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INTERVIEW

MUSE

2012.10.11UPDATE

2012年10月号掲載

MUSE

Member:Matthew Bellamy (Vo/Key/Gt) Christopher Wolstenholme (Ba) Dominic Howard (Dr)

-タイトルである『The 2nd Law (熱力学第二法則)』とはどういった意味があるのでしょうか?

Matthew:このアルバムを作っている頃、僕が色んなニュース番組を見るたび、金融恐慌あるいは経済危機についての報道がしょっちゅう目に入ってきて。そこになんというか、成長/増大に関する強迫観念のパラダイムがあるように思えてね。金融に関するニュースはいつだって成長に執着しているような感じだし、僕はその理由は何なのか深く理解したいと思った。そこで少し調べ始めたところ、90年代の終わり頃に読んだ石油ピーク論(石油の産出量が最大値に達する時期。それを過ぎると産出量は減少する一方であるとの論)やエネルギー依存の構造、経済の暴落や崩壊そして成長もまたエネルギーとエネルギー生産とにかなり密接に関わっている、というのを思い出してね。それでエネルギーについての本を読み始めたんだけど、熱力学の法則そしてその第二法則というのはエネルギーと、エネルギーがいかに作用するかを説明するものなんだ。で、熱力学第二法則というのは基本的に“エネルギーは減少していくものだ”と説いていてね。残念ながら至るところでエネルギーは減少しているらしい。宇宙は広がっていて、同時に冷えていってる。だから僕達の体内エネルギーも、地球も太陽も星々なんかも、すべてはやがて温度を下げて冷えていくみたいなんだ。そこで僕は、その意味するところのより哲学的な面に興味を抱いたっていうのかな。というのも進化そして人類は、その第二法則に真っ向からぶつかっていくようなものだからさ。僕たちは成長し進化する生き物で、発展と前進を求めているようだし、それ(成長と減少の葛藤)はいわば僕たちにとっての闘いみたいなものじゃないか、と。その闘いは僕たち個人の人生にも存在する。経済の中にも存在するし、そうした思いが哲学的な考えやメタファーになっていき、それを僕はアルバム全体を通して広げていったということだね。

-あなたたちの音楽はどのように生まれるのでしょう?

Dominic:どの曲もスタジオでそれぞれの旅路を経ていくものだと思うし、だからその曲の出発点と終着点とが思いっきり違うものになることもあるんだ。いくつかの曲では成し遂げたい挑戦やゴールを自分たちなりに設定することだってあるし、うん、“これ”といったやり方はなくランダムなものなんだよ。スタジオで曲に取り組んでいる間の僕たちは間違いなくかなりオープンだし、僕たちは曲に自由を与える、ほとんどもう曲に好きなように旅路を選ばせるようにしてるっていうか。このアルバムには多くの異なるスタイルの音楽が含まれていて、それが作品をエキサイティングなものに保っている。

Chris:最初の段階でかなりのマテリアルがあったと思う。Matthewはもちろん僕も含めてかなりの数のデモを録ってあったんだ。非常にラフな形のデモだったけど、そういう仕事の進め方はいいなと僕は思っていて。というのも20曲近くに同時に取り組んで中に必ずしもアルバムにふさわしくないものがあるのに気づくより、(ラフなデモを聴くことで)どの曲が有効なのかを本当に見極めることができたし、レコーディングの1日目、最初の2日くらいはとにかく自分たちのアイディアやデモ音源に耳を傾けることに費やして、曲がどこに向かおうとしているか、そこでみんなが通じ合えたという。だけどとても面白かったね。というのも、デモの多くはデモの段階でも歌として素晴らしいものだったけど、僕たち3人が一緒にその曲で演奏するまで真の意味でMUSEっぽく聴こえなかったんだ。そこはかなり興味深かったな。バンドをMUSEたらしめているもの、それが何か見極めようとするのは重要だと思うけれど、それが何なのか僕もいまだにはっきり分からない。どのバンドにも他のバンドにはあり得ない、そのバンドならではの要素はあるわけだよね。音楽的にこれだけ枝を広げるのならとりわけ、その要素(バンドの独自性)を保つのは大事だと僕は思うよ。だけど、そうしたバンドの魂/エッセンスを保つことができればできるほど、「Panic Station」や「Madness」みたいな曲、あるいはこのアルバムの他の色んな楽曲のような、完全にこれまでから脇道に逸れた何かをやる自由がもっと手に入るんじゃないかな。

