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FEATURE

AMON AMARTH

2013.07.11UPDATE

2013年07月号掲載

進化を遂げたからこそ、その傷だらけの掌に掴んだ未来がある。頂点に君臨するAMON AMARTH!誇り高きヴァイキングの魂は滅びることを知らない!

Writer 藤崎 実

デス・メタル・バンドがメタル・シーンに登場してから現在まで、多くのバンドが地下で産声を上げてきた。しかし、その特異な音楽性への様々な偏見や、メインストリームを席巻していた他メタル・ジャンルとの戦いに敗れ去り消えていったバンドも数多く存在している。現在でこそ、デス・メタルはしっかりとリスナーに認知されたメタル・ジャンルの1つとなり確立されてはいるが、1980年代から90年代初頭には差別的な扱いを受けていたバンドも多く、苦汁を飲んだ歴史を経験している。そんなデス・メタル・シーンの中において、屍の上に立ち自らを鍛え研鑽することで現在まで生き残ってきたバンドたち。彼らはまさに歴戦の勇士とも言える。

結成21年目、1stフル・アルバムのデビューから15周年となるスウェディッシュ・デス・メタル・バンド、AMON AMARTH。前身となるグラインドコア・バンド、SCUMは1988年に結成されている。その長い活動歴は既にベテランの域ではあるが、常にシーンのド真ん中で戦い抜いてきた屈強な彼らには、重く威厳のある“重鎮”という言葉の方が相応しいであろう。
AMON AMARTHはデス・メタル・バンドのサウンドを基本としながらも、最大の特徴であるヴァイキング・メタルやフォーク・メタルといったスウェーデンならではの独自の音楽性を前面に押し出したメタル・ファンタジーな世界観で統一されている。アルバム・コンセプトや歌詞に北欧神話や雄々しいヴァイキングを連想させるストーリーが多用されているという面でも、生まれ育った祖国の文化を尊重し誇りに思っているというある種のイデオロギーさえも感じることができる。
2013年6月26日、そんな彼らの待望の9thアルバム『Deceiver Of The Gods』がリリースされた。本作は今までのアルバムを全て肯定した上で、AMON AMARTHの良さや自信がサウンドに凝縮され、どこを切ってもAMON AMARTHらしさが感じられる今まで以上に濃い作風に仕上がっている。あらゆる感情や物語の情景をリスナーに伝える魅力があるJohan Hegg (Vo)。彼は怒りや憂い、自然の驚異でさえも表現できる豊かな歌声は説得力とカリスマ性に溢れている。物語を紡いでいく文才の高さやインテリジェンスも兼ね備えた彼がバンドの核であることは揺るぎない事実であろう。
ファンがもっとも期待しているであろう叙情派な泣きのギターは今作も健在。変化した点があるとしたら、全体的にスラッシュ・テイストやリフの比重が増えていたり、よりトラディショナルなメタルの要素を感じるということであろうか。Olavi Mikkonen (Gt)は、“楽曲制作時に出てきたすべてのアイディアをいったんキープし作品に反映させ捨て曲なしの作品になった”との自信に満ちた発言をしている。またミドル・テンポの楽曲にも疾走感が備わっているという点も素晴らしい。実際にこの要素を成立させるのとても難しく、リズム隊の地力の高さが窺える。今まで以上にAMON AMARTHの音楽性の幅を広げ、常に守りに回らず攻めの姿勢で進化をしている。本当に恐ろしい存在のバンドである。
プロデューサーとして参加した Andy Sneap (CATHEDRAL、ARCH ENEMY、CRADLE OF FILTHといったバンドを手掛けている)のスタイルが本作のAMON AMARTHサウンドに大きな影響を与えたことも興味深い。現代の洗練されたサウンドを保ちながら、よりアングリーでデンジャラス。今までの作品よりも荒々しく、ライヴ感を持ち得たサウンド・プロダクションとなっている。また、CANDLEMASSのMessiah Marcolin (Vo)がゲスト・ヴォーカルとして、Track.8「Hel」に参加。Messiahを迎え作業をするというアイディアはかなり昔からあったのだが、彼に合った曲が表れるまで待っていたそうだ。

今作は非常に豪華な仕様となっていて、DISK 1には2008年に収録されたライヴ音源がボーナス・トラックとして追加。DISK 2にはJUDAS PRIEST、BLACK SABBATH、MOTORHEAD、AC/DCといったメタル・シーンの伝説とも言えるアーティストをオマージュしたというユニークなアイディアの楽曲を収録。更に、PVやライヴ映像やを収録した限定ボーナスDVDが添付されている。

“LOUD PARK 10”や2012年の来日公演にて、素晴らしいライヴを披露したAMON AMARTH。多くのメタル・リスナーが3度目の来日を、パワフルでアグレッシブなステージをもう1度体感出来ることを心待ちにしている。

ステージ上で“ヴァイキングVSサムライ”の死闘が見れる日は近いのかもしれない!?

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