INTERVIEW
FREAK KITCHEN
2025.09.30UPDATE
Member:Mattias "IA" Eklundh(Vo/Gt) Christer Hysén(Ba/Vo) Björn Fryklund(Dr)
Interviewer:菅谷 透 Translator:石田 桂一 Live Photographer:Jun Tsuneda、Hikaru
スウェーデンのメタル・バンド FREAK KITCHENが、ジャパン・ツアー"EVERYONE GETS BLOODY in Japan"を東阪で開催。2003年以来となる来日公演では、3人が一体となった超ド級のグルーヴ、テクニカルな演奏とユーモア溢れるMCで会場を熱狂と爆笑の渦に包んでいた。激ロックでは来日前にMattias "IA" Eklundhへの単独インタビュー(※2025年7月号掲載)を実施したが、今回は東京公演を控えた3人に楽屋にて取材を実施。大阪公演の感想や、クリック音源を使わない自由なライヴ・スタイル、現体制が25年間継続している秘訣等、様々な話を訊いた。
-バンドとしては22年ぶりに日本に戻ってきましたね。Mattiasさんはギター・クリニック等で来日されていますが、Christerさん、Björnさんは久しぶりの日本になったと思います。印象はいかがですか?
Christer:本当に長い間、日本に戻ってきたいと思っていたんだ。だからこうしてまた来ることができてエキサイティングだよ。全てが素晴らしいと思う。観客のみんなが俺たちを覚えてくれていたことも含めてね。俺にとっては初めて来たときとほとんど同じような感覚だよ。そのときは"やっと日本に来られた"ってとても興奮していたんだ。それから22年も経ったから、今回も興奮しているよ。
Björn:再び来ることができて素晴らしいね。日本は世界の他の地域と比べてとても違う、興味深い場所なんだ。食べ物、人々、建築......全てが"ワオ、クールだ"って感じだから再び戻ってくることを楽しみにしていたんだ。戻ってきて感じたのは一緒でもあり、違う部分もある。なぜなら俺たちも歳を取って、いろんな経験をしてきて感覚が変わったし、きっと日本にも変化があっただろうからね。でもそれは悪いことじゃないよ。

-2日前には大阪でライヴがありました(※取材は9月18日)が、公演の感想を教えていただけますか?
Mattias:素晴らしい体験だったよ。みんなが熱狂して、歌って踊っているのには驚いたね。イカれたように騒いでいたんだ(笑)。多くの人が歌詞を覚えていて、新しい曲も古い曲も、その間の曲も全て歌ってくれて。心温まる体験だったね。
Christer:新しい世代の観客がいたのもクールだったね。いろんな年齢層や、異なるタイプの人々が一緒になっているのを見るのは嬉しいよ。22年間俺たちの曲を聴いてくれていた人たちはもちろん、新しいファンも来てくれている。"俺たちはまだ古くなってない"って希望を与えてくれるし、この先も活動を続ける意義があると感じるよ。
-22年間待ち続けてくれたファンだけでなく、最近皆さんを"発見"したであろう観客も一緒になって楽しんでいたということですね。
Mattias:その通り。そして、それがバンドを長く続けていく上での難しい部分でもあるんだ。新しい人々を掴むことと、同時に古いファンも大切にすること。だからこそ、俺たちは多彩なセットリストを組んでいるんだ。みんなが聴きたがっていて一種の伝統みたいになっているクラシックな曲もあるし、新しい曲だって演奏する。そうじゃなくて、もし古い曲だけのセットリストを演奏するとしたら、俺はきっと退屈してしまうだろう。逆に"古い曲なんて知らないよ"って新しい曲だけを演奏するのも、なんだか落ち着かないよね。でも"1枚のアルバムだけやるよ"って感じで、例えば『Spanking Hour』(1996年リリースの2ndアルバム)の全曲だけをやることもしない。それはエキサイティングじゃないからね。だから、バランスを取っているんだ。
-それもあって、大阪公演のセットリストはバラエティに富んだものになっていたんですね。ほぼ全てのアルバムから選曲された、オールタイム・ベストのようなセットリストでした。
Mattias:"オールタイム・ベスト"というのは主観的な意見だけど、でもそれがFREAK KITCHENの魅力だと思うんだ。みんな異なるお気に入りの曲があるから、全員を満足させることは不可能だよね。ある人は『Spanking Hour』の「Burning Bridges」がベストだと言い、別の人は「Small Acts Of Rebellion」(2024年リリースの10thアルバム『Everyone Gets Bloody』収録曲)がベストだと言うかもしれない。また別の人は新しい曲がこれまでで最高の曲だって言うだろう。それはありがたいことだよね。だから、MVになった曲だけを演奏するなんてことはしないんだ。 もちろん「Freak Of The Week」(2014年リリースの8thアルバム『Cooking with Pagans』収録曲)みたいな楽曲は、素晴らしいアニメーション・ビデオのおかげでずっと大人気だ。でもそれが必ずしも俺たちのベストな曲というわけじゃない。俺はその後の楽曲のほうが好きだったりするからね。 だから、俺たちはいいとこ取りな選曲をしてるんだ。何が良く聞こえるか、何が俺たちにとっていい感じがするかをね。ある意味で、俺たちが聴きたいものを演奏している。俺たちがそれをハッピーなエネルギーで演奏すれば、観客も同じように感じてくれると信じているんだ。もし誰かに何を演奏すべきかを指示されたとしたら、"あぁ、またこれをやるのか"って感じになるよ(笑)。きっとそれは観客も感じ取れてしまうからね。不満のエネルギーが伝わってしまうだろう。だから、そう思わないようなセットリストを組んでるんだ。

-ステージに立っている側が楽しんで演奏することで、観客もそれを感じ取ることができる、ということですね。
Mattias:その通りだね。ショーを完璧にするために全てを準備して、アルバムと全く同じように演奏したり、クリック音源やバッキング・トラックに合わせて演奏したりするなんて、退屈で死んでしまうよ――なぜなら俺は人間だからね(笑)。生きている存在なんだ。時には交通渋滞に巻き込まれることもあるし、時にはメキシコシティへのフライトを逃すこともある(笑)。ひどいことだけど、人生はそういうものだ。時にはいいこともあるし、時には嫌なこともある。でも、それは俺たち自身を反映しているんだ。そのときの人生における俺たちそのものなんだよ。だから失敗しても、それはそれで人生の1ページだね。
-そう言えば、大阪公演で歌詞を忘れて曲が止まってしまったという話もありましたね。
Mattias:あぁ、何の曲だったかも覚えてない(笑)。
Christer:毎晩あることだよ(笑)。
Mattias:まぁ、そんなに重要なことじゃないよ。即興を行い、新しいことを試すことがライヴの美しさだ。だから自分自身の警戒を解いて、間違いを犯したって大丈夫なんだ。結局のところ、どんな人生を送ったとしても、俺たちはみんな最終的に失敗する。みんな死ぬんだからね(笑)。だからリラックスして、生きている間はハッピーに楽しむんだ。間違えたってクソ食らえ、自分でジョークにすればいい。そうすれば安心できるだろう。時には素晴らしいプレイができることもある。時には音をめちゃくちゃ間違えることだってあるけど、それも人生なんだよ。