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LIVE REPORT

WHILE SHE SLEEPS

2024.10.10 @Spotify O-EAST

Writer : 菅谷 透 Photographer:古渓一道

WHILE SHE SLEEPSが、最新アルバム『Self Hell』を引っ提げたジャパン・ツアーを東名阪で開催した。昨年12月の代官山UNIT公演から1年足らずという異例のスパンでの再来日、さらに東京公演は会場のキャパシティを2倍以上に拡大しての実施ということで、SNSでは不安の声も囁かれていたが、蓋を開けてみればそんな心配は全くの杞憂だった。彼等は予想と期待を遥かに上回る、ケタ違いのスケール感を持ったパフォーマンスで、大勢の観客を狂乱させたのだから。

この日の1番手は、前回の来日公演でオープニング・アクトを掴み取ったThe Cards I Playが、サポート・アクトに昇格して登場。国内のシーンをさらに大きくしていく意志を込めた、気合十分のパフォーマンスで観客を沸かせていた。続く中国広州出身の"オタクコア"を掲げるHYPER SLASHは、ヴォーカルのSOONが"新世紀エヴァンゲリオン"のアスカのコスプレでステージへ。フロアも初めこそ困惑していたものの、超絶タイトなアンサンブルのピコリーモでがっちりと心を掴んでいた。

そうして舞台が整い、いよいよ出番となったWHILE SHE SLEEPSは、最新作『Self Hell』より「Rainbows」でライヴをスタート。アグレッシヴながらニヒルな雰囲気を纏っていて即効性も十分なサウンドは、早くも特大のシンガロングを誘発。
ブレイクダウンではウォール・オブ・デスが発生していた。間髪入れずに投下された「Sleeps Society」では冒頭で曲名の大合唱が起き、再びピットにぽっかりと大きな穴が開かれる。この日は幾度となくウォール・オブ・デスが生まれていて、観客も並々ならぬ熱意を持ってライヴへと挑んでいるのが感じられた。そんなフロアの様子にLawrence Taylor(Vo)が"ファッキン・ビューティフル!"と感嘆の声を漏らすと、「You Are All You Need」ではMat Welsh(Gt/Vo)の先導からジャンプが会場を揺らしていく。Sean Longの天に昇るようなトーンのギター・ソロにも歓喜の声が上がっていた。"Oh Shit!"のコール&レスポンスを経た後は「Anti-Social」がドロップされ、Adam Savage(Dr)とAaran McKenzie(Ba)の爆発的なビートが、フロアをさらにヒートアップさせていく。続く「The Guilty Party」はシンガロング、クラップ、そしてウォール・オブ・デスとまさに盛りだくさんの展開。こうしたライヴ1本分に匹敵するようなダイナミクスが1曲に詰め込まれていて、そしてそれが何曲も用意されているのが彼等のライヴの魅力なのだと痛感させられた。

MCではMatが"10年前に初めて来たときからこの国が大好きだ"と語り、前回の来日公演では体調が悪かったけど今回は万全だと笑顔を見せる。一呼吸置いた後の中盤戦は、最新作のタイトル・トラック「Self Hell」からスタート。ニューメタルにインスピレーションを受けたルードなグルーヴでフロアを揺らすと、直球のメタルコア・サウンドで突き進む「Brainwashed」、勇壮なコーラスが胸を熱くさせる「Four Walls」を立て続けに披露。制作時期もテイストも異なる楽曲だが、かえって衝動や感情の爆発といった、根底的な部分で共通している要素が浮き彫りになった感触があった。また「Four Walls」では肩車やスマホのライト点灯等、まるでフェス会場のような壮大な光景も見られ、彼等のスケール感に改めて驚かされた。続く「You Are We」では大合唱が巻き起こり、ダイバーも大量発生。演奏終了後にLoz(Lawrence Taylor)は"若い頃の自分にこの状況を教えたら、きっと鼻血を出して失神してしまうだろう"と後ろにのけ反る仕草を見せ、喜びを爆発させると、「Fakers Plague」では手でハート・マークを掲げ、ファンへの感謝を強烈な音像で伝えていた。

小休止を挟んで、"アイシテル、トーキョー!"というMatの一声から「Enlightenment(?)」で後半戦がスタート。10年前の初来日以来親交のある"Crossfaithに捧げる"という言葉とともにプレイされた「Silence Speaks」では、イントロの時点で歓喜の声が上がる。本格的な演奏が始まると、同時にフロア横の通路へ姿を消したLoz。いったいどこへ......と思っていたところ、なんと2階席のバルコニーにその姿が! 突然の展開にどよめきが起きるなか、Lozは5mはありそうな高さから、フロア目掛けてダイブしたのだ! 破天荒なパフォーマンスに、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。文字通りぶっ飛んだ行為をやってのけたLozも、彼をしっかりと受け止めたファンも見事だ。さらにLozがクラウドサーフで運ばれた先のステージには、サプライズ・ゲストとしてCrossfaithのKoie(Vo)が登場!

情報量が多すぎる展開によって、フロアはこの日一番のカオスに突入していった。演奏を終えても興奮は止まることなく、QUEENの"Ay-Oh"コールまで飛び出すほどの熱狂ぶりだ。そこで披露された最新作からのスロー・ナンバー「To The Flowers」は、冷静さを取り戻しながらも、より深いゾーンへと没入していくような感覚があって、『Self Hell』収録曲がライヴに新たな起伏を加えているのが理解できた。いよいよライヴも終盤というところで、ステージにはツアー・クルーによるバンドが登場。裏方としてショーを支えるスタッフに敬意を表した、粋な演出だ。しかも曲目はLINKIN PARKの名曲「One Step Closer」とあって、WHILE SHE SLEEPSに負けず劣らずの盛り上がりで彼等を称えていた。バンドもフロアもクルーも1つに連帯して迎えたラストは「Systematic」。その場にいた全員がすべてをぶちまけたような熱気が、会場に充満していた。

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