INTERVIEW
矢島舞依
2018.10.15UPDATE
2018年10月号掲載
Interviewer:荒金 良介
闇の部分から人の心を照らす歌もある
-話が戻りますけど、エリザベートさんをモチーフにしたのはどこか人物像に惹かれる部分があるとか?
うーん、まずは興味が湧きましたね。処女の生き血で若返りを果たそうとしてる人がいる。なんだそれ! って。ネットで調べても諸説あって、実際に本も2冊買って読んだんですけど、エリザベートさんの一生をまとめた本があったので、それをもとにイメージを膨らませました。かなりサイコパスな方ですね(笑)。
-というのは?
女性の醜い部分を全部出したような人で、欲望のままにという感じなんですよ。美に対する追求心は女性としてすごいなと思いました。日々のケアが面倒臭いと思うこともあるのに、常にそのことだけを考えて、毎日鏡の前で何着も服を着替えたり、1日に何回もお風呂に入ったりして......それはただただすごいなぁって。でもちょっとかわいそうというか、救ってあげられる人はいなかったのかなと思いましたね。「箱庭」は、エリザベートさんに殺されて、部屋に死体がいっぱい転がっていたみたいで、その殺された少女の嘆きを歌にしてみたり。あと、エリザベートさんの下で働いていた3人の召使いさんみたいな人たちが、10年以上血を集めていたようで、その召使いさんの心情を「蒼色真珠」で歌詞にしたりとか......。
-濃いですねぇ。今作の曲調に関してはいかがですか?
前作はそんなにメロスピがなかったけど、今回はメロスピっぽい曲が多くて、すごく速い曲は増えてますね。「鮮紅のOVERLORD」もそうだし、「Stargazer」はBPM160ぐらいですけどメロスピの部類に入るのかなと。「Requiem of Silence」は完全にメロスピだし、「LUNATIC ISOLATION」はどうなんだろう......「BLOOD RESOLUTION」の部類に入るのならメロスピですかね。「Velvet Rose」も3拍子だけど、めっちゃ速いのでこれはある意味新しいメロスピかなって。トータルだと7割速い曲が入ってますね。最初は速い曲が集まりすぎて、"もう少し緩急をつけた方がいいんじゃないか"という話が出たくらいなので。
-とはいえバリエーションに富んでる楽曲が集まってます。「Velvet Rose」もテーマパークっぽいフレーズもあったり、「Stargazer」は個人的に好きな曲で歌メロがすごく印象的だなと思いました。
あっ、ほんとですか! 最初はこれはちょっと......という反応だったんですよ。他の曲とも毛色が違うし、エリザベートさんの少女時代を歌詞にしたもので。
-歌詞の内容はロマンチックですよね。
そうですね。そういう歌詞もあまり書いてなかったし、今回はフルなのでこれぐらいの緩急をつけた方がいいだろうと思って。未来に不安を持つ少女みたいな歌詞なので、あまり重みを持たせない発声の仕方で歌ってみました。
-今作の中で矢島さんがお気に入りの曲はあるんですか?
いつもスタッフさんとかにも聞かれるんですけど......難しいんですよね。作ってるときはその曲が好きだから......難しいなぁ。出来の悪い子だなと思っていたのが、ミックス、マスタリングで成長を遂げて愛おしく感じることもあるし。えーっと、「箱庭」、「Velvet Rose」はすごく好きですね。この2曲はパッとイメージが湧いて、歌詞ができるのも早かったんですよ。そういう曲はレコーディングもスムーズに進むんですよね。あと、ミックス、マスタリングで「血の饗宴」がかなり伸びて、めっちゃかっこいい曲に仕上がったなと思います。歌い方も狂った感じを意識して、本気でふざけてみました(笑)。
-「箱庭」から始まり、「Twilight」で締めくくる作品トータルの流れも良くて、重いところからおぼろげながら光が見える終焉になっているなと。
「Twilight」の歌詞は、エリザベートさんは600人以上の人を殺しているので裁判にかけられて、牢獄に入れられてしまうんですけど、そこで何を思うのかは実際はわからないし、罪の意識はあるだろうけど、ほんとに悪いことだと感じていたら途中でやめていただろうし。償えない罪だけど、欲望のままに突き進んだ自分の気持ちが一番大事だったんだろうなって。悪いと思っているけど、悪いと思い切れない気持ちもあるのかなっていう。それは誰しも持っている感情だったりすると思うので、それを汲み取って書いてみました。
-今作を通して伝えたいメッセージはありますか?
ヴァンパイアをモチーフにしていますけど、その根本には闇にしか生きれない人の気持ちを歌ってて。私は、"明るく頑張ろうよ!"というポジティヴな言葉だけでは元気になれない人間だったので。闇の部分から人の心を照らす歌もあるだろうから、私を知ってくれた人が救われるような、ちょっとでも共感してもらえたら、ひとりじゃないという気持ちになるだろうし、そういうものを届けていけたらなと思っています。あと、メタルを聴いてる人は男性ファンの方が多いので、女性の人も聴いて、それこそカラオケで歌って発散できるようなメタルをやれたらいいなと。なので、できるだけ日本語で伝えやすいものにしたいんですよ。今作は重みと深みのある曲が多いので、ツアー(2018年11月から12月にかけて開催する"Vampiress Tour 2018")も濃いものが見せられるんじゃないかと思ってます。矢島舞依の真骨頂を感じてもらえたらいいなと思いますね。