INTERVIEW
Steve Aoki
2014.11.01UPDATE
Interviewer:吉羽 さおり
-あなた自身のルーツとしては、自身でハードコア・バンドTHIS MACHINE KILLSをやっていたり、90年代半ばにインディーズ・レーベルDIM MAKを立ち上げて、後々大きな流れを起こしていくようなユニークなバンドやアーティストの作品をリリースしたりと、フットワークの軽さはもちろん、音楽的な審美眼の高さがありますね。ものづくりの原点や、音楽精神の原点というのは何だと思いますか。
DIYという哲学こそが、自分がここまでやってきたことのDNA=核となる部分だと思う。ギターを弾き始めるにしても、自分で歌を歌うにしても、誰かに教えてもらったり、トレーニングを受けたわけでもなかったし。プロデュースに関しても、友達と"どうやって曲を作ればいいんだろう"って、目の前にあるツールを自己流でいろいろとやってみる中で、独学で身に付けたものなんだよね。そういう過去の経験が積み重なって、自然に、感じるままにものを作っていくようになったんだ。僕自身、自分は歩くスポンジのようだと思っているんだよね。とにかく周りのいろんな情報やアイディアをどんどん吸収して、それをしっかり吐き出していくっていう。周りにあるものに常に注意を払って、吸収していくことが大事だと思っている。
-これまでの経験値を活かしたり、好奇心の旺盛なところは、現在のDJやプロデュースという職にも活かされているし、まさに適職という感じですね。
本当にそうだと思う。きっと、スタジオに閉じこもってばかりいたら情報は得られないし、世の中に出て行って、いろんなところに行くことで情報や刺激をもらって、それが創造の糧になっているんだ。自分にとってはタブレットが、そういった情報を溜めていく道具であり、なにかアイディアを思いついたらすぐにそこに録音もするし、ちょっとした音だったり、気になる音があると――例えば、こうやって何かを紙に書いてるときの音でもいいんだけど、そういうものだって、すごくリズムがあったり、音楽的なものに発展することだってあるんだよね。子どものようにな何のフィルターもない、いろんなものに対する好奇心を大切にすることが、大事なんだと思う。何でこの食べ物が好きなのかはわからないけども、その好きだっていう気持ち、そういうベーシックな気持ちっていうものはすごく大切にしている。
-とてもピュアな観点で音楽をやっているんですね。
そうだと思う。
-現在、世の中にたくさんのDJがいて、ある種飽和している状態だとも思うんですが、その中で自分のアイデンティティとはどんなものだと思っていますか。
うーん......自分の口から言うのは難しいよね(笑)。
-(笑)。では、"ここは1番だ"って思うところは。
1番っていうよりも、ここまでやってきて誇りに感じた瞬間っていうのは、前作『Wonderland』がグラミー賞にノミネートされたっていうことで。グラミーをとるっていうのはそれこそ夢のようなことだよね。
-インディーズ時代に発表したアルバム『Wonderland』(2012)はグラミー賞ベスト・ダンス/エレクトロニカ・アルバムにノミネートされました。最初の作品で、高い注目を浴びたっていうのは、どういう心境だったんですか。
自分でもよくわからなかったかな。信じられなかったし、他にももっと優れた、重要なアルバムがたくさんあるのにって思ったし。さっき言っていたようにDJが大勢溢れているので、今はさらに競争は厳しくなってると思う。自分としては、今回の『NEON FUTURE Part.1』は『Wonderland』よりも音楽的にも、文化的な観点からしてもレベルアップしていると思うんだけれど、ただ他にもいい作品も多いし、たくさんのDJがいるから、これからどうなっていくかはわからないよね。
-では最後に、気が早いですが『NEON FUTURE Ⅱ』はどんな作品になりそうですか。
『(NEON FUTURE)Ⅰ』とまったく違うものになると思うよ。曲としては同じ時期に書いたものなんだけど、『(NEON FUTURE)Ⅰ』よりも、歌もののヴォーカルが多くなってよりエモーショナルで、より深みのある曲が多くなるんじゃないかな。