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INTERVIEW

ARCH ENEMY

2017.08.31UPDATE

2017年09月号掲載

ARCH ENEMY

Member:ARCH ENEMY:Alissa White-Gluz(Vo) Michael Amott(Gt)

Interviewer:米沢 彰

Alissa White-Gluzが電撃的に加入を果たし、メタル・シーンを騒然とさせた前作『War Eternal』から3年。ツアーでの経験も経て、いよいよ新体制下でのARCH ENEMYの本領発揮となるニュー・アルバムが完成した。ARCH ENEMY初の本格的なクリーン・ヴォーカルの導入を始めとした変化もありながら、コアとなるARCH ENEMYらしさも存分に散りばめられた今作について、そして、これまでについてを訊いた。

-10作目となる『Will To Power』の完成おめでとうございます。1996年の『Black Earth』(1stアルバム)から数えてもキャリアはちょうど20年を超えて、節目の作品になったのではないかと思いますが、実感はいかがですか?

Michael:ずっと当事者としてやってきて、これまであまり振り返ったりはしてこなかったんだ。アルバムが完成するたびに、これからが始まりだという気持ちになる。曲を作るだけじゃなくて、グッズを出したり、ステージを作ったり、毎回新しいことをしないといけない。俺だけでなく、スタッフも含めて、アルバムを作るたびにそういう気持ちになるんだ。アルバムを出して数年経って、そこでひと区切りがついて、それからまた新しいアルバムを作っていくけど、そのアルバムのサイクルが俺たちのようなバンドにはとても重要になっているんだ。でも、この作品を聴いてくれた人たちに、節目を迎えてまた新しく始まったと感じてもらえたら、すごく嬉しいね。

-前作の際には残念ながら取材をする機会がなかったので改めてうかがいますが、前作のときのヴォーカル交代劇はあまりにも衝撃的で、最初に一報を知ったときには私も"え!?"と声を上げてしまったぐらいでした。

Alissa:いろんなことが同時に起こったのよ。Angela(前ヴォーカリスト:Angela Gossow)がヴォーカルを辞めてマネジメントに専念することを考え始めて、それから私にARCH ENEMYへの加入の誘いが来たときには、私自身はほかにバンドをやっていて、ふたつのバンドを同時にできるのかと悩んだわ。Michaelたちは、ここで新しいヴォーカルを加入させないと活動が終わってしまう。私にとってもARCH ENEMYは大好きなバンドだったから、ここで終わってしまうのは困る。そんないろいろな気持ちがあるなかで、自分が一番悩んだのは私にできるのかということ。もしかすると、掛け持ちになるかもしれないし、果たして自分がやっていけるのか、って。でもいろいろ考えてみて、この挑戦は私にとって障害にはならないと気づいたの。チャレンジングではあるけど、できないことではないと思ったし、緊張もするけど、それを上回るワクワク感があったわ。だから、思い切ってやってみようと思って、Michaelに"YES"と答えたわ。それまでも、いろいろな自分のキャリアや経験値からすればもっと大きなバンドからの誘いもあったけど、自分の音楽性にピンとこないから断ってきた。だけど、ARCH ENEMYに関しては音楽的にも納得だし、私がやることでAngelaもマネジメントに集中できるし、バンドも存続することができる。私は自分のキャリアを積んでいくことができるし、何も問題はないと思い決断したわ。

-かなりの葛藤があったんですね。でも、今作は2作目になりますし、ツアーでの経験なども含めて、バンドに馴染んで取り組めたのではないでしょうか?

Alissa:私はどんな環境に放り込まれても、そこにいる人たちと一緒に物を作っていく"パートナー感覚"を一番大事にしているの。たとえ友達のバンドにゲストで参加するときでも"この人たちと一緒に音楽を作る"ということをいつも大事にしているわ。だから、『War Eternal』(2014年リリースの9thアルバム)のときも自分だけ新人という気持ちよりも、この人たちとアルバムを作るんだという気持ちが強かったわ。ただ、もちろんそのあとのツアーを経て、お互いへの理解が深まったし、ミュージシャンとしてのお互いの強みや好みみたいなものを理解できて、深く知り合えたということが今回のアルバムにも反映されていると思う。でもそれはたぶん人間としての信頼感とか、共演するミュージシャンとしての自信の深まりでもあると思うの。

-Michaelの目から見て、前作から今作にかけてAlissaの変わった部分はありますか?

