MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

DAFTSUN

2022.09.05UPDATE

2022年09月号掲載

DAFTSUN

Member:AINE(Vo/Scream) YDI(Gt/MC) DJGASSS(Vo/Mani)

Interviewer:宮﨑 大樹

音楽的にはATARI TEENAGE RIOTやTHE PRODIGY、DAFT PUNK、漫画や映像作品で言えば"AKIRA"や"攻殻機動隊"。そのどれかひとつでもピンと来るものがあればぜひチェックしてほしいバンドがいる。今年始動した"ネオトーキョー系バンド"DAFTSUNだ。アンダーグラウンド・カルチャーに造詣が深いDJGASSS、アイドルほかマルチに活動するAINE、ギタリストのYDIと、異なるバックボーンを持つ3人。彼らが集って生まれるカオスは、これから何かが起きるワクワクした予感を感じさせる。バンドのルーツや楽曲について3人に訊いた。


決まりきったものに対して挑戦的なことをしていく。ゲームでもアニメでも音楽でもいいんですけど、そういうカルチャーに対してすごく興味がありますね


-激ロック初登場ですので、まずはバンド結成の経緯から聞かせてください。

GASSS:バンドをやったりしていた流れの中で、アイドルのプロデュースをすることになって。で、プロデュースしているアイドルにAINEがいたんですね。そのアイドルをバンド・セットでやるときにYDI君とは繋がっていて。そのなかで、出身とか自分のルーツがバラバラの人たちが、シームレスにジャンルレスにものを作ったら面白いんじゃないのかなと。自分たちの時代では"垣根がない"とか言いながらもずっと垣根があったんですよね。それが本当にないような状態で、カオスな、ごちゃまぜ感のあるようなものができたらなというのが自分の中でぼんやりあって。そういうことで、僕から声を掛けた形ですね。

-メンバーのルーツがバラバラだということで、それぞれのルーツを聞かせていただけますか?

AINE:私は、中学生のときに合唱部に入っていて、高校生になってからは軽音部に入ってヴォーカルをやっていました。そのあとは上京して専門学校に行ったんですけど、部活とかサークルもなかったので、どこかで趣味で歌えるところはないかな? ということで、オープン・マイクとかに行って歌ったりして。そのなかでGASSSさんに"アイドルをやってみない?"と声を掛けてもらったんです。面白そうだからやってみたら楽しくなっちゃって、そのままずっとアイドルを何年もやっていました。で、まだDAFTSUNという名前が付く前に、"こんな感じで面白いことやりたくて"みたいな話をされて、"面白そうじゃん! やったことないからやる!"みたいな感じで。"面白そう"の延長ですね。

-音楽はどんなものを聴いていたんですか?

AINE:この音楽が好きでこれをやりたくて、というのはあんまりなくて。強いて言えば、インド映画が好きなので、ボリウッド・ミュージックとかは趣味で聴きます。ただ、そういうのは自分でやろうというわけではなくて。聴くぶんには音楽はなんでも楽しいですね。

-YDIさんは?

YDI:僕は小中学生のときに外で遊ばない子供というか、ずっと漫画とアニメとプラモデルとかをやっていて。そのときに触れた音楽は、アニメの主題歌か映画の"ゴジラ"の曲とか、そういうものばっかりだったんです。最初に買ったCDは「ポケモン言えるかな?」(イマクニ?)か"Gガンダム(機動武闘伝Gガンダム)"の主題歌か(笑)。で、そのまま中学生になって、家に帰ってテレビを見ていたら、モーニング娘。が出てきて、僕はそのときなっち(安倍なつみ)が史上最強にかわいいと思って(笑)。だからモーニング娘。が出てるテレビは全部観ていたんですよ。それで歌番組を観ていたら、モーニング娘。のあとにLUNA SEAが出て、「TRUE BLUE」と「gravity」の2曲をバーっとやっていて。"これだ!"、"俺は今まで何を!"と(笑)。それがたしか中学3年生のときだったんですけど、受験シーズンなのに、夏休みの最終日にギターを買ったのが音楽を始めるきっかけになりました。

-はい。

YDI:それからはずっとLUNA SEAを聴いていて。日本の音楽だと、ちょうどヴィジュアル系が衰退してパンクが出てきたころは、どっちも聴いていました。そのあとに何か新しい曲がないかなと思っていたときに、ちょうどLINKIN PARKとHOOBASTANKがデビューして。僕は神奈川県なんですけど、テレビ神奈川で流れていて"外タレなのにサビがあるぞ!"と感じたんです。それで、僕はLUNA SEAの独特でダークな世界観と、ヘヴィなロックを合体させて、メロがちゃんとしてるやつをやりたいと思って今までやってきました。それから日本語のスクリーモみたいなバンドをやって、そのバンドが終わったときに、自分の音楽を極めるにはどうしたらいいかなと思って。僕はずっと"ガンダム(ガンダム)"とか"ゴジラ"とかが好きなんですけど、音楽のジャンルというよりは、お話で1曲作りたくなったんです。なので、スケールがデカいヘヴィ・ロックが作りたいなと思って、ここにきた感じですかね。

-では、GASSSさんは?

