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INTERVIEW

KAMIJO

2018.03.14UPDATE

2018年03月号掲載

KAMIJO

インタビュアー:杉江 由紀

悲しい史実を希望あるものに塗り替えていくことこそが僕の大きな目的です


-そのうえ、『Sang』の発売日と同日には『Sang -Another Story-』と題された、KAMIJOさんと初音ミクによるコラボ・シングルも発表されるそうではないですか。アルバム本体と、このコラボ作品がどのような相関関係を持つことになるのかも知りたいです。

まず、今回の『Sang』の物語の中でのルイ17世というのは眠っているんですね。というか、眠っているシーンがありまして、その雰囲気は今回のジャケット写真でも表したものなんです。だから、この『Sang -Another Story-』ではミクちゃんも眠っている状態で登場するんですよ。そして、『Sang』はエミグレという亡命貴族が登場する物語でもあって、僕のストーリーの中では亡くなってしまった人間をヴァンパイアが甦らせて、眠ったまま血を作らせるという場面が出てくるんです。

-そこはファンタジー要素の感じられる部分ですね。

でも、あながち単なるファンタジーとも言えないんですよね。実は日本のとある国立大学の大学院の教授が、人間血液を使って発電をするという実験を成功させた例が現実にありますから。

-それはなかなかすごいお話ですね。そもそも、そんな情報をKAMIJOさんはどこから仕入れてくるのですか?

物語を練っていく際に、"誰か血液で発電をしている人はいないかな?"って調べてみたら、2004年に実験が成功しているという記述を見つけたんですよ。その技術があれば、今後は人工臓器を動かしていくのに役立てることができるらしいです。僕の物語の中では、そこに目をつけたルイ17世が現代の日本に来て、血液で発電した電力によって電子の歌姫である初音ミクちゃんのことを眠りから目覚めさせる、という話がこの『Sang -Another Story-』の背景にはあるんです。

-ストーリー自体にも心惹かれますが、このたびボーカロイドとのデュオというものを経験してみてKAMIJOさんとしては、どんな感覚を得られたのでしょうか。

僕は、彼女のヴォーカリストとして永遠の歌声を持っているという点にとても憧れてしまいましたね。それこそ、僕がもし死んでしまったらそのあとに僕の歌声で新しい曲を生み出すことはできないわけじゃないですか。でも、ミクちゃんという存在はずっとそれが可能なわけですよ。その歌声を求めてくれるファンの存在があって、初めてヴォーカリストとして成立するという点では僕も彼女もどこかで相通ずる点があるなと感じましたし、とてもいい経験になりました。あと、このコラボに関しては僕の存在ががどうこうというよりも、ミクちゃんの存在を通して日本のポップ・カルチャーについてより多くの方々に知ってもらういうことの方が大事だと思っているので、Mana(MALICE MIZER/Moi dix Mois)様の主宰するアパレル・ブランド、Moi-meme-Moitieに衣装制作をお願いしたり、イラストをPEACH-PIT先生(※漫画家ユニット)に依頼さていただくことで、全世界に向けて自信をもって発信できるような作品に仕上げられました。ちょうど、今年は"日仏ポップ・カルチャー交流プロジェクト"のアンバサダーに就任させていただいたこともあり、ここからはそうした面でも日本のポップ・カルチャーを広く伝えていきたいと思っています。今度のツアー(3月24日より開催する"KAMIJO Live Tour 2018 -Sang-")では、スペシャル・ゲストとしてミクちゃんをお迎えして共演もさせていただきます。

-そのアルバム『Sang』発売直後から始まる全国ツアーは、本編の方もかなり凝った内容になっていくそうですね。

ストーリー性の面では、このツアーを通して『Sang』の世界がより具体的なものとしてみなさんに伝わっていく場になっていくはずです。今回のツアーではステーシ?上に過去と繋がった額縁というものがあって、そこに中世の時代に描かれた様々な絵画を映し出しながら、それに加えて声優さんたちに声の出演をしていただきました。もちろん、その脚本も僕が書きました。

-KAMIJOさんは、つくづく多才ですね。おまけに、参加される声優さん方が関 智一さん、杉田智和さんなど錚々たるメンツですし、これはおおよそライヴという言葉だけでは収まり切らない、充実のステージ・パフォーマンスが期待できそうです。

『Sang』というのは、英語で言えば"歌う"の過去形ですし、フランス語では"血"の意味も持つ言葉になるんですよ。そして、僕は2014年にこのすべての物語のルーツとなる作品として『Symphony of The Vampire』(メジャー1stミニ・アルバム)という作品を作っているんですけど、その物語の中でルイ・シャルルがベートーヴェンから聞いた言葉に"美しい旋律は血の代わりとなる"というフレーズがあったんですね。つまり血を吸わなくても、美しい旋律を聴けばヴァンパイアは生きていられるということなんですが、結局ベートーヴェンは人間の女性を愛してしまったので五感のひとつである聴覚を失い、かといって愛する女性の血を吸うこともなく、彼は永遠の命を持ったヴァンパイアなのに死んでしまったんですよ。ルイの中ではその一件が大きな教訓となっているので、この『Sang』の中で描かれている物語はそこに基づいたものにもなっているんですね。今度のツアーでは、そのあたりも含めてより深い描写をしていけたらいいなと思っています。詳しいことはまだ言えませんが、何本もあるツアーを通して内容がマイナー・チェンジしていくところにも注目してもらえると嬉しいですね。

-それにしても......KAMIJOさんはここからどこへ向かい、何者になっていきたいのでしょうね。単なるミュージシャン、ヴォーカリストの域はとっくに超えていますけれど。

なりたいのは、原作者ですね。人が想像もしないことをいろいろと提示して、みんなにワクワクしてもらいたいし、楽しんでほしいです。いち音楽家である以上に、悲しい史実を希望あるものに塗り替えていくことこそが僕の大きな目的です。