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INTERVIEW

vistlip

2020.12.21UPDATE

2020年12月号掲載

vistlip

Member:智(Vo) 海(Gt) 瑠伊(Ba)

Interviewer:杉江 由紀

-今作『MEMENTO ICE』は、手塩にかけたベスト・アルバムとなったようですね。

智:ドラムやシンセとかの打ち込み系の音もミックスで"今"に近づいたし、ヴォーカルに関してもリミックスしてるものは細かく最初からの作業をやってますから、仕上がったものに対しての満足感も高いです。

瑠伊:前より聴きやすくなってるし、クオリティはだいぶ上がったと思いますね。ベースの音も、今回はプラグインを変えてもらったりしてます。

-「EDY[2020ver.]」については歌も録り直したそうですが、改めてこの曲をレコーディングの場で歌ってみて感じられたことは何かありましたか。

智:楽しかったですよ。この曲は、今回のベストの1曲目になっていることからもわかると思うんですけど、vistlipにとっての1曲目でしたからね。このバンドで初めて作ったオリジナル曲だし、ベストでの歌の録り直しは基本的にはしたくなかったんですけど、今このタイミングで再録することに意味があったんです。おそらく、聴いてくれる人たちにとってもこれはいいプレゼントになってるんじゃないかな。

瑠伊:この曲のデモを作ってから、僕らはメンバー探しをしたんですよ。

智:懐かしいよね。今の事務所に入って初めてのちゃんとした環境でやらせてもらうレコーディングで、あの頃はとにかく必死でしたもん。それに比べたら、今回の歌はすごくスッと歌えました(笑)。余裕もあったし、楽しかったし、大切な曲をまたこうしてカタチにできたことが嬉しいです。我ながら、"この13年、なかなかいい歳の重ね方をしてこられてるな"っていうふうにも思いましたよ。

-あえてうかがいますが、歌の録り直しを今回その1曲にとどめられた理由についても教えていただけますか?

智:絶対領域を守りたかったからです。13年もやってると、当時しか出せなかった二度と出ない声ってあるんですよ。ヘタクソだったけど、あの声と歌い方だったからこそ成立してたよねっていう曲はそのまま触らないでおきたかったし、たぶんその感覚はファンのみんなにとっても同じだと思うから、"[MEMENTO ICEver.]"となってるものも変えてるのはミックスだけなんです。

海:あまりにも録り直し要素が増えすぎると、それはベストじゃなくてセルフ・カバーになっちゃいますしね(苦笑)。録り直すにしても、「LIFE[MEMENTO ICEver.]」以外はできるだけ原曲の雰囲気を尊重するように意識してました。

-もっとも、「Princess Dizzy[MEMENTO ICEver.]」についてはミックスが変わっただけだというのにメタル感がずいぶんと増しているようにも感じます。

海:あぁ、これはちょっとバランスと質感が変わってより良くなりましたね。サビの右ギターがめっちゃ最高なんですよ! 原曲よりハッキリ聴こえるからおすすめです。

智:最終的にはもともとのCDを持っている人にとっても、改めて手に取ってもらう価値のあるベストになってると思いますよ。

-ところで。全32曲を締めくくるのは「July Ⅶth[Re:birth]」となっていますが、基本的には時系列順に収録したというこのベストの最後にこの曲を持ってきたのはなぜなのか、ということを少し解説していただけると嬉しいです。

智:もとをたどると、この曲は『Revolver』という2008年に出したミニ・アルバムに入れた曲で、バンドの未来とかこれからに向けての夢を歌ったものだったんですよ。まぁ、タイトル自体が結成記念日である7月7日を意味してもいますしね。その後、僕らが事故で活休してその活休明けに出した2011年のシングル『SINDRA』の初回限定盤 lipperに「July Ⅶth[Re:birth]」として再構築したものを入れたんですけど、それ以来この曲は毎年の七夕のライヴでのみ演奏をしてきていますし、vistlipにとってはみんなとの絆を確かめ合ううえでは最も大切な曲であると言っても過言ではないので、今回のベストはこの曲で締めくくることにしたんです。

海:ライヴでも毎年これは最後にやってますからね。入れるのであれば、この位置しか考えられませんでした。

-2枚組の全32曲を通してvistlipの歴史を追体験することができる『MEMENTO ICE』は、素晴らしく充実した内容になっておりますね。ここまでの13年の歩みと、このバンドの幅広い音楽性を見事に凝縮してあるように感じます。

智:なんなら3枚組でもっと曲が多くても良かったくらいなんですけどね(笑)。

瑠伊:今回のベストでも"vister"と"lipper"を出すんですけど、通常盤になってる"lipper"に対して、"vister"にはDVDが付くんですね。そのDVDの中ではベストから惜しくも漏れた曲たちの音やMVもちょっと聴けたり観られたりするので、そこも含めて楽しんでもらえるとより味わい深いものになると思います。

海:ファン投票の結果とか、メンバー投票の結果とか、スタッフ投票の結果をカウントダウン番組的な感じの映像にしてあるんで、そのDVDまで観てもらえたほうが今回のベストに込められた意味合いとか背景がより深く理解できるでしょうね。

-それでは、最後になりますが。今回のベストに"MEMENTO ICE"というタイトルを冠した理由についても教えてください。

智:このアルバムのタイトルは、「alo[n]e」の歌詞から発想したものですね。ICEという単語には想いを固めたものというイメージを託したところがあるし、スラング的に言うと他にもクスリだとかダイヤとかいろいろな意味も持ってるじゃないですか。そこに、最初はこれも「alo[n]e」に出てくる"memory"という単語をつなげたかったんですけど、組み合わせとしてちょっと物足りないところがあったので、もう少し重みのある言葉として"MEMENTO"を持ってきました。この13年でvistlipは崖っぷちな局面に何度も遭遇してきてるバンドでもありますし、自分たちにとってこのアルバムは命の結晶みたいなものだっていうことなんですよ。

海:でもね。結晶ではあっても、結果ではないですよ。あくまでもこれは途中経過としてのベストですからね。最初に言ったみたいに解散するときに出すベストなら"これがすべてでした"って言えるけど、このベストには先がありますから。そういう意味では、ここからvistlipの世界を知ってくれる人が増えてほしいなとも思ってるんですよ。13年もやってるから作品数も多くなってるし、"何から聴き始めたらいいのかわからない"っていう人にはなかなか親切な内容になってると思います。

瑠伊:うちは楽曲の振り幅が広くて、時期や作品によっても音の傾向が結構違うので、今までは新しく出会った人に"こんなバンドをやってます"って説明するのが難しくて困ってたところもありますから(笑)。これからは、"まずはこのベストを聴いてください"って言えます。

海:自分たちでも、"どんなバンドやってるんですか?"っていう質問に対して上手く説明なんてできねーもんな。今までは、とりあえずCDをごそっと"こんな感じです"って何枚か渡してたけど、たしかにこのベストがあれば自己紹介が簡単に済む(笑)。

智:たしかに(笑)。頑なに解散までベストは出さないと言ってきてはいたものの、今となってはこの機会を貰えて良かったなと心から思います。今年はいろいろ大変なことがありましたけど、これはvistlipからみんなへ向けた感謝の1枚でもありますね。