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INTERVIEW

ARCH ENEMY

2022.08.10UPDATE

2022年08月号掲載

ARCH ENEMY

Member:Michael Amott(Gt)

Interviewer:米沢 彰 Interview interpreted and translated by 染谷和美

2014年のヴォーカリスト交代劇から数えて3枚目となるアルバムがついに完成した。メンバーも安定し、バンドとしてのパフォーマンスはキャリアの頂点へ差し掛かったといって差し支えない領域へと達したARCH ENEMYのリーダー、Michael Amottにバンドの今と未来を語ってもらったインタビュー。


レコーディングしたとき、自分も一緒にいて聴いていたんだけど、あのハイトーンを聴いたときに思わずガッツポーズをしたよ(笑)


『Deceivers』の完成おめでとうございます。アルバムが完成した現在の率直な感想を教えてください。

すごくいい感じだよ。プロジェクトが完成したことで安堵感があるし、自分たちにとっては長く抱えていたものなので、それがようやくファンに届けられてホッとしているよ。

-ARCH ENEMYとしては、セルフ・カバー・アルバムとしてリリースされた『The Root Of All Evil』(2009年リリース)をカウントすれば、これまでスタジオ・アルバムのリリースの間が約5年も空いたことはなかったと思いますが、これはパンデミックや戦争などの社会情勢の影響でしょうか? それともBLACK EARTHの活動もあったからということでしょうか?

『Will To Power』(2017年リリースの10thアルバム)のツアーが2017年の9月から2019年の12月まで続いて、それがいったん終わって2020年はツアーを休んでオフにして、曲作り、レコーディングを始めようかってことになっていたんだけど、そうこうするうちにパンデミックになってしまって。プロセスがなかなか進みづらくなったんだけど、とは言っても2021年の4月にはアルバムがミックスまで完成していたんだ。ただ、今じゃないよねっていうことでリリースが今年になったんだよ。

-バンドの規模が大きくなったことで、ツアーの期間が長くなったのも要因ということですね。

その通りだよ。今はツアー・サイクルが長くなっているからね。結成当初、90年代にツアーを始めたころは、日本で2週間のツアーをやって、そのあと地元に帰ってから"次どうしようか"って言って、それからヨーロッパを回って......というように、サイクルが短かったんだ。機会も少なかったし。今はバンドも成長してワールドワイドに活動しているし、中国とか、それまで行ったことなかった国にもツアーで行くようになったしね。中国は前作のツアーでは2回行っているんだけど、同じところに2、3回行くこともあるし"もう1回!"ってずっとやっていたら終わりがないよね(笑)。基本的にはバンドが大きくなったからだけど、今はそういうツアーを楽しんでいるんだ。そのせいで、レコーディングのペースは維持するのが難しくなっているけどね。

-2021年の4月には完成していたということですが、アルバムのリリースに先駆けて現時点(※取材は7月下旬)ですでに5曲が公開されており、ここまで事前に出してくるのはARCH ENEMYとしてはかなり珍しいと思いました。これはやはり、リリースは先だけどファンには心の準備をしてもらおう、というような計らいでしょうか。

ドイツにある所属レーベル(Century Media Records)が、"こういうかたちでやってみないか?"と提案してくれたんだ。シングルを小出しにリリースしていったことで、アルバムのキャンペーンも長くなったんだけど、当初自分自身はそのやり方には懐疑的だった。でも説得されてやってみたら、結果的には正しかったと思ったよ。俺らもそうだし、メタル・バンドはシングル1曲出して、ビデオを出して、アルバムが出たら今度はツアーっていうのがノーマルなやり方なんだ。でも今回はパンデミックでツアーがいつになったらできるのかわからない状態だった。ツアーができない状態でアルバムを出すのが嫌だったから、アルバムが出るまでにいくつかシングルを出して楽しんでもらって、という方法をとったんだ。

-なるほど。そして、そのキャンペーンの中で、「Deceiver, Deceiver」が昨年の10月に最初に公開されましたね。イントロからガンガン上げていくアグレッシヴな楽曲で、アルバムに対する期待を否応なく高める結果になったと思っています。実際に公開した手応えはいかがでしたか?

最初のシングルということで曲選びは難しかったんだけど、特に今回のアルバムは、テンポも雰囲気も感情的にも、いろんなスタイルの曲が入っているからね。"これがアルバムからの1曲目だよ"っていうふうに世に出せば、リスナーは"こういう雰囲気のアルバムなんだ"って思うだろうし。実際はすごくバリエーション豊かなアルバムなんだけどね。今作に限らず、アルバムから先行シングルを選ぶのは難しいんだ。願わくば、それが人気曲になって、ライヴでも披露してっていうことを想定しているんだけど。でもやっぱり、ああいうエクストリームな曲を最初に紹介するのがいいんじゃないかなってことで、今回は「Deceiver, Deceiver」を選んだよ。

-AメロからBメロに繋がっていくリフのスピード感は圧巻です。結成からもう約26年が経過していて、Michael個人にフォーカスするとCARNAGEの結成から約33年が経過してなおアグレッションが増しているように感じられるのですが、その源泉はどこにあるのでしょうか?

