FEATURE
IRONBUNNY
2019.08.27UPDATE
2019年09月号掲載
メンバー:Kotono Hina Minami Ediee Ironbunny
インタビュー/文:宮﨑 大樹
ジャンルも、年齢も、国境も、すべてを超越していきたい
インパクト大のヴィジュアルが気になってこの記事を読み始めた読者のためにまずはひと言伝えておきたい。この4人組、その名もIRONBUNNYは、"女の子3人と特撮ヒーローモノ風のサイボーグでユニットを組んだら面白いんじゃない?"といった、話題性だけを重視したユニットでは決してない。彼らと、彼らの鳴らす音楽には間違いなく骨太なロック魂が宿っている。
"Ediee(Ironbunny)のいた2300年ではもうロックが廃れてしまっているらしくて。その未来を変えるためにEdieeが現代にタイムスリップしてやってきて、一緒に未来を変えようと結成したのがIRONBUNNYなんです"(Kotono)
世界の音楽チャートなどから感じるシーンの潮流というものは、どうやらこのまま加速していくらしい。なおIRONBUNNYという名は、サイボーグ・ギタリストのEdiee Ironbunnyの名前から取ったという。そのEdieeのヴィジュアルが由来していると思われる"Ironbunny"は、直訳すると"鉄のうさぎ"ということになるが――
"俺がサイボーグに改造されたときに残念なから過去の(人間だったときの)記憶はすべて失ってしまったんだ。自分の名前もね......。完成されたサイボーグとしての自分の姿を見たとき、頭についてる2本の角のようなものが兎に似てるなぁと思い、まさに「鉄の兎」という意味で自分のことをIronbunny と名乗るようにしたんだ。Edieeってのは敬愛するEddie Van Halen(VAN HALEN/Gt)から拝借したよ。でも綴りが間違っていたようだけどね......。あはは"(Ediee)
300年先の未来からタイムスリップをしてやってきたEdieeだが、そのギター・プレイには80年代、90年代のハード・ロック、ヘヴィ・メタルの影響を色濃く感じさせる。そこで、Edieeの音楽的バックボーンについて聞いてみると以下のように答えてくれた。
"基本的には80年代中後期~90年代初頭のギター・サウンドに影響を受けている。わかりやすく具体的な作品を上げると、David Lee Rothの『Eat 'Em And Smile』から始まりDOKKENの『Back For The Attack』を経由して、最終的にはStevie SalasやDweezil Zappaなんかに行き着いた感じだ。それぞれ「ギター・シュレッド」のスタイルは異なっているけど、「独自性の強いオリジナルなギター・スタイル」ということでは一貫性がある趣味だとは思っている"(Ediee)
さらに――
"この年代のギターには主張と個性が溢れていて、ギター自体がひとつのエンターテイメントとして成立していた。俺は未来から来ているんだが、もちろん今の人々が昔のChuck Berryのサウンドを聴けるように、俺の時代でもいろんな音楽を聴くことができた。そうして80~90年代のギター・プレイを聴き漁ってたってわけだ。ただしギターを手にしたきっかけは、Bryan Adamsのプレイしているところを見て、「やべぇ、ギターってカッコいいなぁ」って思ったことだったけどね"(Ediee)
かくして、現代にやってきたEdieeは女性ヴォーカルを探し始めた。現在の女性ヴォーカル3人+ギタリストという、珍しい構成に至った経緯や狙いも聞いてみた。
"とにかくギター、特にピッキング・ハーモニクスと主張性の強いリフを主体にハード・ロックを作りたかったので、ギタリスト(ギター・サウンド)を中心に組み立てることが第一段階の目標だった。女性ヴォーカルにしたのは、日本の、特にハード・ロック、ヘヴィ・メタルの今のマーケット・トレンドを考えると、女性ヴォーカルというのも必須だし、ヴォーカル・ラインで上のEとかFを使えるという、女性ならではの組み立てができるのも理由のひとつだ。3人にしたのは、俺が一番音楽的に影響を受けている「LAメタル」のひとつの特徴である「3声ハーモニー」を実現させるために......というのが理由だ"(Ediee)
こうして現代でロックのヒットを作り出し、歴史を変えるために結成されたIRONBUNNYは"未来型ハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ユニット"を謳っている。ちなみに選ばれし女性ヴォーカル3人は、なぜIRONBUNNYのオーディションを受けたのかというと――
