INTERVIEW
ライヴハウス"SHIBUYA FOWS"オープン記念 座談会
2025.01.17UPDATE
2025年01月号掲載
2025年春、渋谷のど真ん中に"やりすぎ"なライヴハウス"SHIBUYA FOWS"がオープン! 東京 渋谷という日本の文化の発信地に位置し、"様々なカルチャーが混ざり合い、人と人とがつながる場所"をコンセプトとした同会場。200人キャパながら、ステージ背面に大型LEDヴィジョンを設置、最新音響設備の導入、多用性のあるカフェ&イベント・スペースの併設等、"やりすぎ!"と言われるこだわりを詰め込んだこのライヴハウスについて、代表の湯浅晃平、統括の鈴木慎哉、PAの石川嘉久に話を訊く。
湯浅 晃平(SHIBUYA FOWS 代表)
鈴木 慎哉(SHIBUYA FOWS 統括)
石川 嘉久(SHIBUYA FOWS PA)
Interviewer:フジジュン
Photographer:濱谷幸江
-渋谷のど真ん中に誕生するライヴハウス"SHIBUYA FOWS"。2025年春のオープンに向けて、現在工事が着々と進行していますが、具体的な日程はすでに決定しているのですか?
湯浅:1月18日にプレオープン、2月1日がグランド・オープンの予定で進んでいるんですけど、ここまでが結構前途多難で......。建物の契約をしたのが2023年12月、本当は2024年9月にオープン予定だったんですけど、いろいろと困難がありまして。本当は2月も間に合わないんじゃないか? という感じだったんですが、なんとか間に合わせてくれということで年末年始も返上して、工事を進めている状況です。
石川:工事中の現場に何度も足を運んで進行状況を見ているんですけど、全体像はまだ全然見えてないです(笑)。今ステージが形になって、ここから壁や床に色を塗る段階なんですけど、どんな色になるのかも聞いていなくて。基本的には黒だろうなと思いつつ、絶対何か仕掛けがあるだろうなと。
湯浅:......めちゃくちゃぶっちゃけ言っていいですか? "あれ? 色どうするんだろう!?"って今気が付きました。
-えっ! まだ店内の色も考えていなかったんですか(笑)!?
湯浅:全員、黒じゃないか? って進んではいるんですけど、ちゃんと決めてなかったですね(笑)。なんか絵でも描きます?
-わはは。B1のライヴハウスだけでなく、1階にはカフェ&イベント・スペース"SHIBUYA XXI"を併設。(SHIBUYA)FOWSには最新型の映像や音響設備を導入して、(SHIBUYA)XXIには路面店の利点を活かしたサイネージ広告やLEDパネルを導入されるんですよね?
湯浅:そうです。FOWSのステージには大型LEDヴィジョンを配備したり、音響設備も周囲から"やりすぎ!"と言われるくらい最新機材を詰め込んだので、スペックとしては十分だと思います。さらに象徴的なオブジェを作っていたり、いろいろと設備を加えていて。最初からフル装備でスタートしたいというつもりでいます。
-そもそも、そういった既存の会場とは違った、最新型のライヴハウスを作ろうというアイディアの種はどこから生まれたのでしょうか?
湯浅:ライヴハウスを作りたいというのは2年くらい前から考えていました。というのも、僕自身がバンドマンで、音楽をやるために東京に来たというのがあって。そこからいろいろな経緯があって会社を作って、音楽と並行して活動しているのですが、アーティストには音楽を生業にして食べていきたいという人もいれば、長く音楽と共に生きていきたいという人もいると思うので、僕はそのどちらも応援したい、両方ともサポートしていける仕組みを作りたいと考えているんです。
そういう人たちにとって、ライヴハウスって遊び場は絶対的に必要だと思いますし、個人的な見解ですけど、僕も神戸でバンド活動をしていたとき、ライヴハウスがアーティストを育ててくれる環境や文化があったし、それがすごくありがたかったと感じていて。東京にもアーティストが育っていけるような環境、場所を作りたいという想いからスタートした企画でした。
-アーティストが自分たちのホーム、大切な場所だと思ってくれて、"ここで育ちました!"と胸を張って言えるようなライヴハウスが作りたかったと。鈴木さんはもともと下北沢RéGの初代店長をやられてましたが、下北沢は昔からそんな文化があるイメージです。
鈴木:そうですね。先輩方が作ってきてくれたその文化は、今も続いていると思います。
湯浅:下北沢RéGは僕も10年くらい前、出演者としてお世話になっていたライヴハウスだったんですが、そのときは鈴木さんのことは存じ上げなくて、齋藤(孝/ex-下北沢RéGブッキング・マネージャー/現赤坂 navey floor店長)さんに面倒を見ていただいていて。渋谷に物件を借りるタイミングで、店長を探さなきゃいけないという話になって、齋藤さんからご紹介いただいたのが鈴木さんだったんです。
-新しく作るライヴハウスの構想を聞いて、鈴木さんはどう思われました?
鈴木:ビックリしました。理念も含めて、"こういったものを作りたいんだ"という構想を聞いてすごくビックリしましたし、まさに"やりすぎだな!"と(笑)。ただ、すごく面白いなと思ったし、その理念にすごく共感できたし、自分のやりたいこともたくさん詰まっていたので、"ぜひやりたいです!"とお返事させていただきました。社長が言っていた、アーティストを育てていける場所作りというのは、まさに僕のやりたかったことだったし、それをやれる環境に身を置けるというのが素直に嬉しいなと思いましたね。
-石川さんはどういった経緯でPAを担当されることになったんですか?
