INTERVIEW
Steve Aoki
2014.11.01UPDATE
Interviewer:吉羽 さおり
年間300日をツアーに費やし、パーティ・ピーポーからロック・ファンまで踊らせ、経済誌"フォーブス"が発表した"2014年DJ長者番付"で5位にランクイン。また音楽プロデューサーでありDJであり、人気レーベルのDIM MAKオーナーとしてTHE KILLSや BLOC PARTY、 GOSSIPなどロック・シーンのイノベーターたちを輩出するなど八面六臂の活躍で世の中を賑わせるSteve Aoki。メジャー・デビュー作となる『Neon Future I』をリリースし、10月に幕張メッセでFATBOY SLIMと共にド派手なパーティをぶち上げた彼に、作品について、音楽精神についてインタビュー。
-2ndアルバムにして、デビュー・アルバム『Neon Future I』がリリースされましたが、この作品は2部構成でPart2.も来年冬にリリース予定と伺っています。もともとどんな構想でスタートしたのでしょうか。
構想としては、タイトルの『Neon Future I』が示すように、ネオンのように明るくて、色とりどりに輝く未来像というものがテーマになっていて。テクノロジーの進化と人間との融合とか、未来論についての本をたくさん読んで、刺激を受けて音楽を作っていったんだ。今回のアルバムを作るにあたって、いろんな人と未来についてセッションやインタビューしていった模様を撮った"NEON FUTURE SESSIONS"という映像も作っているんだ。
-アルバム冒頭「Transcendence feat.Ray Kurzweil」ではRay Kurzweil氏が、最後の曲「Beyond Boundaries feat. Aubrey de Grey」ではAubrey de Gray氏がと、音楽家、アーティストではないフューチャリストや学者がフィーチャーされていますね。こうしたかたがたにインスパイアされたということですか。
そうだね。今回、両者に取材、インタビューをしてみて、そのインタビューのなかで彼らが語っていることを曲に活かして、彼らの語っている内容から感じて作り上げたトラックを合わせて曲にしたのがこの2曲で。世界的にも著名で尊敬されている未来論の学者たちとの曲が始めと終わりにあって、自分の考える未来像をブックエンドのように挟んでいることで、ひとつの作品として完成されているんじゃないかな。
-今回、"未来"というものに重きを置いたのは、どんな理由からだったのでしょう。
2008年にRay Kurzweilの著作を読んで開眼したことがきっかけかな。"The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology"(邦題:ポストヒューマン誕生 コンピューターが人類の知性を超えるとき)という本で。小さい頃からSFは大好きで、いろんな本を読んだりしていたんだけれど、それまでSF世界の物語だった発想が、今や、科学の進化によって現実味を帯びてきているんだよね。例えば、人間が永遠に生きられることとか、ロボットと人間の融合や共存とか、あとは人間の意識をコンピューターにアップロードできるとか、そういった空想科学的な世界が遠い未来の話じゃなくなって、現実味を帯びてきていると感じて。将来、そういう生活や日常とかが訪れるんじゃないかっていうことを強く感じたことが大きい。
-そういった物事を突き詰めていくようなオタク気質なところは、昔からあったんですか。
もともと大学時代に社会学や女性学の研究をしていたんだけど、そういったものを学ぶときっていうのは、とことんその研究対象や題材を掘り下げていかないといけないし。しかも、多角的にそのテーマについて見ていかないといけないこともあって。今回のアルバムを作る上でも、ちょっとした社会学的なアプローチ――未来が、いわゆる夢の世界っていうだけじゃなくて、自分は懐疑論者でもあるから、本当にそうなるのか、どうなのかっていういろんな角度からアプローチするっていうのは、心がけたことだね。
-音楽としては陽性のアッパーなサウンドで、多彩なコラボレーションの面白さもある作品ですが、こうしてしっかりとテーマ性を設けた1枚のアルバムとして作り上げたのは、音楽が快楽的に消費されないようにという意識も強かったんでしょうか。
バランスが大事だと思うんだ。ただ、知的なダンス・ミュージックを作ってもしょうがないと思うんだ。っていうのも、自分がアーティストとしてライヴをするときっていうのは、目の前の人たちが思わず飛び上がったり、踊りたくなるような音楽をガンガンかけるわけで。例えば客席にケーキを投げたりとか、客席上をゴムボートでクラウドサーフするパフォーマンスでは、学者たちのこととか今後テクノロジーがどう進化していくのかってことは、全然考えてないわけで。目の前にいる人たちを楽しませたい一心で、ライヴをやっている。そういう自分らしさを象徴する音楽やライヴをやりつつ、自分の考える未来像を作品に取り入れて。その未来像というものに信ぴょう性というか、ハクをつけるという意味でその道の権威的な人たちにアルバムに参加してもらったという、そういうバランスかな。
-Waka Flocka FlameやMachine Gun KellyなどのラッパーからFALL OUT BOY、またソングライターや同業と言えるAfrojackやFlux Pavilionまでフィーチャリング・アーティストやコラボレーション相手はさまざまですが、人選の基準はどういうものなんですか。
だいたいは友達だね。幅広いジャンルで、音楽をやってる人で知り合いがたくさんいるから、そういう人たちに"一緒にやらない?"っていうのがいちばん気心も知れていてラクだし、そういうのが大半かな。そうじゃない場合は、"この曲にはこういう人がいいんじゃないか"っていうので、オファーしてみるというか。今回だとラッパーのKid Inkとの「Delirious(Boneless)feat.Kid Ink」がそうだね。