INTERVIEW
TONIGHT ALIVE
2016.03.09UPDATE
2016年03月号掲載
Member:Jenna McDougall(Vo)
Interviewer:山口 智男
-あなたは若くて美しい才能あるシンガーということで、ある種のステレオタイプに当てはめられがちだったのでは?
ありがとう(照)。でも、たしかにあったわね。子供のころだって、可愛い女の子らしい格好を親は望んでいたもの。特別な意図はなくても、親にステレオタイプ化されることだってあるわ。大人になって、例えばレーベル・スタッフとか仕事相手も、それぞれが私に対する理想像みたいなものを持っているけど、真実を知っているのは自分だけなのよね。"NO"と言える強さがなかったら、すぐにストレスが溜まってしまうと思うわ。特定の型にはめられてレッテルを貼られてしまう。その人たちはそういうつもりもないだろうけど、その人を自分より強い立場に置いてしまったら、選択肢を失ってしまうのよ。私の場合はそれが自由を失うことになるの。今までのキャリアの中でも、自分の意見が他人の意見ほど強くなくて、その状況に押し切られてしまったこともあったわ。「The Edge」(※映画"アメイジング・スパイダーマン2"の海外版のサウンドトラック収録)のビデオを作ったあと、自分に正直でない気がしたのよ。"これは他人をハッピーにするためにやったことで自分はハッピーじゃない"って思ったわ。これからは自分が自信を持ってやれることだけをやろう、自分の意にそぐわないものには抗い続けようって思ったの。
-でも、あなたは頑固ではなく、人の意見を聞く耳も持っていますよね。新作は、最初作った14曲がレーベルから"前とあまり変わらない"と言われ、それならと外部のソングライターとの共作を通して、曲作りの幅を広げようと挑戦したのも聴きどころのひとつだと思うのですが、外部からソングライターを招くことに最初、抵抗はなかったですか?
あったわ。私のアイディアではあったけど、それほど乗り気じゃなくて。他人と曲を書いたことはこれまでもあったけど、とても怖かったのよ。それに前回はまだ18歳だったし。今はひとりでもできるって思ってた。そういう意味では頑固だったのよね。でも、"外部の人と仕事してみて、その人たちの仕事の仕方を見てみたら?"って言われたの。Whakaioと私は曲作りがパターン化されてしまっていて、やったことがないことに対してどう向き合うべきか見当もつかなかったから。だから最初の14曲は『The Other Side』に似てしまったのよね。他に何が可能なのか見極めるほどの進化がまだできていなかったのよ。だから抵抗はせず、心を開くことに集中したわ。何を学べるか様子を見ようと思ってね。子供のころパパに、"誰でも必ず何かを教えてくれるものだ"って言われたことがあるの。そのことを肝に銘じて臨んだわ。結局、外部の人とは20曲くらい書いたんだけど、中身自体ではなく、自分よりも経験豊富な人と曲を書くということが重要だったの。自分より年上の人、自分とは違った形で成功を収めた人......曲作りそのものよりも、彼らからはプロセスを学んだ気がするわ。彼らとの曲作りのセッションが終わってからWhakaioとふたりで、それまでに書いた曲を書き直したの。アルバムはWhakaioとふたりで書いた曲と、外部の人と書いた曲が半々くらいになったけど、自分たちらしさは一切失われていないと思うわ。外部の人が絡んだからといって自分を見失いはしなかったのよ。むしろ自分を見つけられた気がするし、すべての可能性を拾うことができたと思うわ。その人たちがいたおかげよ。
-Ben Moody(ex-EVANESCENCE)を始め、錚々たる顔ぶれのソングライターはどうやって選んだのでしょうか?
マネジメントの推薦もあったけど、私たちが好きで選んだ人もいるわ。そのうちのひとりが、Alanis Morissetteと『Jagged Little Pill』(1995年リリースのデビュー・アルバム)を作ったGlen Ballardだったの。マネジメントに"お願いだから彼と曲作りのセッションをさせて"って懇願したわ。"彼が今もそういうことをやっているかわからないけど、聞いてみる"って言ってくれた。そうしたら引き受けてくれたの! 彼と会って一緒に仕事することができて、素晴らしい経験だったわ。そこからは楽曲自体はあまり生まれなかったんだけど......とてもクールな経験だった。あとは友達の友達とか――中でもDavid Hodgesとはとても強い繋がりを持つことができたわ。EVANESCENCEの元メンバーで、Christina PerriやKelly Clarksonに曲を提供している人なの。素晴らしいミュージシャンで、とても美しい曲を書くソングライターよ。彼には本当にたくさんのことを教えてもらったし、感謝しているわ。
-彼らとのコラボレーションを通して、得るものは大きかったのでは?
そうね。どういうふうに説明していいのかわからないけど、このアルバムが自分を変えてくれたと思うし、制作を通じて自分が急成長した気がするわ。そのときはわからなかったけどね。「Drive」なんかもそうだけど、"NO"と言うことを覚えたのは大きかった。いろいろな機会や可能性が開かれたしね。コントロールされることに対して"NO"と言うこと、外部の影響をいつ受け入れるべきか、いつ自分を守るべきか、ってね。とても大切なことを学んだ気がするわ。
-バンドの演奏以外にもシンセ、ストリングス、ピアノも使い、奥行きと広がりのあるサウンドを作り上げていますが、今回、アルバムを作るにあたっては、どんなサウンドをイメージしたのでしょうか?
いい質問ね。Whakaioと私は最初、映画とかのクラシカルなミュージック・スコアをイメージしていたの。彼はクラシックの教育を受けていてピアノもできるから、あの手の音楽が大好きなのよね。彼もこのインタビューに答えられたらよかったのにと思うわ。それからふたりともCOLDPLAYみたいなバンドを聴くようになったの。2014年に『Ghost Stories』というアルバムが出たころね。とても美しいアルバムだったわ。いろいろなことをやっているのに音はすっきりしていて、どの楽器もぶつかり合うことがなくて、とにかく音的に息を呑むほど美しかった。攻撃的じゃなくて、音楽の世界に浸りながら滑らかに聴き進むことができるのよね。ああいうアルバムを聴いたのは初めてだった。それにインスピレーションを受けて、シンプルだけど効果の大きいものを作ろうと思ったの。それが最初に実現したのが「Human Interaction」(Track.3)だったわ。あの曲の構成はとても重要だった。かなり削ぎ落とした内容だけどどの楽器も主張があって。あの曲が多くのことを教えてくれたと思うわ。自分たちの曲をどうアレンジすべきかとか、一度に解釈できるようなものを作るという意味でね。曲を細分化して、それぞれの楽器を楽しむこともできるし。音の風景という意味では、例えば「To Be Free」は遠くに地平線が見えるの。