-「Survival」という曲の成り立ちを教えてください。

Dominic:あれは……ロンドン•オリンピックを音楽的に表現するものとして、オリンピック側が「Survival」を選んだのはとてもクールだと思う。素晴らしいよ。ずいぶん以前、8ヶ月くらい前に、なんと向こうからオリンピック向けに何か音楽を書いてほしいと依頼されたんだよね。アルバム作りに着手する、そのちょっと前だったと思う。そこですぐにMattがピアノで弾いていたある曲のことが僕たちの頭に浮かんで、それを何度か皆でジャムってみたところ、あのトラックならなんというかオリンピックの巨大なスケールを反映させられそうだ、僕たちも即座にそう感じたんだ。で、あの曲にあらゆるものをブチ込んでいったわけ。初めて合唱隊も入れてみたけど、彼らがスタジオに来て歌う様を見守るだけでも驚きだった、みたいな。あの合唱隊はすごかったよ。とにかく彼らのおかげであの曲に更なるオペラ的なヴァイブが付け加わったし、曲をもっともっと叙事詩的な地点に引っ張っていったというか、それであの曲が非常にエピックな旅路をたどることになったという。で、僕は「Survival」はとてもMUSEらしい曲だと思っているし、曲の終わりの方ではもう、曲の大げさなフィーリングという意味でとにかく自分たちの限界まで押し広げていこうとしたんだ。曲の最後の最後で再び合唱隊が入ってきて、コード進行も盛り上がっていき、Mattもこれまでで最高に高いキーで歌っていて、それこそ彼の頭が爆発するんじゃないか?と感じる勢いで。僕たちとしてはとにかくあの巨大で大仰なヴァイブで、自分たちにやれるギリギリまで押し進めたかった。

Matthew:あの曲に取り組んでいる時、やっぱりオリンピックは念頭にあったんだろうね。ただあの曲の歌詞は実は、失われつつあるエネルギーに対する葛藤、そしてそれでもサヴァイヴしようという願いや決意に関連しているんだ。それでも自分の頭のどこかで(曲のモチーフと)オリンピックに何らかのつながりを持たせられるかなと思っていたし、実際アルバムを作り終えた時点でオリンピック側から電話をもらい、“閉会式で演奏してほしい、君たちはどの曲をやりたい?”と聞かれたんだ。そこで僕たちは、そもそも自分たちがオリンピックにふさわしそうだと感じてきたのはこの曲だから、やはりこの曲をやるべきじゃないか、と返して。それで彼らを招いてあの曲を聴いてもらい、セレモニーの場でどんな風にこの曲をプレイするつもりかとか、色んな話をした。彼らも曲を気に入ってくれたし、その時点で向こうもこれはオリンピック向けの素晴らしい曲になるだろう、という意見で。だから本当にめったにない偶然、みたいな感じなんだ。巡り巡って再び振り出し(オリンピック向けの音楽を書いてほしいとの要請)に戻ったようなものだったからさ。

Chris:素晴らしいし、人々に聴いてもらえるのはいいことだよね。僕たちのことを知らない数多くの人々に自分たちの音楽に接してもらえるのは、バンドにとってもかなり珍しい機会なわけだから。このバンドは相当にビッグだけど、それでも僕たちのことを知らないって人はまだ山ほどいるわけだし、僕たちが訪れたことのない国にはそういう人たちがたくさんいるんだろうし。で、オリンピックというのは恐らく世界最大規模のグローバルなイベントだよね。だからまだこのバンドのことを知らない数多くの人たちもこれを機に僕たちのことを耳にするだろうし、それはグレイトだよ。このオリンピックがロンドンで行われる、それはかなりの大ごとで、イギリスという国そのものにとっても大した話だし、ロンドンという地が盛り上がってる。それこそ一生に一度の体験になるだろうし、そんなイベントに関わることができるのは途方もない話。大いなる栄誉だね。