MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

ライヴハウス"SHIBUYA FOWS"オープン記念 座談会

2025.01.17UPDATE

2025年01月号掲載

ライヴハウス"SHIBUYA FOWS"オープン記念 座談会

湯浅 晃平(SHIBUYA FOWS 代表)
鈴木 慎哉(SHIBUYA FOWS 統括)
石川 嘉久(SHIBUYA FOWS PA)
Interviewer:フジジュン
Photographer:濱谷幸江


"FOWSというホームがあったから売れました"というバンドを生み出したいですね(湯浅)

-湯浅さんはバンドマンでもあるんで、"こういうライヴハウスがあればいいのに"や"こういう仕組みがあればアーティストを支援できるだろう"と、バンドマン視点での想像ができるし、鈴木さんはライヴハウス側の視点で"こういうやり方だったら上手くいくんじゃないか"って想像ができるし。アーティストとライヴハウスの双方で、夢や物語を描いていける場所になりそうですね。

湯浅:まさにそれが理想というか、目指すところだと思います。

-そこで物心ついたときからスマホがある若い世代が最新機材を使いこなして、想像もしなかった表現や遊び方をしてくれるというのも想像できて、すごく楽しみです。


湯浅:まさにおっしゃる通りで、僕は芸能事務所もやってるので、事務所側の視点としてはアーティストやクリエイターはそうあるべきだと思っていて。アーティスト・エコノミー(※自分の表現で収益を得られる経済圏)と言われる形を僕は理想としているので、彼等の遊び場を提供してあげるというのが今の時代、事務所側がやるべきことだと考えています。事務所が上の立場でアーティストを管理して、みたいな時代はもう古いと思うので。
アーティストがどう好きに羽ばたけるか? を僕らは一生懸命考えて、"こんな遊び場があったら、すげぇ面白そうな顔して遊ぶんじゃない?"という場所を作ってあげることが大事なと。もちろんライヴハウスもその1つですし、どう使ってくれるか僕も楽しみです。

-アーティストの言いなりになるとか、なんでもやらせてやるではなくて、ライヴハウスや事務所が、アーティストの本当にやりたいことを全力でサポートしてあげる、そのための環境を作ってあげる存在でいてくれたら、すごく心強いと思います。

湯浅:僕もバンドマンですし、鈴木さんもライヴハウスの店長をずっとやっていて、よく理解してるからこそこういう言い方をするんですけど、バンドマンってアホなので(笑)。

-僕も愛情込めて言いますけど、バカだし調子に乗りますよね(笑)?

湯浅:そうなんです(笑)。だから"そこ! 調子に乗らない!"って、ダメなほうに行かないように、僕らが時々監視する必要もあると思ってます。やっぱり自分もそういう経験があったんで、そこはちゃんと大人が見ている必要があって。そういうところも長くバンドを見守ってきた、鈴木さんにやっていただければと思っています。

鈴木:いやいや(笑)。でも新しいライヴハウスだからこそ、ゼロから育っていくバンドを見守れるのもすごく楽しみですし、どこのライヴハウスの色も付いていないバンドに、FOWSをホームにしてもらえたらすごく嬉しいなと思います。

-設備の話に戻りますが、"オンラインとオフラインを繋ぐ"ってところでは、例えばライヴ配信だったり、FOWSをこう使っていきたいというイメージはあるんですか?


湯浅:まず大前提として、採算のことを考えてない(笑)。鬼のような家賃ですし、現時点で当初想定していた予算の10倍かかってるので、本当にやりすぎだなって思うし、正直回収は難しいと思っています。ですので、生のライヴ以外にも配信で使っていただいたりとか、それも1つあるんですけど、僕はもっとマクロの視点というか、全体で見てて。
うちの会社は飲食店とか、コール・センターや建築系の会社とか、アパレルやシェアハウスを経営してたり、様々な分野を手掛けていて、そこにバンドマンも結構いるんですよ。彼等も売れるまでは働かなきゃいけないし、家賃も払わなきゃいけないじゃないですか? でも、そのやらなきゃいけないことと、自分のやりたいことってリンクしていない人がほとんどだと思うんです。そこでうちの会社は、彼等の労働力や家賃を貰う代わりに、福利厚生としてヴォイス・トレーニングを無料にしたり、こうやってライヴハウスを作ったりして、彼等のやりたいことを後押しできるような環境を作ってるんです。
なので、会社全体としてはもちろん利益が出ていて、それをエンタメにぶっ込むという構造でやっていて。そこに配信だとか、アパレルといった場所も関係なく、価値が高まれば売上が出るという飛び道具的なところで、力を付けていけたらと考えています。

