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FEATURE

MUSE

2013.12.05UPDATE

2013年12月号掲載

6万人の観衆と共に作り上げた、宇宙規模と言うべき壮大かつ最強の最新ライヴ映像!

Writer 沖 さやこ

世界規模というよりは宇宙規模と言ったほうが正しいレヴェルのスケール感を持ちながら、なぜ彼らは我々と距離を感じさせないのか。デビュー当時から大仰と言っても良いほどのサウンド・アプローチをしてきたバンドは、ようやく自分たちに相応しい場所を手に入れた。彼らの音楽と均衡の取れるダイナミックな演出で彩られたステージは壮観、そしてただただ圧倒される。だがそれを凌駕するのが、彼ら個々の意思だ。中核にあるロックという芯を一切ぶれさせず、血の通った音色を真っ直ぐ鳴らす。彼らの心意気とグルーヴは、そのステージの演出にも勝るものだ。それがきっと人の心を大きく奮わすのだろう。

2012年にリリースした6thオリジナル・アルバム『The 2nd Law』。ロンドン・オリンピック公式テーマ・ソングを収録したこの最新作は全英1位、日本での洋楽チャート1位を含む、世界23ヵ国でNo.1を獲得し、バンド史上最高の成績を記録した。そこからワールド・ツアーへと出た彼らは、2013年7月にローマのオリンピック・スタジアムで6万人を超える観衆を前に、史上最大のセットとライティングを駆使して熱演を繰り広げた。そのライヴの模様を収録した映像作品が、先日リリースされたばかりの『Live At Rome Olympic Stadium』だ。2013年1月に、さいたまスーパーアリーナで圧巻のステージを見せてくれたMUSE。筆者も同公演に足を運び大変感動したものだが、この作品に収録されているのは、それとは別次元とも言える演出がふんだんに織り込まれた、それはそれは素晴らしいライヴである。Matthew Bellamy(Vo/Gt/Pf)が“今年1番のライヴになった”と語るのは当然だろう。このバンドはここまで来たのか、そしてどこまで行くのだろうか。と、恐怖にも近い歓喜の気持ちに襲われた。日本やアメリカ公演などでいちばん大きな話題になったモニター・ピラミッドは姿を現さずとも、設営や火の玉、ムービーから飛び出した俳優の演技などが次々と我々を驚かす。16台のカメラを駆使して捕えた映像は、Matthewの情感たっぷりの熱い歌唱シーンやギター・プレイ、Chris Wolstenholme(Ba)の包容力のある屈強な低音を刻む姿、サウンドに箔を付けるDominic Howard(Dr)のビッグかつ締まったドラミング、歓喜の躍動でうねる客席を臨場感たっぷりに届けてくれる。アリーナの客席からステージを映す演出はまさしくその場にトリップしたような感覚に。そして要所要所で織り込まれるのが、オーディエンスの表情や、キスやハグ、肩を組むなどの客席でのパーソナルなリアクション。その自然体の生々しさは、観客1人1人にMUSEと築いたドラマがある証明とも言えよう。6万人のシンガロングのなかで一際輝くMatthewのグラマラスな歌声には陶酔せずにいられない。ここに広がるのは、夢のなかのように美しい世界。でもこれは夢ではない。音楽はこんなことまでできる魔法なのだと痛感する。

エクストラ映像として、アメリカでのライヴ映像を3曲収録。「Stockholm Syndrome」「The 2nd Law: Unsustainable」「Liquid State」とハードなナンバーを楽しむことができる。そしてステージ・セットを組み上げる過程を追った短編映像“The Road”も必見だ。MUSEというとんでもないバンドの実態を体感する作品。ここには地球で、否、宇宙でいちばん美しい世界が広がっている。

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