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INTERVIEW

FREAK KITCHEN

2025.07.10UPDATE

2025年07月号掲載

FREAK KITCHEN

Member:Mattias "IA" Eklundh(Vo/Gt)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

鬼才ギタリストのMattias "IA" Eklundhが率いる、スウェーデンのテクニカル・メタル・トリオ、FREAK KITCHENがジャパン・ツアー"EVERYONE GETS BLOODY in Japan"を9月に開催する。2003年以来となる来日公演は、最新アルバム『Everyone Gets Bloody』(2024年リリース)を携えたツアーとなっている。近年では自身の新ギター・ブランド"Freak Guitar Lab"を立ち上げる等、新境地を開拓し続けているMattiasに、音楽哲学から若手ギタリストへのアドバイスまで幅広く語ってもらった。

-9月にFREAK KITCHENの来日公演が開催されます。Mattiasさんご自身はギター・クリニック等で頻繁に来日されていますね。バンドとしての来日は実に約22年ぶりとなります。これだけ長期間を要した背景について、お答えできる範囲で聞かせていただけますか?

時間っていうのはいつも一番の敵だよね(笑)。実は俺にもよく分からないんだ。そんなに時間が経ったことを示しているのはたぶん俺の白髪になった顎ヒゲくらいだね(笑)。

-(笑)

いろいろ付き合う会社が変わったり、フォーカスが変わったりしたのもあったけどね。と言っても日本のことはずっと大切に思ってきたし、俺自身数えきれないくらい日本に行っている。クリニックをやったり......"サウンドメッセ(in OSAKA)"にも参加したな。そんな感じで、日本のことはいつも大切に思っているから、できるだけ頻繁に行くようにしているんだ。
他にもアメリカ、インド、ネパール、ヨーロッパ全土......と世界中を回っているよ。変な話なんだけど、こういう生業をしていると、SNSなんかでよく"こっちに来てくれ"と言われる。"このフェスに出てくれ"とかね。だから自分たちの裁量で動いていないことが多いんだ。企画と招聘ありきだからね。数年前の話になるけど、Zanshin Musical Instrumentsのケイイチ(石田桂一/株式会社ピーブイピー代表)と出会ったんだ。俺が自分のブランドを始めたときはすごく喜んでくれて、いろんな人に連絡を取ってくれた。そうしたら突然、バンドの来日への機運が高まったんだ。おかげで今回のツアーが決まって、みんなハッピーだし、いい雰囲気になっているよ。
俺自身はツアーの後数日滞在しようと思っているんだ。日本が大好きだからというのもあるけど、東京でクリニックをやるかもしれない。直近は大阪に行っていたから、東京の友達が"なんだよ、東京には来ないのかよ!"なんて言ってくれているし、しばらくいるかもしれない。......でも、なんでこんなに声が掛かったのか、俺には分からないんだ。俺自身はずっと忙しかったしね。でもバンドを連れてくるのはロジスティクスの問題もあるんだ。ただ航空券を買って飛行機に飛び乗ればいいというわけにはいかないからね。日本側から計画してもらわないといけない。それが現実だよ。まぁでもまた行けることになって、全員ハッピーなんだ。

-ちなみに(バンドの)前回来日公演は2003年でしたっけ。

2003年じゃなかったかな? CLUB CITTA'でやったんだ。

-だいぶ昔ではありますが何か印象に残っていることはありますか? あなたの初来日もそのときだったのでしょうか。

いやいや。俺の初来日は1996年だよ。すごくクレイジーな思い出があるんだ。ショーはたしか2時間くらいやって、始まった時間も結構遅かった。その後......誰のアイディアだったのかは分からないけど、すごく変な展開だったんだよね。ショーで汗だくになって、全力を出し切った後に、俺はギター・クリニックをやることになっていたんだ。ステージ上で、オーディエンスを前にだよ? あんなのは後にも先にもあのときだけだったね。すごく楽しかったけど、クレイジーだったよ。シャツを着替えて、顔から汗をぬぐって椅子に座って"皆さん、これがスウィープ・ピッキングです"とか、"リズムを弾く例をお見せしましょう"みたいな感じで、(ファンへの)ギターのプレゼントまであった。すごく不自然な流れだったよ。
しかもその後、真夜中にどこかのビデオ撮影スタジオに移動したんだ。そこではたしかYOUNG GUITAR誌の撮影があった。それもまた真夜中にクレイジーな話だったよ。そのときの写真を見ると、我ながら疲弊しきっているね(苦笑)。時差ボケもあったし、死んだ魚みたいな顔だったよ(苦笑)。まぁ、ショー・ビジネスはそういうものだよね。いつもカオスになる(笑)。と言っても、日本にいるときは仕事しているのが好きなんだ。せっかくみんなと一緒にいるんだからね。それにつけてもクレイジーなスケジュールだったよ(笑)!

