LIVE REPORT
湾岸の羊~Sheep living on the edge~
2023.10.13 @東京キネマ倶楽部
Writer : フジジュン Photographer:©イシバシトシハル
"このメンバーが集まったことが奇跡。アルバムが作れたことが奇跡。無事故でアルバムをリリースできて、今日を迎えられたことが奇跡。そして、こうやってみんなと出会えたことが奇跡です!"
ライヴ中盤、この日を迎えるに至るたくさんの奇跡への感謝と喜びを熱く語るHIRØ(Vo)に、奇跡の瞬間に立ち会った観客から大きな拍手が起きた。REDZ(Vo/Gt)、TATSU(Gt)、Ryo-Ta(Ba)、CHARGEEEEEE...(Dr)と奇跡のメンバーが集う、都会派ハードコア・ロック・バンド 湾岸の羊~Sheep living on the edge~が、1stアルバム『2020 RISING SUN』リリースを記念したワンマン・ライヴを開催。たくさんの奇跡が重なったこの夜が、ロック・シーンに新たな伝説を刻んだ。
開演時間となり、暗闇に包まれた会場をステージの照明が怪しく照らすと、サブステージに大きな花束を持ったHIRØが登場。メイン・ステージの紗幕には雨が降り続ける映像が流れ、ダークな世界観で会場を包んだオープニング。雷鳴と共にヘヴィな演奏が響き、すべての始まりの曲である「REBORN」で、ライヴが本格スタート。視覚と聴覚だけでなく、鋭く重厚なサウンドや痛烈なメッセージが痛覚にも響く、一音一音に魂を込めた歌と演奏は圧巻のひと言。
"狼煙を上げろ/魂(こぶし)を上げろ"と、観客の気持ちを鼓舞する「狼煙 ~NOROSHI~」にフロアから力強く拳が上がり、会場に共闘感が生まれると、遊園地を舞台としたMVから邪悪なピエロがステージに飛び出す演出から「Merry-Go-Round」へ。サポートであるJODY天空(Gt)とONODUB(Mp)も加えた最強の布陣による重厚且つ強靭な歌と演奏に加え、"ARTは妥協した時点で死ぬ"をモットーとした妥協のない演出で、ライヴハウスのライヴを超越したエンターテイメントを魅せたこの日のステージ。幼児虐待をテーマとした「Children's #189」など、現代社会に鋭いメスを入れ、聴く者の心情に訴え掛ける楽曲も、生の演奏でより強く胸に響く。
"バンドってのは明日あるかわからないから。今日、こうしてライヴができること、みんなとパーティーできることが本当に嬉しいです。何度でも何度でも言います、ありがとう!"
HIRØが感謝を告げると、"今日は思い切り声出していいからな"とREDZが観客を煽り、"Rise up!"、"Get up,Stand up!"のコール&レスポンスで会場がひとつになった「RISE UP」に続き、ライヴは終盤戦へ。TATSUとJODYによる白熱のギター・バトルから、華やかなだけでない都会の風景を映したMVで始まった曲は「都会の森」。逃げ場を失い、湾岸に辿り着いた羊たちの反逆。"湾岸の羊"のバンド名にも由来する、残酷な現実とそれに抗う姿勢を歌ったこの曲。広い荒野を想像させる壮大な演奏とHIRØの悲痛な叫びが胸を締めつける。
"「このアルバムのコンセプトってなんですか?」ってよく聞かれるんだけど、「生きて生きて生きようぜ、死なないでください」というのがコンセプトです。いいことも嫌なこともいっぱいあるけど、生きてると必ず報われるって信じてるから"
アルバムやライヴを通じて伝えたかった言葉をHIRØが届け、メンバーそれぞれが自身の想いや感謝を伝えると、"人は必ずいつか死ぬ。だから楽しもうぜ。悩んでんじゃねぇよ! 「ROCK」しようぜ!!"と本編ラストとなる「LAST BAD BOY」を披露し、ここからも戦い続けることを宣言。アンコールはメンバー全員が上半身裸で登場し、高速チューン「LOST CHILD」をぶっ放すと、ラストはHIRØがドラム・セットにダイブ。永遠の悪ガキっぷりを体現して、フィニッシュした。オープニングからアンコールラストまで、楽しくもヒリヒリとした緊張感を保ち続け、一切の妥協を許さない全身全霊のライヴは、"ロックは生き様"という言葉を改めて知らしめてくれるものだった。
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