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INTERVIEW

浅葱

2018.09.14UPDATE

2018年09月号掲載

浅葱

Interviewer:杉江 由紀

絢爛豪華な絵巻物のごとく、浅葱の描き出す世界は、粋を集めた音と雅やかな言葉たちによって織りなされている。今年で結成15周年を迎えるDのASAGIが、バンドと並行しながらこの10年以上にわたり続けてきたソロ・ワークスは、今年1月に"浅葱"の名義で発表されたメジャー1stフル・アルバム『斑』で、ひとつの究極的展開を見せたことになるだろう。本誌初登場となる今回は、改めて浅葱にとってのソロ活動に対する想いを訊くと共に、来たる9月24日に恵比寿LIQUIDROOMで開催される単独公演"斑~白面金毛九尾の狐火玉編~"や、その会場&通販限定で入手することができるという新音源『妖狐の嫁入り』についても語ってもらった。

-DのASAGI(Vo)としての活動と、ソロ・ヴォーカリスト 浅葱としてのソロ・ワークス。まずは両者の間にどのような差があり、いかなるスタンスをもって臨まれているのかということから教えてください。

ソロとして最初に音を形にしたのは10年以上前のことになるのですが、当時Dではダウン・チューニングは取り入れていなかったんですよ。なので、当時のソロはダウン・チューニングでやろうと思って曲を作ったわけではなかったのですが、世界観を追求して思い浮かんだままに作ってみたら、結果そうなったんです。せっかくできたものを世に出さないわけにはいかないと思い、試験的にソロとして取り入れてみたというのがソロの始まりですね。結局そのあとはDにもダウン・チューニングを取り入れることになったので、ソロ活動はしていませんでした。なので、ソロ活動を再開したのはそこから10年後になるわけなんですが、世界観を表現するにあたって、自分の中の気持ちをDとソロで分けてみたいなと思い、再び活動していくことにしました。Dは今年で結成15周年を迎えたんです。孤独と言うにはあまりに長く濃密な時間を仲間と過ごしてきたので、孤独を描きにくくなってきたという部分があります。なのでDにはDの良さを残し、ソロでは自分個人としてのより暗くコアな部分を描いていけたらなと思っていますね。

-今年1月に発売されたメジャー1stフル・アルバム『斑』は、和をモチーフとしたコンセプト作品となっていました。浅葱さんの中での和に対するこだわり、美意識、そして音楽的な面で重視していることはなんでしょうか?

日本らしい美って年々少しずつ失われつつあると思うんですね。日本は四季があって、同じ場所で空や木々を見るだけでも全然違っていて、秋田の大自然の中で生まれ育った僕としては、日本の四季はとても大事なことなんです。『斑』の世界を描くにあたっては、生まれ育った秋田の海や森を思い浮かべたりもしました。日本にいながら日本の景色の素晴らしさに気づかないことも少なくない気がします。例えば、月を見るにしても、"今日は何年に一度の◯◯ムーンです!"という日だけじゃなく、どんな日でも月は美しいですし。日本らしい楽器といえばもちろん和楽器なので、様々な和楽器を取り入れつつロックと融合させ、自分の中で新しく創作された和を表現していきたいなと思っているんです。和とロックの融合って真新しくないという印象もあるかもしれませんが、その最高峰を目指し、これまで感じたことのないような景色を見せられたらなって。歌詞もただそれっぽい言葉の羅列にはしたくないので、古語にもこだわり、ひとつひとつに意味を持たせ、音と融合したときに古の日本の美を受け継いだ新しい日本の花が開けばいいなと。

-浅葱さんのお誕生日である8月29日には、今春に新宿BLAZEにて行われたソロ公演のライヴDVD『"浅葱" 全国単独公演 二◯十八「斑」千秋楽 ~2018.3.24 新宿BLAZE~』がリリースされたばかりです。この作品の見どころについても、ぜひ教えてください。

人生初のソロ・ツアーを行い、その最終日の模様を形にしたので、とても感慨深いですし、形にすることができて嬉しいです。見どころはすべてと言いたいのですが、あえて1ヶ所というのであれば、やはり最後の曲の「アサギマダラ」(『斑』収録曲)でしょうか。この曲を作り終えたときに、これが人生最期の曲でもいいかなと思えたぐらいの曲で、僕の死生観を込めた特別な曲なんです。その曲で背景にちょうどアサギマダラの翅が重なる部分があるんですね。なのでぜひそこを観ていただきたいなと思います。

-9月24日には恵比寿LIQUIDROOMでの単独公演"斑~白面金毛九尾の狐火玉編~"が控えているなか、今回は会場および通販限定での新音源『妖狐の嫁入り』が発表となるそうですが、表題曲の背景にある物語について解説をいただけますでしょうか?

10年くらい前にDで子狐を失った母狐の哀愁を描いた「狐塚」(2009年リリースの4thアルバム『Genetic World』収録曲)という曲を作ったんですよ。これはお正月に作って、作っていた途中でデータが壊れて急遽記憶を辿りながらもう一度作り直したという、いわくつきの曲なんですけど(笑)。それで、その「狐塚」から派生した曲が『斑』に入っている「白面金毛九尾の狐火玉」という曲で。時系列的にはこの2曲の間にあたる曲が今回の「妖狐の嫁入り」になります。戯れで獣の命を奪い、毛皮を狩る人間に対して、妖狐がいかにして仇を討ちに行くか......というところが聴きどころですね。

-「妖狐の嫁入り」と『斑』との間に、なんらかの相関関係はありますか?

「妖狐の嫁入り」は『斑』の中に収録されていても違和感がないというか、逆にいい意味で異彩を放っていたかもしれませんね。先述したように「白面金毛九尾の狐火玉」との繋がりもあるので、続けて聴いていただくのは大歓迎です。「白面金毛九尾の狐火玉」では見られなかった恐ろしい側面を「妖狐の嫁入り」では垣間見ることができますよ。

-「妖狐の嫁入り」は雅やかでありながらもヘヴィな音像がとても印象的です。サウンドメイクについては、主にどんなところに重きを置かれましたか?

サウンド面では、「白面金毛九尾の狐火玉」でもそうだったんですけど、九尾ということで9拍子を取り入れました。ここまでは前回と同じなのですが、今回はテンポも99。さらにはサビの前のキメも9発にしてみるとか、9には拘りましたね。前回は曲の世界観からお囃子のような軽快さを取り入れたんですが、今回はもっと妖艶さや狂気を表現しようと思いながら制作していました。序盤は天気雨のなか、白無垢で嫁入りする雰囲気を作り出し、そこから徐々に妖狐の化けの皮が剥がれていくという表現を音にしていきました。単なるヘヴィさではなく女性らしさも表現したかったのでそこは苦労しましたね。