MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

FREAK KITCHEN

2025.07.10UPDATE

2025年07月号掲載

FREAK KITCHEN

Member:Mattias "IA" Eklundh(Vo/Gt)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

キーワードは"身の回りにあるもの全てに、耳や目を傾けようとしない"こと


-デザインにはどのくらい携わったのでしょうか。

大いに関与したよ。設計者と顔を突き合わせて、ああでもないこうでもないって感じにね。パソコン上で美しく見えても実際の見映えには関係ないという手痛い教訓も得たよ。実際に作ってみて初めて"うわ、これクソだ。こりゃひどい"と気付くんだ(苦笑)。あれには目からウロコが落ちたね。実物は全然違うんだ。まぁ、あらゆることに当てはまるよね。スマホの中では現実でも、生身の世界ではそうじゃないことだってある。

-その新ブランドの"ULV"はフレットが印象的なモデルですね。重さのバランス等の話が先程出てきましたが、いかがでしょう。

そうそう、True Temperamentというフレットで、スウェーデンで設計されたんだ。通常のフレットは――通常のフレットだと、ギターのチューニングというのはできない。各フレットの役割が全く違うんだ。見えるかな? どのフレットも違う形になっている。

-本当ですね! 同じように波打っているわけではなかったのですね。

ああ。すべてのフレットを調整する必要があった。ストレートなフレットだと音が全く調和しないんだ。数値的にも無理だった。パンクの曲をやるとかそういうのだったらまだいいけどね。で、今回はオクターブ、例えばどのAも同じ音が出るようにしたんだ。俺にとってはもう神だね。ストレートなフレットにはもう戻れないよ。その悪さにばかり気付いてしまうんだ。

-波型のフレットを作ったのはTrue Temperamentのアイディアだったのでしょうか。

そう、彼等のものだよ。俺自身は2008年に初めて使ったんだ。

-なるほど。あなたのユニークさを支えているのですね。

ははは、それは分からないな(笑)。少なくとも俺が音を調和させるのには役立っているよ。

-ところで先程も話に出ましたが、ギター・クリニックやスウェーデンでの"Freak Guitar Camp"等、積極的に後進育成に取り組まれています。こうした活動を重視するようになったきっかけはなんでしょうか?

俺自身もエネルギーを受け取っているんだ。今年の"Freak Guitar Camp"はたくさんのギタリストが参加するし、ずっとしゃべりっぱなし、プレイしっぱなしで、全力を注いでいるから、2~3週間もやっていると疲れ切ってしまうけどね。でもその分たくさんのエネルギーが返ってくる。
俺が"Freak Guitar Camp"を始めたのは1999年のことだった。ある意味、真の意味で唯一のギター・キャンプだ。本当に"キャンプ"だからね。スウェーデンの森の中、荒野のまっただ中にある湖のほとりでやるんだけど、カヌーもあるし、どデカいテントも建てる。暑い日はテントの壁を取り払って、草むらの上に座ってやるんだ。機材もいいものを使っているし、俺は小さなステージに腰かけている。コナッコルというインドのリズム言語も使っている。という感じで、ローファイとハイテクを併せ持った性質があるんだ。Wi-Fiは使わないし、ネットなんてものも使わない。参加者の多くはテントに寝泊まりしている。そうでない場合もあるけど、部屋を共にする相手がいびきのデカいインド人だったりする(笑)。ファンタスティックな環境だよ。
俺にとってミュージシャンとして、そして人間として成長するということは――俺はこの活動から多くのことを得ているんだ。魂にね。俺は自分の持っている全てを出しているから、"さぁ今回はどうする? 何か新しい工夫を凝らさない"と考える。