-なるほど。そういう意味でも、人やカルチャーの集う街 渋谷に拠点を置いて、人と人が繋がり、カルチャーが混じりってというのは、すごい効果がありそうですね。

湯浅:そこで1階の路面を契約するっていうのもいいなと思って。あれだけ目立つ路面で、ガラス張りで天井高もある場所に効果的な広告が出せると考えれば、宣伝広告費としても高くはないんじゃないか? と思ったんです。

鈴木:とにかく立地がすごくて、あれだけ人通りの多い場所に位置しているので、普段はライヴハウスに行くことのなかった新規のお客さんが入ってくるってことも、アーティストやみんなが期待していることですね。箱側がそこに繋がる努力をしてアーティストに還元してあげられれば、すごくいいことだと思います。

石川:まさかこんなところにライヴハウスが!? って、想像すらしないですからね。"宇田川交番集合"ですぐ来れちゃいますから(笑)。そこで自由なことができるっていうのが面白いし、嬉しいですよね。あのスペースが渋谷のど真ん中にあるってだけで意味があるし、あの物件に目を付けた社長はすごいです。

-路面広告に限らず、オウンド・メディアの立ち上げも考えてたり、ライヴハウス側が全面的にバックアップしてくれるのはアーティストにとってすごく心強いと思います。自身のライヴハウスでメディアを持つというオウンド・メディアという発想も、湯浅さんがバンドマン視点で考えて生まれたものだったんですか?


湯浅:基本的には実体験から生まれるアイディアが多いです。あと、僕は経営者としていろいろやってはいるものの、不器用でセルフプロモーションみたいなことがすごく苦手で。
自分のバンドのプロモーションとなると、いい音楽を届けていいライヴをしたいということに集中したい気持ちになってしまうので、同じようなアーティストの代わりになって、今の時代ならSNSでも広くリーチできるツールもあるし、僕等が上手くプッシュしてあげられれば、本人たちもいい音楽を作ることに集中できると考えて。そういった仕組みがあれば、自分もぜひ使いたかったというのはすごく思います。

鈴木:そこで今までのライヴハウスにはできなかったところまで、FOWSだったら膨らませてあげることができると思っています。

-さらに渋谷という立地もあって、ライヴハウス初心者や外国人観光客が、情報がある上に入りやすいという環境作りもできます。

湯浅:僕も去年、バンド活動を再開して、久々にライヴをやったら、外国人の方がふらっと遊びに来てくれたりして。昔はあまりなかったことなんですけど、日本の文化や音楽に興味があって、ライヴハウスに行ってみたいという外国人観光客の方は多いと思うんです。 そういった方のために、もっと入りやすくて分かりやすいシステムを作ろうと考えていて、QRコードを読み込めばチケットが買えるとか、自分の言語に置き換えられるという仕組みを作っていて。ライヴハウスって入口が分かりにくかったり、中に入っても暗くて迷路になってるようなお店もありますけど、もっと分かりやすくしたいなと思っているんです。

-ライヴハウスをDXして、非言語型システムの導入や視覚的な導線を作るってアイディアには驚きましたし、ライヴハウスの在り方を変えるんじゃないか? とさえ思いました。

湯浅:ライヴハウス業界では新参者なので、新しいことをやることで周りをいい意味で感化できたり、"俺たちもやってみよう"みたいな気持ちになる先駆けになれればいいなという気持ちはありますね。"こんなことやってみて良かったんで、どうですか?"ってご提案させていただいたり、ライヴハウスの先輩たちから学びながら、新しいことができればいいなと思っています。

