MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

KAMIJO

2018.03.14UPDATE

2018年03月号掲載

KAMIJO

インタビュアー:杉江 由紀

優雅に歌いたかったから、完全にドラムをミュートした状態で録りました


-プロでも判別しにくいほどの精度で、生に近い打ち込みの音を手間暇かけて組み上げていくということ。結局のところ、その意義とはどんなところにあるのでしょうか。

音が整頓されていく、というところに尽きます。タイトなメタル・サウンドの場合は、生のドラムでレコーディングした場合でも打ち込みと同じようにきっちりタイミングを修正することもありますが、それと結果は同じです。打ち込みのオーケストラと、打ち込みのドラム。これを実現することによって、僕の思うがままに音を並べていくことができるんです。それが今回、最もチャレンジしてみたかったことだったんですよ。

-思うがままの音作りが叶ったということは、そのぶんだけヴォーカリストとしても歌いやすくなったのかもしれませんね。

いや、それはまた別の話になります。僕の場合だと歌うときにはそんなにバックの音は関係なくて、今回も速い曲では一切ドラムを聴かずに歌ったりしているんですよ。

-リズムありきではなく、レコーディングで歌われているのですか!?

はい。アルバム2曲目の「Theme of Sang」なんかも完全にドラムをミュートした状態で歌っています。クリックだけです。

-だとすると、そのような方法で歌録りをする理由とはいったい?

優雅に歌いたかったからです。「Theme of Sang」は特にメロディの流れが大きいタイプの曲なので、ドラムのリズムに乗っかるかたちではなく、自分の歌でリズムを作っていくようにしたかったんですよ。ひとつには、今回は英詞の曲がほとんどだったということも影響していると思います。

-そういうことでしたか。

僕の作る曲は基本的に大きなメロディのものが多いので、それをいかにリズミカルに聴かせるか? ということを考えたときに、今回は英語の歌詞で歌うという手段へと行き着いたんです。逆に、これを日本語の歌詞で生ドラム、生ストリングスで歌おうとしたら、おそらくただの演歌になってしまうんじゃないかと思います(苦笑)

-なるほど(笑)。メロディ自体の持っている濃厚なわびさび具合が、必要以上に強調されすぎないかたちを模索してこうなったわけですね。土壇場での英断が今作『Sang』を救ったとは、実に驚きです。

そのくらいのレベルのクサメロなんです、僕が今回のアルバムの中で作ったメロディたちは(笑)。本当なら録りの直前まで日本語詞で歌うつもりでしたし、実際にもう歌詞も上がっていたんですが、いざ仮歌を録ってみたら妙に違和感があったんですよ。何度やってみても納得がいかなくて、いよいよ"これはダメだ......!"となってしまったときに、ふと"だったら、英詞でやってみたらどうだろう?"と思いついたんですね。そうしたら、それが大正解だったということになります。

-言語と音楽との相性問題に関しては、これまでもいろいろなアーティストたちが散々試行錯誤を繰り返してきたことになりますが、やはり厳然としてその点は作品の善し悪しを左右する重要なファクターなのですね。

言語そのものの特性というよりも、キーになるのは言語が持つリズム感の部分なんだと思うんですよ。すでにできあがっているメロディに対して、いかに音符が細かく刻んで入っていると感じさせるか。僕が意識していたのは、あくまでもそこなんです。英語だとひとつの音の玉の中にいくつも言葉が入ってくることになるので、そこがいいんですよ。

-この『Sang』はその奥深い物語性といい、綿密に計算されたサウンド・メイクといい、徹頭徹尾どこまでも緻密に構築されたアルバムになったと言えそうですね。

そうですね。もともとライヴで昨年の春からやっていた「Emigre」以外の書き下ろし楽曲と、もともと英語でやろうと思っていた「Mystery」以外がギリギリで英詞になった点だけは計算外でしたが(笑)、そこさえ除けば本当に思うように作れたアルバムに仕上がったと思います。それと同時に、詞が英語になったことによって内容的にはより率直になったところもあるんですよ。例えば、アルバム後半の「Sang Ⅰ」ではそのままナポレオンの苦しみや葛藤が半ば直訳的に表されているので、受け手にとってはこのかたちになったことでよりわかりやすくなったところもあると言えるでしょうね。

-なお、先ほど少し触れられていたとおり今作の豪華盤には室内楽アルバム『Chamber Music Ensemble』もインクルードされているといいます。こちらはこちらで、まったく異なる赴きの斬新な作品となっていて大変興味深いです。

こっちはまったくクリックもなしで、みんなで"せーの!"でやっているんですよ。あのスリリングさは、録っていてたまらなかったです(笑)。きっかけとしては、昨年まさにこれを録ったメンツでの室内楽ライヴ(10月9日に開催した"「Epic Rock Orchestra -Chamber Music Ensemble-」~高貴なる室内楽の調べ~")を東京キネマ倶楽部でやりまして、それがすごく良かったんですよ。ピアノとストリングスの音にこのまま溺れていたい、と感じたくらいに僕としては歌っていてとても気持ちよかったんですね。その空気感をどうしても作品にしておきたいなと思ったので、今回はこういうかたちで音源化させてもらうことにしました。

-21世紀のこの時代にあって、本格的な室内楽をこうしてKAMIJOさんの歌声とともに楽しむことができるのはとても貴重なことですね。

それこそ、室内楽は中世の時代からあったものですから、僕としてもこれがやれて良かったですよ。ある意味、『Sang』とは真逆の方法論で作ったものではありますが、中世というキーワードの部分ではこれもリンクしているのではないかなと思います。