Michael:『War Eternal』のときからすごいヴォーカリストだと思っていたし、元から彼女には強い印象を抱いていたけど、彼女の声への理解も深まってきたし、厳しいことも言えるようになってきたかな。彼女のできることがどんどんわかってきたんだ。最初のころは感心ばっかりしていたんだけど、300本も一緒にライヴをして彼女のヴォーカルを散々聴いていくなかで、細かいニュアンスとか、多彩な表現ができる人だとわかったんだ。すごく一緒に仕事をしやすいヴォーカリストだと思うよ。ヴォーカリストとして必要なのはピッチの正確さだったり、ほかにも様々な条件があるけど、一番重要であり彼女の強みにもなっているのはリズム感だと思う。かなり複雑な曲の上でエクストリームな歌声で歌っているのに、リズムをきちんと表現できてるんだ。彼女は音楽にピタリと合わせて音楽の一部として歌えるから、ただ叫んでいるだけのような普通のヴォーカリストとは違うよね。

-今作よりJeff Loomis(Gt)も加わっての制作となりましたが、制作はいかがでしたか?

Michael:Jeffに関してはギター・ソロも弾いてもらったりもしたけど、作曲自体には参加していないんだ。俺とDaniel Erlandsson(Dr)でほとんどを作曲した。今までもそうやっていたけど、今作でさらにふたりのコラボレーションが深まったと思う。あと、弟のChris(Christopher Amott)と制作した「Reason To Believe」っていう曲もあるんだ。この曲は......"(※日本語で)チョットバラード"なんだ(笑)。

-Chrisも関わっているんですね! その「Reason To Believe」はAメロからクリーン・ヴォーカルが入ってきて、これまでにないトラックになっていますね。

Michael:最初は想定していなかったんだ。そもそも、クリーン・ヴォーカルを入れることがARCH ENEMYとしてアリなのか、って考えていたし......。普段、音楽を作るときはあまり考えたりしないように、できるだけ脳を使わないようにしているんだけど、この曲だけは結構考えてしまったね。これをARCH ENEMYらしい曲にするにはどうしたらいいのか、どういうアプローチをしたらいいのかって考えていった。商業的な成功やラジオで流れるとかってことを狙っているわけではなくて、変わらずへヴィなものでこのアルバム全体にフィットするような曲にしていくにはどうしたらいいか、と考えたときに、クリーンなヴォーカル・メロディがひとつの選択肢として挙がってきたんだ。このバンドはできることはたくさんあるんだけれども、これをやっていいのかと悩んだ。アルバムも10枚目だし、新しいことをやりたいとは思うんだけど、やってしまったらそれでARCH ENEMYらしくなるのかってね。本で例えると、今までフィクションを書いていたのがいきなりドキュメンタリーに変わるような、そういった変わり方はさすがにおかしいけど、同じ本の中で新しい章を始めるような変化でいけば許されるのかな、とか。いろいろ考えて、クリーン・ヴォーカルを入れることを決めたんだ。ARCH ENEMYとして、やってはいけない試みもあるとは思う。それはほかの適したバンドがやればいいし、いろいろなスタイルをミックスしたバンドもほかにいるけど、ARCH ENEMYはフォーカスを絞って、"らしさ"のようなものを大事にしているから。最終的にできあがった楽曲はすごく気に入っているけど、レコーディング当日は、"Alissaがこれからクリーン・ヴォーカルを入れるのか"と思って、結構重たかったね。音楽のルールとして、いい音になればそれはいい曲だという考えもあるけど、挑戦してみることは大事だと思う。いろんなアイディアを理屈だけで出し合っていても、うまくいかないんじゃないと思ってそこでやめてしまうことも多いけど、Danielとデモを作っている段階ではお互いに対して"NO"は一切言わないようにしているんだ。まずはとりあえずやってみる。デモなんだから誰の耳に入ることもないし、頭だけで判断するんじゃなくて、とにかく全部試してみるという姿勢でやっているよ。自由な姿勢が音楽としての膨らみを作っていくんじゃないかな。

-Alissaはこのアイディアを聞いたときはどのように感じましたか?

Alissa:そもそも、この曲にクリーン・ヴォーカルを入れると決めたのはMichaelだから、"私に責任はないわ"と笑ったわ(笑)。『War Eternal』の制作のとき、歌詞を書いたりメロディを作ったりするなかで、ここはクリーンでやってみたらどうかと思っていた部分もあって。なんでも挑戦してみるということで、デモで入れてみたりしていたの。最終的にはこれまでの伝統的なARCH ENEMYの歌に落ち着いたけど、クリーン・ヴォーカルは断片的に採用されて、前作でも少しだけ使われた部分もあったわ。今回、本格的に歌うことになったときまず私が思ったのは、(前のバンドまでは)散々クリーン・ヴォーカルを歌ってきたけれど、バラードは初めてだということ。今まではパワフルな歌を歌うことが多かったけど、クリーンな声で感情のこもった歌を歌うことになって、一番考えたのはどういうフィーリングを表現したいかということだったの。どういう声で響かせたいというよりは自分の歌でどんな感情がみなさんに伝わるかということを大事にしたいと思いながら歌ったわ。