-最新機材が揃っていて、他の会場ではできないことができるという意味では、これからの若いバンドもですけど、200キャパでは狭すぎる人気バンドとかも新しい挑戦の場として利用してくれるかもしれないですね。

湯浅:せっかくLEDヴィジョンがあるからとか、200キャパだからチャレンジングなことやろうぜ、というふうに使ってもらえても面白いなと考えています。例えば、自分がFOWSでライヴをやるとなったときに、LEDヴィジョンをどう使おうか? とイメージが湧いていないアーティストもいると思うんです。そこで人気アーティストと一緒にやっているプロの映像クリエイターの方等と、上手くLEDを使った演出とかも考えていけたらいいなと思うし、そのことで選択肢も広がるかなと。

鈴木:自分もおじさんなので、LEDヴィジョンの効果的な使い方というのがさっぱり分かってないですけど(笑)、"こういうことをやってみたい"とアイディアを溜め込んでるアーティストもたくさんいると思うので、僕等は実際に使ってるのを観て"へぇ!"と思いながら、"こんな使い方があるんだよ"って別のバンドに知った顔して教えて(笑)。そこからどんどん積み上げていけば、1~2年後には今は頭の中にもないようなものが作られていくんじゃないか? と思って、非常に楽しみです。

石川:"これはできない"って言いたくないよね? "あ、できますよ"って言いたい(笑)。昔はそもそもLEDヴィジョンというものがなかったですからね。映像を使うとなったら、スクリーンに投影してましたから。それを現在のクリエイターさんがどう使ってくれるか? というところで、そこに僕等音響も応えていけたら最高ですね。僕等、昭和の人間の凝り固まった頭を柔らかくしてもらって、もっと感覚を若くしたいです(笑)。
最新の技術もどんどん進化してるんですけどなかなか手が出ないので、FOWSで新しい感覚に触れることで、技術もどんどん磨いていきたいですし。新しい使い方が無限にできると思うのでたくさん学ばせていただいて、今までの僕のキャリアも含めて次の世代に教えつつ、それを継承してバージョンアップしていってもらえたらと思っています。

-そして改めてですが、"SHIBUYA FOWS"の名前の由来も教えてください。

湯浅:タロット・カードの"FOUR OF WANDS"から、頭文字を取って"FOWS"にしました。このカードには"始まりの場所"や"交流の場所"という意味、場合によっては1つのゴールになったり、人が行き交う場所という意味があって。これは余談なんですが、うちの会社も最初は4人=FOURから始まっていたりして、そこにも親和性を感じて、この言葉を使いました。
あと、"FOUR OF WANDS"の"WANDS"は"こん棒"を表していて、火の象徴で。火は、周りに人が集まってコミュニティの発祥の地ともされているので、そういう意味を込めて、"FOWS"という名前にしました。

-では最後に、SHIBUYA FOWSで叶えたい夢を教えてください。

湯浅:僕はやっぱり、"FOWSというホームがあったから売れました"というバンドを生み出したいですね。それが最初に"ライヴハウスをやりたい"と思った動機でもあるので、そういうバンドを輩出できたら本望です。

鈴木:僕も社長と一緒なんですけど、バンドのマネジメント部署もしっかり作ってバンドを育てていきたいし、それらのバンドを軸としたフェスの制作だったり、ライヴハウスを飛び出したところでもアーティストの活躍の場を作って。"FOWSに出てたらどんどん上がっていった"というバンドがたくさん出てくるような発信の場にしたいです。


-そして、大きく羽ばたいていったバンドがまたFOWSに戻ってきてくれたり。

鈴木:日本武道館を成功させた翌日、FOWSで裏ファイナルとかやれたら最高ですね(笑)。


VENUE INFORMATION
SHIBUYA FOWS

〒150-0042
東京都渋谷区宇田川町12-7 渋谷エメラルドビル B1F
公式サイトはこちら