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FEATURE

AC/DC

2020.11.04UPDATE

2020年11月号掲載

ロックンロールよ永遠なれ――不死鳥の如く蘇ったAC/DCが再びロックンロールを鳴らすべく、最高のニュー・アルバムをリリース!

ライター:井上 光一

1973年の結成以来、AC/DCはいつだってロックンロールを愛し続け、ブルースの魂を宿し、自身の鳴らす音楽を信じ、音楽に対する深い敬意を忘れることなく、彼ら流儀の誠実さでもって永遠不滅の爆音ロックを鳴らし続けてきたバンドである。オーストラリアが世界に誇るモンスター・バンドとして、リリースした作品はいずれも記録的な売上を誇り、金太郎飴などという揶揄すらも無意味に感じられてしまう、その頑固一徹な音楽性を貫くスタイルは、世界中の音楽リスナーからの熱い支持はもちろんのこと、多くのミュージシャンが影響を受け、多大なリスペクトを寄せている。その輝かしい栄光の影で幾度も訪れた様々な苦難や葛藤も、最高のリフと強靭なグルーヴでねじふせてきた事実は、今さら語るまでもないであろう。そんなAC/DCにとって、前作『Rock Or Bust』(2014年)のリリース前後に起きた出来事は、50年近くにおよぶ長いキャリアの中で最も困難の連続と言えるものであった。Phil Rudd(Dr)の不祥事による逮捕、聴覚障害によるBrian Johnson(Vo)のツアー離脱(自ら代役を志願したGUNS N' ROSESのフロントマン、Axl Roseのことは記憶に新しいだろう)、さらにはツアー終了時にCliff Williams(Ba)が健康上の問題から音楽業界からの引退を表明。そして2017年の11月、長らく病気療養中であったバンドの創始者でありソングライター、稀代のリフ・メイカーとしてその名を音楽史に残す名リズム・ギタリストのMalcolm Youngが惜しくもこの世を去ってしまう――残されたメンバー、そして音楽ファンを襲った喪失感はあまりにも大きく、いかにAC/DCと言えどもさすがに解散してしまうかもしれない、と考えた方も正直多くいたことだろう。そもそも、これほどの問題を抱えてなおもバンドを存続させる強さを持った人はどれだけいるのか。曲を作ってアルバムを作ろう、ツアーに出ようなどと考えるミュージシャンは、どれだけいるか。世界中のファンが不安と共に見守るなか、それでもAC/DCは再びロックンロールを鳴らすことを選択したのだ。永遠のギター小僧にしてバンドを牽引し続けるYoung兄弟の片割れ、Angus Young(Gt)を中心として、バンドは2018年の8月からカナダはバンクーバーにあるスタジオに入り、ニュー・アルバムのレコーディングを開始している。メンバーは上述したBrian、Phil、Cliffの姿があり、すでにお馴染みとなったYoung兄弟の甥であるStevie Young(Gt)も参加。前2作を担当した名匠、Brendan O'Brienをプロデューサーに、ミックスにはMike Fraserを迎えて生まれたのが、バンドにとっては通算17枚目のアルバムとなる『Power Up』なのだ。

オープニングを飾るTrack.1「Realize」における、初っ端のBrianによるエネルギッシュなシャウトを耳にした瞬間、小難しい理屈などはすべて無へと帰すが如きパワーに圧倒させられるだろう。シンプルながらもロックの真髄が込められたような、匠のギター・リフが先導するTrack.2「Rejection」が続き、先行シングルとなったTrack.3「Shot In The Dark」で本作は最初のハイライトを迎える。ブルージーな香りを漂わせるイントロから始まり、激烈にタイトなドラムスとベースに導かれ、ビッグなコーラスがシンガロング必至のサビで昇天すること間違いなし。ゴキゲンなAngusのギター・ソロも聴きどころで、ステージ上で暴れ回る彼の姿が目の前に広がるような素晴らしさである。