-今回は最新アルバム『Everyone Gets Bloody』を携えたツアーとなりますが、セットリストの構成や演出面で予定していることがあれば教えてください。

ステージングはヨーロッパと基本的に同じになるだろうね。バンドのフロント・カバーとか、舞台袖に赤いスクリーンを置くとか。来週は"Hellfest"というフェスに出るよ(※取材は6月中旬)。6万人くらい来るデカいフェスなんだ。しかもメイン・ステージでやるから、いくつか機材を送らないといけないんだよな。と言っても今はわりと簡単だよ。俺はLine 6のHelix®を使っているし、Chris(Christer Hysén/Ba/Vo)もHelix®を使っているしね。俺は6弦ギターから8弦ギターに替えたこともあって、いろんなチューニングのギターを何本も持っていかなくてよくなった。あと、ドラムスは日本で借りることになるんじゃないかな。わざわざ送るのもなんだしね。荷重過多になってしまう(笑)。
まぁそんな感じで、いいショーになるよ。俺たちはバッキング・トラックを使わないから極めて"生"なショーになる。時にはぐちゃぐちゃになるし、すごくクールになることもある。クレイジーでパンキッシュになることもあるけど......(笑)、とにかくエネルギッシュな、やりたいことをやるステージになるよ。オーディエンスをステージに上げたりすることもあるしね。"おっ、いいTシャツ着てるね! こっちに上がってきてみんなに見せてやってくれ!"みたいな感じで。それで、その場でそのTシャツを歌にするんだ(笑)。
セットリストはまだないんだ。SNSで"何が聴きたい?"とリクエストを募ったらいいかもしれないな。もう10枚もアルバムがあるから、選ぶのがとても大変なんだ。もちろん昔の曲も入れたいし、みんなが聴きたがるものも入れたいし、MVを作ったやつも入れたいし......まぁ新旧織り交ぜたものになると思うけど、セットリストに関しては結構いい加減なんだ(笑)。ステージに上がる1時間前くらいに決めることが多いね。

-会場の雰囲気で決めるとか?

まさにそれだよ! "今夜は何が求められているんだ?"なんて考えてね。聴いてくれる人が音楽をやっている人ばかりなのか、それとも単に暴れたいキッズたちなのか――そんな感じで様子を見るよ。ともあれ、10枚のアルバムからバラエティを考えてやることになるね。

-大阪公演のオープニング・アクトには六合、東京ではulma sound junctionの出演が決定していますね。彼等の起用にあなたも携わったと聞いています。

ああ。いろんなバンドのリストを検討したよ。大阪で六合に会ってもいるんだ。

-そうだったんですね! "サウンドメッセ"で?

その通り! みんなをウォームアップしてくれる、いいサポート・アクトになってくれると思って選んだよ。俺たちはモンスター・ビッグ・バンドじゃないし、アリーナでやるようなバンドでもないけど、それでもオープニング・アクトがあるのはクールなことなんだ。地元の人や彼等の友達が来てくれるだろうしね。本当にいい人たちだったよ。それで直感で決めたんだ。次もそのときの直感で決めるよ(笑)。

-それ以前から彼等とは知り合いだったのですか。

音は聴いていたよ。関係者にはいくつか候補を挙げて"この中からオープニング・アクトを考えている。どれがいい?"と相談したんだ。候補のバンドをがっかりさせたくないから、本当は15バンドくらいサポート・アクトが欲しいんだけどね(笑)。ただ、今回は火曜日と木曜日にプレイするから、みんな翌日学校や仕事があるかもしれないし......(笑)。

-彼等の音楽はどこが気に入っていますか。どちらもパワフルなバンドで、FREAK KITCHEN登場前の雰囲気をアゲてくれると思います。

どちらもとてもクールだよね! ソングライティングがしっかりしている。FREAK KITCHENは変わり種なバンドで、ファミリー向けのフェスからポップ、デス・メタルのフェスまでなんでもやるから、デス・メタル・バンドや、ブラック・メタル・バンドがオープニング・アクトになることだってあり得る。どんなバンドがオープニングでも、俺たちはステージに出て行っていい仕事をする準備ができているよ。エネルギッシュなオープニング・バンドに吹き飛ばされることを恐れてはいないんだ。やるべきことをやるだけだからね。どんな人たちにも居場所はあるよ。ともあれ、今回の彼等は曲もいいし、いいヴァイブスを持っているから、それを求めて起用したんだ。