石川:鈴木さんから"ライヴハウスやりたいんだけど、興味ある?"とお声掛けいただいて、"じゃあ、やりましょうか"という話になったんですが、ゼロベースから作ってるライヴハウスってほとんどないんです。普通は居抜きだったり、使い古したスピーカーやシステムがあったり、ある程度機材も揃ってたりするもんなんですが、全くもってゼロからというところにワクワクしまして(笑)。
途中からの参加で、半分くらいは導入する機材も決まってたんですけど、"これじゃできないんじゃない?"とお話しして、どのレベルでどのジャンルで使用するのか? というのも見えてなかったんですが、どうせならロックもジャズもアイドルもオールジャンルに対応できる機材を揃えたいと思って、書類を揃えて。社長に相談したらすごくビックリされたんですけど、結果的には"これで行きましょう!"と言ってくれて、かなりいい機材を揃えることができました。
湯浅:機材にかけた具体的な金額は伏せますけど、当初僕がライヴハウス全体にかけようと思った予算が全部機材で消えました(笑)。
-そんななかでも、石川さんが一番こだわったところはどこですか?
石川:やはりオールジャンルに対応できるというところですね。ロックにもアイドルにも偏らない、間口の広いライヴハウスにしたいと臨んでいて。そこは幅広いブッキングであったり、ライヴ制作を務めていただく鈴木さんの力もすごく重要になってくると思いますし。当然ながら、音響だけでライヴは成立しないですし、音響と照明、もちろん出演するアーティストが揃ってのライヴハウスなので。早くスタートしたいですね。
-資料には"オンラインとオフライン、そして世界を繋ぐエンタメスポット"と、壮大なコンセプトも書かれていますが。湯浅さんの中ではライヴハウスをやりたいと考えたとき、そういったテーマやヴィジョンも見えていたんですか?
湯浅:物件を契約したタイミングでは正直、おぼろげでした(笑)。もともとは地下のライヴハウスのみの予定だったんですけど、契約のときにたまたま1階が空いていて。オーナーさんに"湯浅君、1階も借りない?"と言われて、何かのご縁なのかな? と思って会社のメンバーに話したら"行っちゃおうぜ!"みたいな感じで、何をするかも決まらないまま1階も契約したんです。"契約したけど、どうする......!?"ってところから話し合って、今はどう使うかがかなり明確になってきてますが、完全に最初は勢いでした。
-そうだったんですね! SHIBUYA FOWSには"渋谷という日本の文化の発信地で、様々なカルチャーが混じり合い、人と人が繋がる場所に"という目的もあるそうですが、"様々なカルチャー"という部分には、音楽に限らないクリエイターが繋がれる場所というのをXXIが担う、という意味もあるのかな? と思いました。
湯浅:はい。今はそう考えてますし、そういう場所になってくれたらいいなと思います。
-契約から現在まで、すごく大変な1年だったとは思いますが、そうやってアイディアを広げて、具体化していくって意味では必要な時間だったのかもしれないですね。
湯浅:そうですね。ライヴハウスもゼロベースなので、いろいろできるわけで。鈴木さんも一緒にやるとなったとき、引き出しを全部開けてアイディアを出してくださって。僕も全部やりたくなるタイプなので、"やりましょう!"って大風呂敷広げた後に、"全部は無理じゃね?"とちょっと整理もしながら(笑)。楽しみ半分、不安10倍みたいな感じで開店準備を進めています。
-資料の鈴木さんのコメントには"社長が"妥協"をどこかに置き忘れたのか、狂ったように積み増されていく費用にいささか引きつつも"とありますが、鈴木さんが拍車を掛けてるところもあるんですね(笑)。
鈴木:そうですね(笑)。LEDヴィジョンで映像を使ってとか、演出の幅がかなり広がるので、すごく面白いなと思いますし。
湯浅:僕もLEDヴィジョンはご時世的にもあったほうがいいだろうと思ったんですけど、設備のところは正直、そんなにこだわりがなくて(笑)。音響設備に関しても、お話ししたように石川さんに設定していただいたりしながら進めていったりして。あくまでも僕的に大事にしたいのは、ライヴハウスがコミュニティの場であることだったり、人と人を繋ぐハブであることだったり。
キャパ200人となると、上を目指すにはまだまだ先があるわけで、FOWSはアーティストが羽ばたいていく上での発射台的な場所になるので、鈴木さんと最初にお会いしたときに話したことなんですが、"点にしかならないイベントはやらないでほしい。空きを埋めないと売上が立たないという理由でやるイベントだったら、潔く諦めてほしい"ということで。
-売上を立てるだけの無意味なイベントはやる必要がないと。
湯浅:それよりも、"このイベントを組んで、次はこうして、ここを目指そう"ということを箱側が提案してあげられるのが大事だし、この箱以外の場所、例えば大きな会場でイベントをやるとか、アーティストに対して線を描けるようなものを作っていこうと話してるんです。だからFOWSという場所はあくまでもその機能の1つだと思っていて。
自分たちの箱だけで完結させよう、できる限り多く出てもらおうというのはライヴハウスのエゴだと思うので、ライヴハウスを経営しながら、イベント制作をやったり、オウンド・メディアを展開したり、アパレル展開をしたり。いろんな形でアーティストを支援できる、点と点を繋いで線を描けるような仕組みを自分たちで持つというのが、僕のやりたいことなんです。