ということで、今年は全く新しいアルバムを作ることにした。10曲入りの、Freak Audio Labのやつをね。Freak Guitar Lab、Freak Guitar、FREAK KITCHENがあってFreak Audio Labもあるってことだ。これは俺のクリエイティヴなアウトプットの場で、B.C. Manjunathというギタリスト、Yogev Gabayというドラマー、それからLior Ozeriという素晴らしいミュージシャンたちと組んだ。これがこの秋に出るんだけど、"Freak Guitar Camp"の教材にもなっていて、俺が全曲記譜した72ページのブックレットが付いている。
そんな感じで、超クリエイティヴにやっているんだ。俺にとってはクリエイティヴなプロセスが一番大事だからね。10曲入っていて......俺も少し歌っているけど、基本的にはコナッコルを使っているよ。説明するとしたら、"インディアン・スウェディッシュ・エレクトロ・ポップ・メタル"かな(笑)。

-これはあなたのソロ・プロジェクトということなのでしょうか。

俺は"プロジェクト"という言葉アレルギーみたいなものなんだ(笑)。みんな"プロジェクト"と称していろいろファイルを送り合っているけどね。まぁ、言ってみれば"プロジェクト"みたいなものだけど、クールなアルバムに仕上げようとしているよ。この秋日本から帰ってきた頃に出る感じかな。"Hellfest"から帰ってきたらミキシングするつもりなんだ。

-それは将来の楽しみができますね。サマー・キャンプに話を戻すと、演奏技術だけでなく、音楽業界でのサヴァイヴァル術についても教えているそうですね。現在の音楽業界で成功するために最も重要な要素はなんだと考えますか?

まず、自分の権利を契約に売り渡さないことだね。よく"ストリーミングの台頭で、音楽で金を稼ぐのが無理になった"なんて言われているけど、これは真実じゃない。俺の音楽での稼ぎは過去最高になっている。CDを山程搬送して売っていた頃よりも稼いでいるんだ。ストリーミング、ヴァイナル、あとはグッズなんかを通じてね。音楽で食っていくことが可能なのは確かだよ。でも自分の権利をちゃんと守らないといけない。多くのバンドは"何百万回もストリーミング再生されているのに......"と文句を言っているけど、俺に言わせれば、それは他のところに金が流れているからなんだ。マネージメントだったり、レコード会社だったりね。トリッキーなビジネスだよ。でもそのなかでやっていかなければならない。適応するか死ぬかだ(笑)。
俺くらいの歳の人たちは自宅に25枚入りのCDの箱を抱え込んで、"誰も俺の音楽を買ってくれない"なんて嘆いているけど、今時のキッズはCDが何かってことすら知らないからね。代わりにプレイリストなんかがあるんだ。だから適応するか受け入れるかしないとアウトだよ。必ずしも死ぬことはないけどね。
俺は自分の音楽全ての権利を持っている。トルコのラジオが俺たちの曲をかけてくれたり、誰かがミームやリールや着メロに俺たちの曲を使ったり、ゲームの中で使われたり、BGMに使われたり、もちろんストリーミングでも流れたりするから、実のところ過去最高のペイになっているんだ。だから不平はないよ。同時にすごく権利保護への意識が高いんだ。自分の労力への報酬が他人に行く必要なんてないだろう? でも多くのミュージシャンは"俺はロック・スターになるんだ"みたいな感じだからね。そういうのは一時期は楽しいだろうけど、生活費だって払わないといけない。税金も払わないといけないし、車にガソリンも入れないといけない。犬にエサもやらないといけないんだ(笑)。

-今の若者はラッキーですよね。あなたのやっているようなクリニックもありますし、カジュアルな学び方であるYouTubeやアプリの普及により、ギタリストの平均的な技術水準は確実に向上しています。一方で、自分だけの個性やサウンドを見つけることに苦労しているプレイヤーも多いようです。あなたの場合は時代の変化に柔軟に対応しながらユニークさを保っているわけですが、彼等に対してどのようなアドバイスを送りますか?

