以前とは違うやり方のライヴにはなりますが、それが限りなく気にならないくらいのパフォーマンスを展開していきたいと思ってます。みんなが"やっぱり来て良かったな"って思えるライヴをしていくようにしないと。
智:今だからこそ、みんなに楽しさをいっぱい感じてもらえる空間を作っていきたいよね。