基本に忠実でありながら、ソリッドなリフで疾走していくグルーヴがたまらないTrack.7「Demon Fire」(素晴らしいタイトル!)あたりは、確実にライヴで盛り上がる楽曲となるだろう。ドラムのカウントで始まる、なんていう王道中の王道も、AC/DCがやるとチープどころか最高にクールに感じてしまう。前作『Rock Or Bust』においても同じようなことを書いたが、ダンス・ミュージックやクラブ・ミュージックの表層的な部分の導入で安直に盛り上げようとするサウンドが溢れかえるなかで、プリミティヴなロックでしか成し得ない快楽を誰よりも追求してきたAC/DCのこういった楽曲のほうが、遥かに気持ち良く踊らせてくれるのだ。ルート音を弾いているだけで、独特の緊張感とグルーヴを生み出しているCliffのベースを軸としたTrack.8「Wild Reputation」、ミディアム・テンポでダイナミックに展開していくTrack.9「No Man's Land」にしても、ひとつひとつのフレーズはとにかくシンプルでありながらも、AC/DCのメンバーが繰り出すバンド・アンサンブルの中に、いつまでもロックの魔法が宿り続けているのだという事実こそが、驚異的と言えるだろう。

一発で耳に残るキャッチーなリフが最高にクールなTrack.11「Money Shot」、まるで往年の名曲「Back In Black」のような雰囲気を持った、ラスト曲のTrack.12「Code Red」に至るまで、最初から最後まで手加減なしのロックンロールが矢継ぎ早に放たれ、無粋な余韻もなく本作は潔く終わりを告げる。いかにもAC/DCらしい、変わりようのないバンドの音楽的態度に思わず嬉しくなってしまうのだが、個人的にはメロディアスなコード展開で織り成す、哀愁を帯びた歌心と泣きのギター・ソロが胸を打つ、Track.4「Through The Mists Of Time」のような楽曲の存在に、バンドが持っている"粋"を感じ取った。人生の酸いも甘いも知り尽くした男たちの背中が目に浮かび、思わず涙してしまうのだ。


Malcolm Youngに捧げられた、骨の髄まで"AC/DC印"のロックンロール・アルバム


今年2020年でちょうどリリースから40周年を迎える、ロックの歴史において最も重要な作品のひとつであり、5,000万枚を超える記録的な売上を誇る傑作『Back In Black』(1980年)は、同年に急死した伝説的なリード・シンガーのBon Scott(Vo)に捧げられた作品、というのはファンならずともロック好きであれば知っている方は多いだろう。『Back In Black』がBonに捧げられたものと同じように、本作『Power Up』はMalcolmに捧げられたものであるという。彼の遺したアイディアは作品に盛り込まれ、楽曲のクレジットについても全曲がAngusとMalcolmの共作となっているが、残念ながらMalcolmのプレイは収められてはいない。これはAngusいわく、Malcolmは自分のギター演奏を継ぎ接ぎするようなことは好まなかっただろう、という判断に基づいたものだそうだ。兄弟の絆や愛情、ミュージシャンとしての尊敬が伝わってくる温かいエピソードであろう。2020年の9月30日には、バンドは正式にBrian、Phil、Cliffの復帰を発表した。つまり本作は、Malcolmの魂と共に黄金期のクラシック・メンバーが集結して生み出された、骨の髄までAC/DC印の作品なのである。そこにはなんの迷いもなく、なんのしがらみもなく、嘘や偽りもない、時代がどれほど混迷を極めようとも、決して揺らぐことのないロックンロールの強さが込められている。それこそ聴くだけで"パワー・アップ"してしまうような、ロックンロールだけが持つ無尽蔵のエネルギーを、ぜひその身で体感してみてほしい。

なお、2020年の11月13日に世界同時リリースされる本作は、輸入盤のみ豪華ボックス仕様の完全生産限定デラックス・エディションの発売が予定されている。日本盤は高品質のBlu-spec CD2での発売が決定済みで、こちらも輸入盤のみだが各種カラー・ヴァイナルなどもリリース予定だ。それぞれのニーズに合ったものを選ぶと良いだろう。



▼リリース情報
AC/DC
ニュー・アルバム
『Power Up』

2020.11.13 ON SALE!!
SICP-31394/¥2,500(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV
[Sony Music Japan International]
※高品質Blu-spec CD2仕様

1. Realize
2. Rejection
3. Shot In The Dark
4. Through The Mists Of Time
5. Kick You When You're Down
6. Witch's Spell
7. Demon Fire
8. Wild Reputation
9. No Man's Land
10. Systems Down
11. Money Shot
12. Code Red

■「Shot In The Dark」

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