-最近、特に注目しているアーティストはいらっしゃいますか? ジャンルや国籍は問いません。

それがさ、自分のことで忙しすぎるから、音楽を聴くときはクラシックやインド音楽、それから聴いていて気持ち良くなれる曲ばかりなんだ。Ella Fitzgerald、Dean Martin、Frank Sinatra......そういうのを聴いて、頭をクリーンにする感じだね。あぁ、でもSLEEP TOKENの新作(『Even In Arcadia』)は聴いたよ。あれはクールだったね。新鮮だった。あまり詳しくないけどね。世の中には山程素晴らしいバンドがいるけど、俺は俺で自分の音楽を作るのに忙しいから、何がヒップで何がそうじゃないかとか、考えるのが苦手なんだ。"これが新しい〇〇です"と言われても"そうなんだ?"という感じでさ(笑)。

-そのあなた自身の音楽ですが、あなたのギター・プレイは非常に独創的で、一聴して分かる個性があります。こうしたオリジナリティの源泉はなんでしょうか?

そんなことを言ってくれるなんてありがとう(照笑)! 正直言って自分でも分からないんだけど......もしかしたら他の人をコピーするのが苦手なのかもしれないな。10代の頃はYngwie MalmsteenやSteve Vai、Joe Satrianiなんかを聴いていたけど、自分には彼等の曲は弾けないと気付いたんだ。というか、弾こうって興味もなかった。自分でクールだと思える自分のバージョンを作ることへの興味のほうが強かったんだ。俺のやり方はことごとく"間違って"いる。左利きだけどギターは右利きだしね。自分ではこれが正しくてみんなが間違っていると思っているけど(笑)。あとはスウェーデンに住んでいるから、というのもあるかもしれない。この国はデカいけど人が住んでいないから(笑)。

-(笑)

人がいないから、楽器と一対一で向き合っていられる時間が長いんだ。だから独自性が生まれてくる。"自分だけのヒゲを生やす"ということだね(※口ヒゲに触る)。女性だってヒゲを生やしたっていいんだよ(笑)? 要は自分のパーソナリティを持つということなんだ。

-自分のことに集中できる分、自己研鑽できるんですね。

と言っても意図的に"俺は人と違うことをやる!"、"俺は超スペシャルな存在になる!"なんて思って音楽を始めたわけではないんだ。ただ曲を書いただけ、そういうことだよ。プレイにはパーソナリティが表れていてほしいものだから、少なくともコピーキャットになりたくないのは確かだった。世の中にはコピーキャットがあまりにも多すぎるからね。他人みたいなプレイをすることを一生をかけて覚えるなんてなんの意味もない。"いったいなんのために?"と思うよ(笑)。

-全くですね。ところでアルバムの話になりますが、最新作『Everyone Gets Bloody』のリリースから約1年が経過しました。改めて振り返って、この作品をどのように評価していますか?

そうだなぁ、ハッピーだよ。自分が何か作るときに一番大事にしているのは、最高の自分が出せているかどうかなんだ。自分でプロデュースしているからね。レコーディングも自分でやっている。人生のその時点で最高の自分を出せていると思えるまでは、人に出したくないんだ。"これが今の自分を反映している"と思えるまではね。そういう意味でハッピーだよ。ライヴでも3、4曲、時には5曲くらいプレイしていて、上手くいっている。8弦ギターを使っているからテクスチャも新しい。初めて全面的にHelix®を使った作品でもある。真空管アンプを使っているから、以前より少しモダンなサウンドになったかもしれないな。ハッピーじゃなかったらリリースしないよ(※笑顔で)。
とはいえ、いつも誰か必ず言ってくるけどね。"Mattias、1stアルバムが一番良かった。全部のアルバムを1stと同じように作ってくれ"とか、"3作目が一番良かった"、"最新作が一番良かった"とか。でも自分にとってベストなものを作らないといけない。全員を満足させることはできないし、文句を言ってくるやつらは絶対にいるからね。でも俺はとてもハッピーだよ。