シュレーディンガーの犬 2022.12.21 ＠新宿BLAZE

2022.12.21 ＠新宿BLAZE

Writer 長澤智典　Photographer：saru

激しいバンド演奏を挟み、ライヴは後半へ。ソロで初音ミクの「Calc.」を歌ったのが、卒業衣装姿のひっそりゆうみ。心地いい爽やかな音の風を吹かせるギター・ロックの上で、ファルセットを巧みに駆使し、甘いチャーミングな歌声で観客たちの気持ちをギュッと抱きしめていった。とても感傷的でポップ、青春の日々をこの空間へと導くような楽曲だ。間奏では、みんなが自分をアイドルにしてくれたと感謝の気持ちを述べていた。ここから新たな道へと飛び立つ気持ちを、ひっそりゆうみは明るく開放的な曲調とメロディに乗せて歌う。フロア中に黄色いペンライトの波が揺れていたのも印象的だった。

"みんなで盛り上がっていきましょう"の声を受け、再び4人が舞台へ集結。卒業するひっそりゆうみへの送別の思いも込め、彼女たちは自己紹介ソングの「シュレ犬ROCK」を、笑顔を浮かべた甘い歌声で届けていた。"楽しんだ奴しか価値がねぇ"の歌詞でもないが、フロア中の人たちが高く拳を突き上げ、4人と一緒に騒いでいたのも印象的だった。

再び轟音デジ・ロックの衝撃を突きつけるように、4人は「starry night」を歌唱する。重く、でも華やかに疾走する楽曲の上で、強い意志を持った言葉を突きつけるメンバーたち。その動きに合わせ、フロア中の人たちも身体を揺さぶりだす。次々と転調してゆく曲展開に合わせ、気持ちも高ぶり続ける。そして......。

最後にシュレーディンガーの犬は、君と僕が出逢えたことは奇跡なんだと思いを伝えるように「『アルタイル・ベガ、君と僕ふたり』」を歌いだした。拳を突き上げて歌うンバーたちの"オーオオー"の声に導かれ、フロア中の人たちも拳を高く突き上げ、思いのエールを彼女たちに送っていた。この日がこの4人で行う最後のライヴ。そんな感傷的な気持ちも胸に抱きながら、愛しい君に向けた思いを3人がこの歌に乗せてひっそりゆうみに届ければ、この出会いは奇跡なんだと感謝の思いを返すように、ひっそりゆうみも3人や観客たちへ向けて歌っていた。これからもシュレーディンガーの犬は、ここに集った仲間たちと一緒に未来へ向かって走り続けてゆく。たとえ形を変えようと、その思いを紡いできた仲間たちの気持ちもずっと背負いながら、彼女たちは2年前から描きだした物語を長く綴り続けてゆくのだ。その途中のページに、こんな心を濡らすシーンがあってもいいじゃない。メンバーと観客たちが大きく手を振り上げ、心をひとつに"オーオオー"と歌う様も、気持ちを涙色に揺さぶった。

バンドを従えて行ったツアー・ファイナル公演に描いた、魂奮わせる熱狂

アンコールは、観客たちをオラオラと煽る轟音ノイジーな「D.T.F」からスタート。エモ×エモな衝撃を描く楽曲に、魂が熱く奮い立つ。互いにこみあげた気持ちを交わしながら、高ぶる思いをぶつけ合った。まさに、ライヴらしいやりとりじゃないか。
ここで、メンバーらが思いを語りだした。

"シュレーディンガーの犬に入ってまだ4ヶ月だけど、今日、ファイナル公演に人がいっぱい来てくれて、なんかもう感動してる。まだ入って間もないから、涙まではいかないけど。もっとデカいところでライヴができたら、涙を流したいなと思います。これからも馴染めるように頑張ります"（もな）

"シュレーディンガーの犬の2周年であり、2ndツアーのファイナル公演になりました。今回のツアーは、新体制となってすぐに始まったから不安もあったけど。各地でたくさんの人たちがシュレーディンガーの犬のことを応援してくれているのが嬉しくて、ここまで走り抜けてきました。これも、みんなのおかげです。今日は現体制終了ということで、ツアー・ファイナルをきれいに終わらせられなくてごめんねというか、「このまま、この4人と一緒にいこう」と言えなくてごめん。でも、これからのシュレーディンガーの犬をもっともっと大きくして、「シュレーディンガーの犬がいて良かったな」って。「シュレーディンガーの犬を推してて良かったな」というグループに。もっともっといろんな人たちの心に止まるグループになりたいので、新体制のシュレーディンガーの犬も、これからも応援してください"（いち）

