INTERVIEW
MIDIAN
2015.02.14UPDATE
2015年03月号掲載
Member:Kim Taeho (Dr)
Interviewer:藤崎 実
-ニュー・アルバム『Bring Me The Darkness』の日本リリース、おめでとうございます!初めてMIDIANを知ることになるリスナーに改めてバンドの紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?
ありがとうございます!僕たちも今回 HOWLING BULLと一緒に日本に進出することになり、本当に嬉しいですし、とてもありがたいと思っています。MIDIANは旧約聖書に記された"約束の地"を意味します。ですが、その裏側にはキリスト教という名のもとに恣意的に行われた"魔女狩り"という両面性を持ちあわせています。そういった"両面性"をアイデンティティの基盤としていて、人間の"両面性"について哲学的な本物の音楽で表現しようとしています。MIDIANはメロディック・デス・メタルを音楽的なベースとしつつ、雄壮でドラマチックな演出、ひいては単なる観賞用でないライヴで観客とひとつになって楽しめる嵐のような疾走感を加味した新たなスタイルのニュー・ジェネレーション・メロディック・デス・メタルを目指しています。
-ニュー・アルバム『Bring Me The Darkness』のストーリーやコンセプトについて教えて下さい。
今回のアルバムは"あなたの中に潜んでいる闇を俺たちが昇華する"というコンセプトを表現しています。同時にMIDIANのアイデンティティを込めようと努めました。"闇の要素"を含むといっても同時に軽快で、爆発的且つ抒情的でなければいけなかったんです。このような課題をクリアするために、制作の初期の作業でブレイン・ストーミングとスケッチのために多くの時間を費やしました。その上、MIDIANがオーケストレーションに初めて挑戦するアルバムだったので、作業を始めるにあたってクラシックに対する理解と学習を並行しつつ曲作りを進めなくてはなりませんでした。『Bring Me The Darkness』の制作には、韓国で多くの作品を手がけたマスタリング・エンジニアの Kang Seunghee(カン・スンヒ)さんが初期段階から積極的に手を貸してくれて、ストーリーをサウンドで作り上げるという課題を一緒に解いてくれました。同時に、韓国の有名な建築家のOh Taehoon(オ・テフン)さんが今回のアルバム・ジャケットを手がけ、楽曲に込められているコンセプトをイラストで的確に表現してくれました。『Bring Me The Darkness』は MIDIANと一緒に何人ものアーティストが力を注ぎ制作した作品なのです。
-ピアノやストリングスが効果的に使われている「Bring Me The Darkness」や「Monologue Of The Dawn」は、静と動のコントラストも素晴らしいです。「At The End of The Dark」の感情を揺さ振るピアノもまた美しい。いくつかの楽曲についてコメントをお願いします。どの曲を特にリスナーに聴いてほしいですか?
Track.1、2の 「Bring Me The Darkness Part1/2」は、"この世のすべての暗い力をMIDIANに預けろ、我々が闇を引き受けるからお前たちは明るい姿でいろ"という、ちょっと哲学的な内容のタイトル・チューンです。これまでのMIDIANの疾走するスタイルとは少し異なり、雄壮なオーケストレーションを多めにしました。重厚なヴォーカル・ラインとオーケストレーションを主に聴いてほしいです。Track.4の「Falling For Freedom」は、人間が自殺する瞬間の感情をポイントとして、"一瞬の自由と解放を得る感覚"をMIDIANなりに解釈した曲です。ダイナミックなギター・リフとドラム・サウンド、それと共にブレーキがかかりつつ響きわたる抒情的なピアノのメロディーがポイントです。Track.5の「Shadow Pain」は、今の世相によって苦しめられる自分たちの気持ちをそのまま表現しました。"闇を受け入れて苦しみを昇華させる"という内容です。この曲は、ミドル・テンポの安定したリフと共に後半部の転調で雰囲気が高まるところが主なポイントです。程良いオーケストレーションと共にヴォーカルのグロウルとクリーン・ヴォイスの調和も味わって欲しいです。Track.7の「Monologue Of The Dawn Part 1」は、人間が生きていく間に感じる喜怒哀楽を音楽で表現したかったんです。この曲は GYZEの Ryojiさんがギター・ソロで参加してくれたのですが、彼の疾走するギター・ソロと一緒に、笑ったり叫んだりする凄味のあるSINのヴォーカルがポイントです。続くTrack.8の「Monologue Of The Dawn Part 2」は、フランスで教授職にもあるギタリストのChoi Chungwoo(チェ・ジョンウ)さんのソロが収録されています。独特なトーンと感性でリスナーの心を掴むであろうと確信しています。
-独自の世界感を持つ哲学的な歌詞がMIDIANの特徴のひとつとなっています。日本のリスナー向けに歌詞の要点なども解説していただいてもよろしいでしょうか?
我々は人間としてこの世を生きています。MIDIANは人間に内在している暗くて密やかな部分を引きずり出し、心を開いて共有できるようにメッセージを伝えたいと思っています。全ての存在は共存し、人間もまた同じですから、"純粋な人間たち"の暗くて密かな感情は罪ではない、ということも伝えたかったのです。MIDIANのアイデンティティの基盤である"両面性"の側面からみて善が悪になり悪が善になるように。MIDIANの歌詞は様々な人間の暗くて隠しておきたい部分を代弁し、その感情はMIDIANのパフォーマンスに織り込んで形作られています。
(トラック別の簡単な歌詞とコンセプトの内容)
Track.1「Bring Me The Darkness Part 1」
静かで平穏だった人生が、闇によって一瞬にして破壊される様子を音楽で表現しました。
Track.2「Bring Me The Darkness Part 2」
人間の持つ苦しくて暗いものを我々が引き受ける、怖れずに堂々としろ、という内容で、その中で苦しむ感じをシャウティングで表現しました。
Track.3「Cadeva」
この曲のタイトルには本来、"実験用の死体"という意味があります。大きな勢力によって解剖され使い捨てにされる現代人に例えた内容です。
Track.4「Falling For Freedom」
自殺する瞬間を死ではなく自由と解放として表現し、その刹那の感情と感覚を描いた内容です。
Track.5「Shadow Pain」
我々が経験した現代市場の呆れた実態と、我々が受ける苦しみを直接的・間接的に描いて表現しました。
Track.6「Bubble Destroyer」
我々に苦しみを与えた者(既得権益)たちに投げかけるストレートなメッセージです。おまえらの泡を本物の力で破壊してやる、という内容です。
Track.7「Monologue Of The Dawn Part 1」
明け方に眠りから覚めてつぶやくメッセージです。複雑な感情の増幅と人生の喜怒哀楽をヴォーカルのシャウティングで表現しようとしました。
Track.8「Monologue Of The Dawn Part 2」
明け方の虚しい独白が終わったあとの静かで奥深い感じを音楽的に表現しました。
Track.9「Banished White」
純潔、潔白が追放される瞬間と感情を歌詞で表現しました。
Track.10「Deposable Patriot」
"使い捨ての愛国者"という意味で、使い捨てにされる現代人の状況をありのままに歌詞として表現しました。
Track.11「At The End Of The Dark」
闇の絶壁の果てで感じる冷えきった感情について音楽的に表現しました。