GASSS:小さいころは、家庭でポップスのミュージックが流れていない状態で育ったんですよ。家にあったレコードが、テクノとかジャズとかばかりだったんです。その延長なのか、自分が音楽を意識して聴くようになって最初に買ったレコードは東京スカパラダイスオーケストラの1st(『スカパラ登場』)で。そのあとに買い足した音楽も全部インストものなんですよね。別にそれを意識していたわけではないんですけど、単純に好きだと思うのが、サントラとかそういうものが多かったんです。歌が入っているバンド・サウンドというか、そういう音楽を意識し始めたのはたぶん中学生に入ってからですね。先輩とかがBOØWYとか尾崎 豊を僕に押しつけてきて(笑)、別に嫌いじゃなかったんですけど、自分の中でしっくりこないなと思っていたときに、帰国子女の友達がNOFXとかRANCIDとかのいわゆる西海岸パンクを聴かせてくれて。そこからそれにどっぷりハマっちゃっていましたね。それと並行してテクノをルーツにしたものがずっと好きでした。その2軸だった気がしますね。

-はい。

GASSS:ただ、音楽に関しては幅広く、いいものはどのジャンルでもいいという感じで聴いていたのかな。でも、あんまり整いすぎてるものは好きじゃないかもしれないです。テクノが好きと言うわりには、生々しさっていうんですかね? 制作してる人の意図が感じられるようなテクノが好きな気がします。で、自分がちょっと大人になったときにDAFTSUNの誕生に関わってくるような、音楽のジャンルのボーダーがすごく崩れた時期があって。インダストリアルみたいなジャンルがすごく流行ってから、ATARI(ATARI TEENAGE RIOT)とかTHE PRODIGYとか"スポーン"のサントラで流れるデジタル・ロックとか、そういうのを聴いていました。90年代の音楽に行き詰まりがあったときに、ブレイク・ビーツとか、もう1段階音楽の未来があるのかなというワクワク感が2000年代くらいにあったんですけど、意外とそこから一歩進まなかったなと思っていて。自分のことをよく"90年代の亡霊"と言っているんですけど(笑)、90年代に成仏できなかった音楽を今カッコいい形で出せたらいいんじゃないかなぁということで、DAFTSUNもそういう方向性になってるのかなという気がします。

-GASSSさんとYDIさんは、音楽以外のサブカルチャーからの影響も強そうですよね。そこが音楽を作るうえでもポイントになっていそうで。

GASSS:音楽と並行して他のカルチャーも楽しんでいた部分もあったので。"スポーン"のサントラにも少し触れましたけど、あの当時って日本のアニメに影響を受けたアメリカのアニメとか、そういうクロスオーバーとかがあって。アメリカが当時NIRVANAとかスマパン(THE SMASHING PUMPKINS)とかグランジが流行っていて、その流れかアンチ・メロディに流れていっていたんです。だけど日本のアニメーションと組むことで、デジタル・ロックやメロディが日本っぽくなった。そういうもののクロスオーバー感とか、GORILLAZみたいにアニメーションを作って擬似のロック・バンドを作ってみるとか、メイン・カルチャーでテンプレートっぽくなっていたものに対して、少し穴を開けてやろうという感じがサブカルチャーというか、あの時代はそういう気持ちが蔓延していた感じがして。"AKIRA"とかも、今までの漫画の手法と違った手法で大友(克洋)さんがアプローチしていましたし、"攻殻機動隊"とかもそうですね。それがすごく面白かったんです。今で言うアニメとかゲームとか、まだあんまり売れてない音楽を総じて言うサブカルチャーではなくて、決まりきったものに対して挑戦的なことをしていく。ゲームでもアニメでも音楽でもいいんですけど、そういうカルチャーに対してすごく興味がありますね。余談ですけど、自分はサブカルを題材にしたラジオ番組を持つことになったんです。ある種、サブカルの亡霊でもあるのかなと(笑)。

-カウンター・カルチャーに惹かれていたと。

GASSS:そうですね。

-DAFTSUNが動き出したときに、GASSSさんはバンドのことを、"レイヴミュージックやTHE MAD CAPSULE MARKETSの初期を感じるネオトーキョー系バンド"と表現していますが、こういった方向性に舵を切った理由は?

GASSS:今ってカウンター・カルチャーを出すほどのメインストリーム、大きな流れがなくなっちゃっていて。自分とか、当時みんなが熱狂していたあの感じ、"そこに未来があるんじゃないか"と思っていたその先があんまりなかったんです。"AKIRA"の"ネオトーキョー"のような、僕らのファンタジーの地続きにあるんじゃないかと思っていたものが、なかったんですよね。下手すると海外に持っていかれちゃったというのがあるんです。それがすごく悔しくて。"ジャパニメーション"みたいなことを中国、韓国、アメリカにやられて、日本で純粋に生まれたものが全然育っていない。それってすごく寂しいし、残念だなという表現が近いのかな。

-はい。

GASSS:そこに対してはhideさんとかが本当はできたんじゃないかと思うんですよね。ヴィジュアル系出身だったのにすごくインダストリアルだったり、デジタル・ロックだったり、パンクだったりして、どんどん垣根を壊して進んでいって、ジャパニーズ・カルチャーを持って海外に挑んでいたフラッグのような方だった。だけど亡くなってしまったし、ちょうどDAFTSUNを始めるときに THE PRODIGYのKeith Flint(Vo)が亡くなって、"この人がやるんじゃないか"と思っていた二大巨頭が亡くなったのもあって、自分がその先をやってみたいなと。だから、選択肢がいっぱいある中で、あえてDAFTSUNではそこに絞っていったところはあるかもしれないです。