INTERVIEW
ARCH ENEMY
2022.08.10UPDATE
2022年08月号掲載
Member:Michael Amott(Gt)
Interviewer:米沢 彰 Interview interpreted and translated by 染谷和美
-以前のインタビュー(※2017年9月号掲載)では、Alissaがクリーン・ヴォーカルを入れる提案をデモの中でしてみたけど本格的には採用されていない、という話もありましたが、今回このようなヴォーカル・ワークが取り入れられたのは、どういった経緯というか、誰のアイディアだったのでしょうか?
俺がこの曲のインストゥルメンタル・デモを送って、Alissaからこのようなアプローチで返ってきたのは、すごくエキサイティングなことだったんだ! とても気に入ったよ。ケースバイケースで、クリーン・ヴォーカルが合うときもあるし、うまくいかないときもある。明確なルールがあるわけじゃないんだ。合うか合わないかは、フィーリングだよね。
-この曲がアルバムとしても1曲目に採用されていて、バンドとしての進化を提示することにすごく重きを置いているように感じましたが、実際はどういう考えからだったのか教えていただけますでしょうか?
いつもは、荘厳な感じのイントロ曲をつけるんだけど、今回のアルバムにはイントロ曲がなくて、そういうこともあってこの曲は冒頭のインストゥルメンタルの部分が長くなっていて、アルバムのイントロ的な役割も果たしている。それが終わると歌が入ってきてっていう流れは、インパクトが大きいんじゃないかと思ったんだ。
-楽曲の展開もものすごく幅広い一方、アグレッションも十分で爆発力もある楽曲に仕上がっていて、今後ライヴの中でも定番曲になっていきそうに感じています。この曲への手応えはいかがですか?
北米ではすでにライヴで披露しているんだけど、すごくいいリアクションを貰っているよ。ダイナミックな楽曲だからね。日本でプレイするのも楽しみだよ。
-それは、本当に楽しみです! アルバムの流れとしては、「Deceiver, Deceiver」を挟んでから「In The Eye Of The Storm」へと展開していきますが、この曲は入りから映画っぽいSEで、MVも映画やゲームのような世界観と徹底されていますね。
そうだね、すごくクールなMVだよ。CGも使っているし、才能あるスタッフが集まってくれたんだ。歌詞を書いているなかで、映画的なイメージは自分の中にもあったんだけど、それをはるかに超えるようなビデオになっているよ。
-ミドル・テンポで聴かせる楽曲が世界観を広げていますね。ハイ・テンポで押すだけじゃなく、こういう聴かせる懐の広さがバンドの魅力のひとつだと思っているのですが、このテンポの落差は意識的に作っているのでしょうか?
今の時代、音楽はシングルで聴かれることが多くなったけど、俺たちはアルバムの流れを大切にしているんだ。アルバムという旅路を一緒に歩む感覚で、いろんな気分を味わって、アルバム全体で聴いてもらえたら、より楽しんでもらえると思う。頭にシングルを持ってきて、あとは曲を埋めていくだけというやり方じゃなく、後半にも聴いてほしい曲があるし、そういう構成にしてあるんだ。
-もうひとつのMV曲「Sunset Over The Empire」は、曲が展開してからのリフの刻みが個人的に最高すぎて、このリフとDanielのツーバスだけでアルバム買えって言えるぐらいにツボです。
(笑)ありがとう!
-シンプルに聴こえますが、すごく疾走感があって......こういったARCH ENEMYらしいリフはどんなふうに生まれてくるのでしょうか?
朝起きて、コーヒーを飲んで、音楽用の部屋でギターを2時間ほど弾く。これが俺の1日の始まりなんだ。そうやってほとんどのリフはできている。しっかり寝てスッキリした朝イチの頭のほうが、いいアイディアが浮かぶんだ。夜になると、その日1日の出来事が絡んでしまって、それが邪魔になるんだよね。シンプルに聴こえるリフほど、実際弾くのは難しいんだ(笑)。作るときは、頭で深く考えているというより、感覚で作ってるよ。いつも朝にそうやって何気なく弾いたものを、スマホのムービーで撮っているんだけど、それをあとから見直したときに"あ、ここ良かったな"っていう箇所を切り取って、それを作り込む感じだね。朝ほとんど無意識的に弾いたのを撮っているだけだから、日によって使えるアイディアがある日もあれば、まったく使えないときもあるし。音楽に関しては、基本独学だしなんのメソッドも持っていないし、理論的なことはわかっていないし、すべてインスピレーション頼みなんだ。そういう閃きって、いつ降りてこなくなるかわからないから、危険な方法ではあるかもしれないね(笑)。
-この曲は、Michaelのギター・ソロのアプローチとJeff(Loomis)のアプローチとの差が対比されていて、それもすごく面白いですよね。
あの曲で弾いている俺のソロは、いつもほどメロディックじゃないよね。Jeffと俺のスタイルはそれぞれ違うし、違うスタイルで演奏することはいいことだと思う。ふたりのギター・プレイヤーがいて、同じような演奏をしても意味がないからね。IRON MAIDENでも、Dave Murrayがレガートを使って弾くソロとAdrian Smithのメロディックでブルージーなアプローチは違って、そのコントラストが好きなんだ。ふたりで弾くハーモニーがばらけたときに、クレジットを見なくてもどちらが弾いているかわかる、そういう個性があるほうが面白いと思ってるんだ。
-Jeffのパートは完全にJeffに任せているんですか?
実は今回、Jeffだけが一緒にレコーディングできなかったんだ。まだ移動規制があった時期だったからね。彼だけは、アメリカのシアトルにあるスタジオで録ったものを送ってもらうという形だった。送ってもらったものは、良ければそのまま使って、もう少し違うものが欲しいときは、音まで指定はしないけど、"こんなエネルギーが欲しい"みたいな感じでオーダーすることはあったよ。Sharlee(D'Angelo/Ba)なんかは、音指定で"こういうのが欲しい"って伝えてくることもある。あとは、Danielが"それは別の曲でもう使ったよ"とか指摘してくれることもあるよ。曲も展開もいろいろあるから、自分で忘れちゃうことがあるんだよね(笑)。予め書いたソロを弾くわけじゃなくて、その場で即興で弾くっていうことが多いんだよ。アルバムを大音量で流しながら弾いていくっていうオールドスクールなやり方だから、なかなか全部は覚えていられないんだ。
-なるほど。ちょっと曲順が飛ぶんですが、「Mourning Star」と『Stigmata』(1998年リリースの2ndアルバム)の「Hydra」がすごくシンクロして聴こえるんですよね。これは意図的だったのでしょうか?
たしかにそう聴こえるかもしれない。両方ともDanielの発案だったから、そのせいもあるのかな。でも意図的にそうしたわけじゃないんだ。オールドスクールなARCH ENEMYの曲だね。
-ちょうど昨日、年明けのジャパン・ツアーが発表されました。単独での来日は5年ぶりとなりますが、どんなツアーになりそうですか? 日本のファンへのメッセージもお願いします。
すごく楽しみだよ! ツアー自体は少し前に決まっていたんだけど、ようやく発表できて、とても嬉しいよ。この秋には、6週間の欧州ツアーがあって、そのあと年末年始にもいろいろショーがあるんだけど、日本に行くころには演奏もタイトになって準備万端になっていると思う。ジャパン・ツアーでみんなに会えるのを楽しみにしているよ!