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FEATURE

THE DILLINGER ESCAPE PLAN

2010.03.08UPDATE

2010年03月号掲載

カオスを追求し続ける、 THE DILLINGER ESCAPE PLAN。更なる進化を遂げたニュー・アルバム 『Option Paralysis』が遂に完成!

ライター:米沢 彰

1930年代、『金持ちからしか金は奪わない』という美学を持ち、新聞を賑わせた大銀行強盗犯がいた。20を超える銀行から金を奪い、捕まっても二度も脱獄に成功し、『Public Enemy No.1(社会の一番の敵)』としてFBIから指名手配を受けながらも、その美学や大胆で派手な手口から『現代のロビン・フッド』とまで呼ばれ、一種のヒーローともなったJohn Dillingerだ。なお、彼の人生は映画にもなっている。(パブリック・エネミーズ 主演 ジョニー・デップ)
その強盗犯をモチーフにしたバンド名を持つカオティック・ハードコア・バンド、THE DILLINGER ESCAPE PLANが、大胆不敵なJohn Dillinger同様、自身の美学を貫き通し、3月19日に4枚目に当たるニュー・アルバム『Option Paralysis』をリリースする。

THE DILLINGER ESCAPE PLANの音楽性は、カオティックで、テクニカルで、時々ジャジーで、でもヴォーカルにはフックのあるメロディがあり、あまりのカオスっぷりに中毒者(ジャンキー)を大量に生み出し・・・。中々文字で形容するのが難しく、また、長くならざるを得ない。THE DILLINGER ESCAPE PLANを説明しようとする際に言葉が長くなる理由は“要素が多い”ということに尽きる。フックのあるヴォーカルメロディ、ジャズ・フュージョンのコードやリズム、超高速ドラム等、数多くの要素がTHE DILLINGER ESCAPE PLANのサウンドの中には存在している。同種のバンドや彼らのフォロワーも数多いるが、THE DILLINGER ESCAPE PLANが他よりも優れているのはその『多くの要素』を持ち前のテクニックとセンスで緻密に組み立てる上手さにある。

THE DILLINGER ESCAPE PLANはその特異なサウンドが多くのフォロワーを生み出し、似たようなバンドがシーンに飽和している状態となってしまった。全パートがスピーディで、ギターがピロピロ弾きまくり、ヴォーカルがスクリームする。それはまるでルールや方程式のように決まったやり方になってしまっており、下手をするとそのバンドのアルバム一枚すべてが同じ曲に聴こえてしまうことだってある。カオティック・ハードコアはそんなニセモノが氾濫する正に言葉通り“カオティック”なジャンルに成り下がるかとすら思っていたが、本家本元はやはり違う。持ち前のテクニックとセンスで、ちょっとやそっとでは真似できない、新しい方向性を打ち出してきた。恐らくフォロワーがまた追従しピアノ・サウンドを取り入れたり、ジャジーな方向性を打ち出したりしてくるだろうが、それはかえってTHE DILLINGER ESCAPE PLAN との差を明確にしてしまう結果になるだろう。

前作『Ire Works』では打ち込みを使ったインダストリアル的なアプローチも多く見られたが、最新作『Option Paralysis』では打ち込みはほとんど鳴りを潜め、その一方で、Mike Garsonがピアノの要素を加えており、新しい方向性を打ち出すことに成功している。Mike Garsonは、ピアニストとして、NINE INCH NAILS、SMASHING PUMPKINS、David Bowieなどとも共演歴があり、ロックとジャズ・ピアノの融合に於いてシーンの先頭を走る名プレイヤーだ。これ以上ないプレイヤーの起用に間違いない。元々、ジャズ・フュージョン的な要素を持っていたTHE DILLINGER ESCAPE PLANにピアノの要素が加わったこと自体は自然な流れであり、そこまで大袈裟に取り上げるべき点ではないのだが、ここまで上手く組み入れられると驚きに変わる。前作『Ire Works』を聴いた読者にしか伝わらないかもしれないが、『Ire Works』のTrack.9「Milk Lizard」に於けるトランペットのハマり具合を更に超える融合反応を引き起こしているのだ。
2007年、前作『Ire Works』は多くの賛辞を受け、各種音楽誌などでのランキングで上位に食い込み大反響を呼んだ。Kerrang!誌、Revolver誌などではその年のトップ20にランクイン。商業面でも、ビルボードに初登場142位とこのジャンルではあり得ない程の成功を手にした。(しかも、カウント漏れで本来はセールス数が1.5 倍になっていたというから、142位というのは相当低めに出た数字なのだ)前作の影響を引きずらず、新たな方向を模索しながら確実に更に進化したアルバムを作り上げるTHE DILLINGER ESCAPE PLAN からは物凄い気合いというか、執念のような鬼気迫るものがビシビシと伝わってくる。熱いエネルギーの塊をCD一枚に凝縮したかのようだ。

これまでのアグレッションを更に進化させながらも、Mike Garson のピアノの要素をも飲み込んだ今回の『Option Paralysis』は新しいTHE DILLINGER ESCAPE PLANのスタイルを確立させた、シーンのマイルストーン的な作品となる。

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