INTERVIEW
矢島舞依
2016.05.31UPDATE
2016年06月号掲載
Interviewer:荒金 良介
-今年からバンド編成でライヴをやられてますよね。それもやりたかったことですか?
バンドでやれたらいいなぁと思っていたけど、バンドの中にいるヴォーカリストになりたかったわけではないんです。大きなステージでやってるアーティストさんは生バンドが多いから、そうなりたいという気持ちがありました。他のバンドを観ても生音のすごさは感じていたし、自分が歌う側に立ったら絶対楽しいだろうなって。でも、オケのライヴに慣れすぎて、最初にバンド編成でやったときは大変でした。音のバランスが全然違いましたし。徐々に慣れてきたかなぁと。
-では、今作『The Un-Dead』を作るうえでのヴィジョンは?
西欧のヴァンパイアをイメージしました。
-ヴァンパイアですか? Track.4「Vampire Maiden」という曲もありますが。
これから作り上げていきたいと言いますか。特に自分から"ヴァンパイアです!"とは言わないけど、"矢島舞依って、ヴァンパイアだよね?"みたいに定着したらいいなと(笑)。ファンタジー的な要素が好きで、中世ヨーロッパの神話も好きなんです。『有罪』(2015年リリースの3rdシングル)はゴシックっぽい曲もあったので、今回はさらにヴァンパイア的な部分にイメージを固めてみました。
-今回の歌詞や曲調は、ダークでシアトリカルなムードがありますもんね。
今回のジャケットもそうだけど、汚いものとキレイなものが一緒に写ってる。そういうのが好きなんですよね。汚いものがあるからこそ、キレイなものがよりキレイに見える。キレイなものがあるから、汚いという概念が生まれる。そこに美しさというか、魅力を感じるんです。歌詞にも書いてるんですけど、汚い部分と純粋な心を持っているのが人間だと思うし、人間の中にあるドス黒い部分も認めて、メッセージとして伝えていけたらいいなと。
-そういう考えはもとから?
そうですね。学校の道徳の授業でも人と意見が合わなくて。
-例えば?
えっ? 例えば......先生が求めている答えとは違うことばかり言ってしまうので、指名されるのが怖くて。一般的な答えがわからないんですよ。だから、人と違うことが怖かった時期はありますね。先生から"うん、そういう考えもあるけど、これはそういうことじゃなくてね"と言われることがあったので。でも大人になると、常識を理解していれば、別の見方をすることも悪いことじゃないんじゃないかと思えるようになって。人がいいと思ったものを、いいと思わなくてもいいし。自分がいいと思うものなら、その感覚は大切にしていいんじゃないかと。
-右に倣えじゃなくていいと?
そうですね。音楽で例えると、一般的に売れてるものも、それはそれでいいと思うけど、それとは別でコアな激しい曲とか、ランキングには入らないかもしれないけど、自分的に熱い曲を大切にするタイプですね。
-今作の楽曲も本当にバラエティに富んでますよね。
「Carmilla」(Track.5)は女性同士の禁断の愛をテーマにしているので、女性らしさと情熱を込めた歌い方を意識しました。3拍子で間奏にシャッフルのリズムを入れて、ノリのいい曲になってると思います。「必要悪サバト」(Track.3)は吐き捨てるイメージで、魂の叫びが伝わるような歌い方に挑戦しました。この曲は歌が一番しんどかったです。息継ぎする暇がないし、音も高いですから。歌詞もすべてボツになって、もう一度書き直した経緯もあるので、制作はギリギリでした。
-歌は表現力が多彩になりましたね。
そうですか! とても嬉しいです!
-今回は曲の密度やスピード感も上がってませんか?
攻めてるし、尖ってると思います。曲のイントロから世界観にスッと入れるものばかりですね。
-そして、Track.2「覚醒JINX」は新章の幕開けという歌詞ですね。"まるで生きたまんま死んでるみたい"、"さあ 禁忌を犯しましょう"という内容も矢島さんらしい世界観が出てますね。
生きてるとつらいこともあるけど、それでも生きていかなきゃいけない、立ち向かっていかなきゃいけない、という気持ちがあるから、そういう歌詞になりました。それは私だけじゃないと思うし......生きてると楽しいことばかりあるわけじゃないし。それに楽しいことばかりあると、それが楽しいのかわからなくなりそうで。だからしんどいことがあっても、それを乗り越えて頑張るしかないよねって思うんです。明るくないけど、頑張っていこう!というプラスのメッセージを込めてます。
-「Carmilla」の"揺蕩う血の海で あなたを愛してる"とか、ドキッとする歌詞もあります。
はい、そういう歌詞も書いてみました(笑)。私、恋愛の歌詞はあまりないんです。"愛してる"とか......ね(笑)? それはすごく直接的だなって。この曲は怪奇小説(※アイルランド人作家Joseph Sheridan Le Fanu著"カーミラ")をテーマに書いたものなので、それを連想したら勝手に出てきた歌詞なんです。
-歌詞に"ネクロポリス"(「覚醒JINX」)、"サテュロス"(「必要悪サバト」)とか、アニメやゲームに出てきそうな神話的な言葉使いも多く出てきますね。
"サバト"は悪魔を崇拝する儀式で、サタンがサテュロスという化け物に姿を変えて、そこに参加しているという神話を取り入れてみました。ファンタジックな世界観だけど、現代に置き換えて考えられるメッセージを入れてるんですよ。そこはギャップですね。
-なるほど。"サバト"という単語を含めて、歌詞の世界観もメタルっぽいですけどね。
あっ、そうなんですか? メタルが好きなお客さんから"歌詞はメタル魂がある"と言われるんですけど、全然ピンと来ないんですよね。
-それでいいと思います(笑)。だけど、メタルっぽいです。
"メタルっぽい"って、いい響きですね。今までずっと"中二っぽい"と言われていたので(笑)。
-アルバム名だって、全然アイドルっぽくないですよ。
今作をきっかけにいろんなことが新しく動き出すのかなって。ほんとに"ここからスタート"という気持ちが強いですね。
-将来の目標はあります?
もともとアニメは好きなので、そういうお仕事にも携われたらいいなと思います。でもそれは音楽を続ける中でのひとつの出来事に過ぎないので。今はライヴをやって、少しずつお客さんも増えているので、"矢島舞依"というジャンルを確立して、徐々に広まっていければと思います!
-やはりマジメですね。
ははは(笑)。地道に頑張ります!