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LIVE REPORT

清春

2024.05.04 @Veats Shibuya

Writer : 杉江 由紀 Photographer: 森好弘

今を生きているという現実がある以上、いつかは死ぬという確定事項からも決して逃れることはできない。どれだけの富豪であろうと、よほどの天才だとしても、あるいはただの凡人にすぎないにしても、その点においては誰しもが平等だと言っていいはず。

2025年2月9日まで続く"清春2024 DEBUT 30TH ANNIVERSARY YEAR TOUR 天使ノ詩『NEVER END EXTRA』"を前にして、最新アルバム『ETERNAL』を発表した際に清春が本誌でのインタビュー(※2024年3月号掲載)で語っていたのは以下の言葉であり、そのことは今宵のVeats Shibuya公演でも存分に体現されていたのではなかろうか。

"今回のアルバムの詞に関しては死生観っていうのが基本になっていて、もし消えてなくなったとしても......っていうことも歌っておきたかったんですよ。ちょうど今年は30周年だし、50代後半に向かっていくタイミングですから。一般的な寿命はまだまだとしても、ミュージシャンとしてのキャリアは相当ベテランの域になってるのは事実で、気がついたらレジェンド枠に入ってることも認めないといけないんですよね"。3月には世界で高く評価されているBorisと豪州で[Boris "Heavy Rock Breakfast" -extra- AUS Tour March 2024 Special Act 清春]を展開し、そこから帰国してほどなく行われた、このVeats Shibuya公演で清春が我々に届けてくれたのは、赤裸々なる魂の迸りを湛えた歌と、身を削るかのような渾身のステージングだった。自らアコギを激しくかき鳴らしながらのヴォーカリゼイションが映えた「鼓動」で幕開けした今宵のライヴでは、ドラムレスの編成でパーカッション、ギター2本、そしてサックス(および各管楽器も兼任)というシンプルで洗練された楽器隊が清春をサポートしており、観衆は何よりも清春の歌と声をダイレクトに味わうことが叶う空間となっていたのである。ちなみに、このツアーではその日によって参加ミュージシャンのメンツが微妙に違うそうで、そうした日々の変化を楽しむのもまた一興と言えるのかもしれない。

なお、このところの清春はもともと不調だった足に加えて腰の状態にも不安があるそうで、この夜のライヴでも時折腰掛けながら歌ったり、ステッキを使って身体をかばいながら歌っている様子も見られたものの、例えば紫煙をくゆらせながら歌った「砂ノ河」からはある種の余裕が感じられたほか、エモーショナルな雰囲気の漂う「RUTH」などを筆頭に、後半へと進めば進むほどステッキを使う頻度は下がってステージングに熱が入っていくことが観ていてもよく伝わってきた。しかも、アンコールでの「あの詩を歌って」をオーディエンスと清春が共に大きな声でパワフル且つ楽しそうに歌い終わる頃には、実に3時間ほどの時間が経過していたのだ。

ただし、そうした真摯なる渾身のパフォーマンスが清春自身を追い込んでしまった面もあるのだろうか。この2日後にあたる5月6日には、本人の体調不良により開催予定だったビルボードライブ横浜での公演が開演寸前でキャンセルとなっている。無論、それがギリギリの決断であったことは充分に推し量れるところだ。この日のステージ上で"ここから30周年が始まりそうな予感がします"と言っていた彼の言葉は、必ずや予感ではなく実感へと変わっていくに違いない。

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