LIVE REPORT
アルルカン
2022.11.26 @豊洲PIT
Writer : 杉江 由紀 Photographer:川島彩水
無難でいられないのは、アルルカンがいつだって真剣すぎるからなのだろう。真剣は振り方を1歩間違えば自らも他人も傷つけかねない。だが、それでも彼らはリスクを背負ってまでも真剣を手にし続けることをやめようとはしないのだ。
2022年は、2月に最新アルバム『MONSTER』で、ロック・バンドとしてひと皮剥けたところをまざまざと見せつけつつ、8月に発表された最新シングル『PICTURES』では、そのセンセーショナルな作品内容が、SNS上でも賛否両論の嵐を生み出してバズったアルルカンが、9月からの全国ツアー"アルルカン 9th ANNIVERSARY TOUR「決意を前に」"で、いよいよ無難ではいられないどころか、誰も予想していなかった窮地に追い込まれてしまった件は、広くネット・ニュースなどでも伝えられたためご存知の方もきっと多いだろう。
ツアー初日の9月4日を前に、ドラマー 堕門が一身上の都合からメンバーとの連絡を絶ち、本番を当日キャンセルするという緊急事態の勃発。そこから彼らがどうしたかというと、かなり短期間ではあったものの紆余曲折を経たうえでの決断をくだし、9月17日の柏公演からは、再び堕門も含めた5人でツアーを仕切り直しスタートするに至ったのである。そして、その際の心境についてヴォーカリスト、暁はこのたび迎えたツアー・ファイナルの舞台上で「PICTURES」を歌う際、ポエトリー・リーディングにあたる中盤の歌詞をまるっと入れ替え、それを、声を枯らすほどの激しさをもって我々へと届けてくれたのだった。
"目の前が真っ暗になって スケジュールは真っ白になった どうなってもおかしくなかった 誰もいなくなってもおかしくなかった それでも 5人でもう1回始めるって決めたから マイナスからのリスタート 柏PALOOZAから ここが決意のど真ん中 握ってるそのスティックで最高のドラムを叩け 地続きのリアルを最高のドラマに変える 裏切った期待をもう1回裏切って あったはずの未来より より劇的な今を生きる その気持ちでここまで来たんだ 危なっかしいバンドだけど 9年続けることができました ありがとう おめでとう それよりも これからの話をお前としたい 今も悔しくないライヴなんてほとんどない 観たい景色も俺はまだ見れてない 届いてないんだ だからこそ ワクワクするようなこれからの話がしたいんだ 俺は さぁ 聞いてくれ これからの話をしよう!"
やはり、アルルカンというのはどこまでも無難ではいられないバンドであるらしい。建前の類を用意することもなく、本音も葛藤も野心もすべてを直球の豪速で受け手にぶつけてくるこの容赦ないスタンスたるや、もはや荒ぶるロック・バンドならではの無難ではいられなさ加減が甚だしい。実に素晴らしいではないか。いいぞもっとやれ!
出戻ってくるにあたっては相当な覚悟をしたはずのドラマー、堕門。冷静沈着なスタイルと高い演奏スキルでバンドの音を支えるベーシスト、祥平。アグレッシヴなパフォーマンスと精緻なプレイを両立させるギタリスト、來堵。希代のメロディメイカーであると同時にバンド外でもミュージシャンとして重用されることの多いギタリスト、奈緒。赤裸々な詞世界と生々しく鋭い歌で人々を魅了するヴォーカリスト、暁。ここまで9年にわたる歴史を紡いできた5人は、来たる2023年に10周年のタームへと突入する。これからも無難ではいられないであろうアルルカンの進み行く"これから"に、まばゆき瑞光あれ――
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