"怒り"かな、腹立つことはいっぱいあるからね(笑)! っていうのは冗談としても、音楽の中には怒り以外にもいろんな感情が表れているんだけど、やっぱり自分の中の情熱が変わっていないということじゃないかな。ミュージシャンって歳月を経ると、家族が大事になったり、他に趣味や楽しみができたり、人生の中で音楽以外のものが占める割合が増えていくことが多いんだ。例えばゴルフとか釣りとかさ(笑)。でも俺自身はそういうものがなくて、相変わらずギターとメタルと曲作りに時間を費やしている。まぁ、こう言っちゃうとそれはそれで悲しい話なんだけど(笑)。

-(笑)でもその情熱が為せる業というか、アグレッションだけでなく、本当に一音一音を大事にしているというのが伝わってくるんですよね。楽曲自体もそうですし、ライヴの音源や演奏を聴いてもすごくそう感じます。

それは俺だけでなくメンバー全員が、音楽とライヴ・パフォーマンスに情熱をこめて真剣に取り組んでいるからだよ。そして、真剣にやっていると同時に、それを楽しんでやっているということも大きいかな。バンドの雰囲気もすごくいいし。情熱を失っていくバンドもたくさん見てきたけど、なんでそうなってしまうのか、逆に不思議なくらいだよ。でも、考えてみたら情熱って自分の意志で持てるものではないんだよね。自然にそうなるものなんだ。俺自身、生活するうえで自分が得意じゃないことに関しては、情熱を傾けられないものもあるんだけど(笑)。とにかく、音楽だけは自分の分野だって思えるからね。

-最近、Daniel(Erlandsson/Dr)のライヴ動画が上がっていて、一部のメタル・フリークの間で"正確すぎる"と話題です。こちらはご覧になりましたか?

(動画を観て)素晴らしいね! Danielは怪物だよ(笑)。とても素晴らしいプレイヤーで、彼みたいなメンバーと一緒にプレイできることは嬉しいことだ。とにかく頼りになるし、ライヴ中に自分がわからなくなったときでも、彼がちゃんとやってくれてるから大丈夫なんだよ(笑)。

-先ほどの話にも繋がりますが、ARCH ENEMYはメンバー全員にプロ意識がしっかり根付いているバンドですよね。例えば、今の動画のDanielもそうですし、Michael自身も装飾音まで完璧にライヴでも弾ききっていて、メンバー全員からプロフェッショナリズムを強く感じます。これはMichaelが周りにそうあるように影響を与えているのでしょうか、それとももともとそういった気質のメンバーが揃っているということでしょうか。

どうかな、ここまでくるには長い道程があったからね(笑)。曲自体は俺がだいたい書いているけれど、演奏、パフォーマンスということに関しては各々がバンドに持ち込んでくれているものなんだ。その部分は俺が仕切っていることではないし。しかし、メンバーを選ぶということに関しては、自分の耳を信頼しているよ。今までいろんなメンバーがいたけれど、今はとても安定しているし、そういうプロフェッショナルなメンバーを選ぶ耳はあるのかもしれないね。

-話を作品自体に戻しますが、タイトルの"Deceivers"という言葉は"詐欺師"とか"真実でないことを信じさせようとする人"という意味のある言葉ですね。この曲に込められた意味やストーリーを教えていただけますでしょうか?

曲自体が非常にアグレッシヴで怒りに満ちたものだったから、歌詞もそれに合わせたものにしたかったんだ。内容としては、人生の中で必ずあるような裏切られた経験について歌ったもので、おそらくみんなが共感できることだと思う。自分自身の何か具体的なエピソードをもとにしてるわけではないんだけど、嘘をつかれたり、誰かに裏切られたりするような経験って誰にでもあることだからね。

-続いて公開された「House Of Mirrors」ではイントロでAlissa(White-Gluz)のハイトーン・ヴォーカルが入ってきて、まるで作品全体を予言するような楽曲になっていたとあとになってみると感じました。

そうだね。レコーディングしたとき、自分も一緒にいて聴いていたんだけど、あのハイトーンを聴いたときに思わずガッツポーズをしたよ(笑)。すごくいいエネルギーを感じる曲だ。この曲から感じられる80年代っぽいフィーリングや伝統的なヘヴィ・メタルの要素は、このアルバム全体にあるものだしね。もちろん、それをモダンな表現にしてはいるけれど。

-とはいえ、クリーンは最初だけで、後半のグロウルとスクリームのパートはAlissaの持つ才能をこれでもかと見せつけるような構成になっていますね。Michaelから見たAlissaの魅力や実力を教えていただけますか?

最高のヴォーカリストだよね。多彩な能力を持った彼女がいることで、いろんな扉が開けるんだ。ソングライターとしては、とても楽しいよ。

-年が明けて「Handshake With Hell」が公開されたときは本当に驚きました。前作の「Reason To Believe」で、クリーン・ヴォーカルがしっかりと入ってきたときも驚きましたが、バラードだったので自然な流れでそれを消化できたんです。でも、「Handshake With Hell」はARCH ENEMYとして全然異質な曲じゃなくて、むしろど真ん中ストレートの曲ですよね。それがとても斬新に感じました。

そういったサプライズができて良かった! 11枚目のスタジオ・アルバムともなると、リスナーに驚きを与えるのは難しいことなんだけど、挑戦し続けるよ。次のアルバムではまだ何ができるかわからないけどね(笑)。