"サイボーグ・ギタリストと女性ヴォーカルとロックという組み合わせは、今までに聞いたことがなかったので、すごく新しいと感じました。それと、Edieeのギターを聴いて、「このギターで歌を歌ってみたいな」と思い挑戦したんです"(Hina)
"このオーディションがあるって知ったときが、ハード・ロックとかヘヴィ・メタルに興味が湧いてきたタイミングだったんですよ。これは受けるしかないと思って受けました"(Kotono)
"もともとロックも歌っていて、サイボーグ・ギタリストってどんなものなんだろうって興味が湧いて、好奇心で応募してみました"(Minami)
とコメントしている通り、オーディションを受けたタイミングでは、このユニットやロックに興味はあったものの、ハード・ロックやヘヴィ・メタルについて深い知識はなかったらしい。そんな彼女たちが今や――
"Nuno Bettencourt(EXTREME etc.)が好きです。最初は顔がカッコいいなって見ていたんですけど、演奏を見ていくうちにファンキーさとリズムと雰囲気に魅了されました。今はNuno風のギター・フレーズを練習しているんですけど難しくて(笑)。ノリから学んで雰囲気を大切にしていかないとNuno風にはならないなと"(Hina)
"私はEddie Van Halenが好きです。いろんなギタリストの動画を観ているときに、Eddieだけ笑顔で「ギターを弾いているのが楽しい」っていう感じがにじみ出ていたんですよ。私もギターの練習をしているんですけど、笑顔がまだちょっと......険しい表情です(笑)"(Kotono)
"私はGreg Howeを目標にギターを練習していて。その年代の他のギタリストと違って、とにかく速く弾くっていうよりかは、オシャレに弾いているのが印象に残ったというか、すごくカッコいいなと思ったので彼を目標に頑張っています"(Minami)
......きっとこんな10代女子はどこにもいない! そして――
"ロックに触れる機会が多くなったことで、私の中に眠っていたロック魂が呼び起こされている感じがしています。どんどんロックを深めていきたいなって"(Hina)
と、すっかりロックに魅了されていることが伝わってくる。IRONBUNNYを知らなったハード・ロック、ヘヴィ・メタルのファンも、そろそろ彼女たちが気になってきたことだろう。
そんなIRONBUNNYが、いよいよデビュー・ミニ・アルバム『IRONBUNNY~鉄槌のオルタナティブ~』のリリースを迎える。
"発売されるっていうこともそうですし、何もかもが初めてなので嬉しい気持ちと不安な気持ちが混ざってます"(Kotono)
"私たちの音楽を多くの方々に届けるための1歩を踏み出せたことがすごく嬉しくて。毎日そわそわして眠れないです(笑)"(Hina)
"IRONBUNNYの音楽にどんな反応をしていただけるのかっていうことにすごくワクワクしています。ライヴだと直接反応を見ることができるけど、CDを発売したらどんなリアクションがあるのかなって"(Minami)
"今までにいくつものプレイもしたし、作品も作ってきた。これはいつも同じことなんだけど、曲を書いたりアレンジを組み立てたり、レコーディングしたり......と、制作してる時は「楽しい」と思うことはまったくないんだ。きれいごとじゃないけど、俺は自分や自分たちのために音楽を作ってるわけじゃなく、聴く人のために作ってると思ってる。だからこそ「どうすれば楽しんでもらえるか?」とか、「俺が前に述べたギタリストからインプロヴァイズの影響を受けたようなことをしてあげられるか?」というプレッシャーのほうが強く、制作期間はつらいことしかないのが現実だ。正直言うと、できあがった作品を目の前にしても、安堵感がちょっとあるだけで、「次はどうしようか?」というまた新しいプレッシャーに迫られる。そんななかでも発売後に聴いてくれた人から感想を聞いたときはちょっと嬉しいかな? なのでまだ「嬉しい」という感じは持ててないなぁ"(Ediee)
とリリースを迎えるメンバーの心境はそれぞれの様子。それでもIRONBUNNYとしてのヴィジョンや音楽で伝えたいことのスケールは壮大且つ明確だ。
"ジャンルも、年齢も、国境も超えて、みんなが夢中になるような新しい可能性とときめきを感じてもらえる存在になりたい。すべてを超越していきたいです"(Hina)
"昔のミュージシャンもリスペクトしていますし、現代の音楽もリスペクトしているので、現代にフィーチャーした新しいハード・ロックとかヘヴィ・メタルを伝えていきたいと思っています"(Kotono)