"ひっそり（ひっそりゆうみ）は今日で卒業しちゃうんですけど。2年前に新宿BLAZEでデビューさせていただいたときには、SEが流れた時点で泣きすぎて、メンバーに抱き締めてもらうような弱っちいやつで、フロアも全然見れませんでした。今は、ひとりひとりの顔をちゃんと見れたし、この2年間を通して、ライヴってすごく楽しいって思えるまでに成長しました。それも、応援してくれるみんなのおかげです。この2年間、ひっそりはシュレーディンガーの犬に全力を注いできて、これ以上頑張れないくらいに頑張ってきて、今日ここに立たせていただけていることに感謝しています。これからのシュレーディンガーの犬に、みんなもついていってほしいなと思います。2年間応援してくれて、本当にありがとうございました"（ひっそりゆうみ）

"この4人で活動をしてきた期間って、4ヶ月くらいしかなくて。だから、今日を迎えるまで正直不安で。新体制になることで厳しい状態になりたくなくて頑張ってきたけど、それでも、不安な気持ちがあって。だから今日、こんなにもたくさんの人たちが私たちのライヴを観に来てくださって本当に嬉しいです。シュレーディンガーの犬が始まってから2年間。最初から今までの2年間の思い出をこれからもずっと覚えているのは、もう自分しかいないんだと思ったら不思議な気持ちになりました。グループは、そうやって輪廻転生し変わっていくもの。それでもついてきてくれるみんな、本当にありがとうございます。これからもシュレーディンガーの犬はずっとずっと続きますし、シュレーディンガーの犬は時代を起こすアイドルになりたいので、これからも応援よろしくお願いします"（ならく）

この4人での最後の証をここへ刻もうと、感情を揺さぶるポップなダンス・ロック・ナンバー「genom-over」を歌唱。メンバー内でマイクを次々とリレーしながら、沸き立つ熱い感情を力に変え、フロアに熱気に満ちた景色を作り上げようと4人は声を張り上げていた。次々と転調しながら疾走する轟音に身を捧げ、思いきり身体を折り畳み歌う彼女たち。間奏ではフロア中の人たちと一緒に飛び跳ね、この空間にいるすべての人たちをエモい衝動の中へと巻き込み、熱狂させていった。

"ツアー・ファイナルだ、まだぶっ飛ばせますか"、"これからの3年目をよろしくお願いします"と述べたあと、彼女たちは"Hype upアガれ一点突破"と熱い声で思いを放ち、観客たちを煽りだす。ここから未来へ向け一点突破する勢いで、シュレーディンガーの犬は愛らしい振りも見せながら「Hype up!」を投下した胸に抱いた熱い気持ちを突きつけるように、彼女たちは手を伸ばし歌っていた。いちの攻撃的なラップも刺激的だ。フロア中の人たちが腕を振り上げて騒ぎ続ける。メンバーとフロア中の人たちが"手を伸ばす先、キミがいたんだ"と歌う詞のように、互いに手を伸ばし、ここに存在している意味を確かめ合いながら、心をひとつに拳を振り上げていた。

この4人のシュレーディンガーの犬として届ける本当に最後の曲として、彼女たちは噛みついて吼える勢いで「Singularity」を歌い叫んでいた。中には、少し涙声まじりに熱唱する歌声も。ここで作り上げた熱気に満ちた景色を、決して忘れない。沸き立つ気持ちを未来へ繋ぐ歌声のバトンにしながら、この場に4人は、生きた証を確かに強く刻んでいった。勢い激しく、エモさを抱きながら転調する楽曲に身を任せて4人は奮い起つ歌声をぶつけ、この空間を熱狂した景色に染めあげていった。

この記事を目にするころには、シュレーディンガーの犬は5人による新体制のグループとして突き進んでいる。その物語の先のページに、どんな熱いドラマを綴るのか。そのページを彩る絵筆の1本を持って、ぜひ参加していただきたい。

[Setlist]
1. Overture
2. jumpin'
3. What's going on
4. 『独りヒトリ』
5. 君の記憶の中に居たい
6. Underdog
7. Adolescent Noise
8. DoublE SliT
9. EgOiStIc LoVe
10. Straydog 11. アニマニフェスト
12. Protocol.
13. Calc.（ひっそりゆうみソロ）～シュレ犬ROCK
14. starry night
15. 『アルタイル・ベガ、君と僕ふたり』
En1. D.T.F
En2. genom-over
En3. Hype up!
En4. Singularity