素晴らしい質問だね! これは実に根本的な問題だと思っているよ。みんな手っ取り早い解決策を探しがちだけどね。YouTuberだと"この機材を知っている"、"あの男を知っている"、"あの男が使っているエフェクト・ペダルが欲しい"、じゃないと退屈だ、みたいな感じになってしまう。でも機材は全く関係ないんだよね。もちろんいい機材があるのに越したことはないけれど。俺はYouTubeみたいなプラットフォームは自分の利益のためだけに使っている。俺はYouTuberじゃないし、これからなる気もない。何か作ったらアップして、あとはカーテンを閉じて、仕事の続きをやるだけだ。この部屋も――このパソコンはもちろんオンラインだけど、音楽の作業をするメインのコンピューターはあっち(※背後)にあって、オンラインにしたことがないんだ。

-スタンドアローンということですね。

オフラインで生まれてオフラインで死んでいくんだ(笑)。キーワードとしては"身の回りにあるもの全てに耳や目を傾けようとしない"ということかな。何しろ情報過多だからね。YouTubeの情報量は圧倒的だから、ギターやウクレレ、あるいはドラム・キットとじっくり向き合うことが大事だよ。
みんな"あーあ、俺の演奏は最悪だな"と思ってオーバー・ダブしてしまう。間違いを全部修正して――今じゃ"インスタギタリスト"が1世代分くらいいる。ギタリストというプロファイルに固執している人たちがね。でもそういう人たちの音を聴いてみても"ギターだって? 本物のギターはこんな音しない"と思ってしまう。ギターというのはとっ散らかった楽器であって、洗練させようったって不可能なんだ。ギグや見本市なんかに出ているギターとは似ても似つかない音を出している。ギグや見本市のは現実世界を反映しているけどね。
と言ってもどっちが正しいとかそういう話ではないんだ。彼等にもフォロワーがいるしね。でも言えるのは、"いいね"を追い求めようとしないこと。他人の承認を求めようとしないこと。やるなら自分のためにやることだよ。そうしたらいいことが起こるから。小さな惑星だし、あらゆることが繋がっているからね。ログオフしてオフラインになって、楽器と一緒に時間を過ごして、曲を書くんだ。それで自分にとっていいものができたら、それが"いいもの"だから、ご近所さんや親友や、SNSの"友達"を喜ばせようとしないことだね。
自分の音楽のことだけ考えて、恐れ知らずにやるんだ。好きだからやる、自分にとって意味があるからプレイする。大事なことはそれだけだよ。そうしたらスーパーヒーローになれるから。あまり考えすぎたり、利口になろうとしすぎたりしないほうがいい。"これは間違っているのか? 誰か気に入ってくれるかな? もしかしたらあのエフェクト・ペダルがあったほうが"......そういうくだらないことを考えなくたっていい。自分を守って、自分にとっていいことをやるんだ。本当はそれくらいシンプルな話だよ。自分のエネルギーを守ることだね。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

いつもの陳腐な言い方になってしまうけど(笑)、早くみんなに会いたくて待ちきれないよ。オーディエンスのみんなと会って、話したり、ハグしたりすることを約束するよ。一緒に写真を撮るのもいいし、俺の"スウェーデン仕込みの汗"の匂いを嗅ぐのもいいだろう(笑)。

-(笑)

ギグが終わったらメンバー3人でうろうろするからね。バンドと一緒にまた日本に行けるのは最高だよ。日本のファンのサポートには心から感謝している。今俺がこうやっていられるのもみんなのおかげだからね。今俺の中で日本リヴァイヴァルみたいな感じになっていて、以前より多く日本に行くようになっているんだ。日本のFreak Guitar LabともZanshin Musical Instrumentsともいろいろやっているし、実際に呼んでもらっている企画もあるから、今後はもっと頻繁に日本に行くよ。君が希望する以上にね(笑)! "またアイツが来たのか。スウェーデンはもう飽きた。帰れ!"みたいに思うかもしれないけど(笑)、きっとものすごく楽しいことになるし、今からワクワクしているよ! 9月に会おう!

LIVE INFORMATION
"EVERYONE GETS BLOODY in Japan"

9月16日(火)UMEDA CLUB QUATTRO O.A.:六合
9月18日(木)SHIBUYA CLUB QUATTRO O.A.:ulma sound junction
OPEN 18:00 / START 19:00
前売 ¥11,000(D代別)
購入はこちら