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INTERVIEW

ARCH ENEMY

2025.03.24UPDATE

2025年04月号掲載

ARCH ENEMY

Member:Michael Amott(Gt)

Interviewer: 菅谷 透 Translator:染谷 和美

ARCH ENEMYが、ニュー・アルバム『Blood Dynasty』を完成させた。2023年にJeff Loomisがバンドを離れ、後任としてJoey Concepcionが新たに加入した最新作は、これまでのエクストリームなスタイルを引き継ぎながら、リズム・チェンジや展開の変化等大胆なアレンジを取り入れた作風に。バンド初期の実験的精神に立ち返りつつ、新境地へと突き進んでいる。今回はプロモーションのため来日したMichael Amottを直撃。ギターを片手に、様々な話を語ってくれた。


ただのチャグ・パターンと何かの音じゃ、俺にとってリフじゃない、ARCH ENEMYの全曲はギター・リフとメロディで構築されてるんだ


-まず初めに、ニュー・アルバム『Blood Dynasty』の発売を控えた今の心境を伺えますか?

すごく誇らしいし、満足しているよ。これまでに4つのシングルをリリースしてきて、3月の終わりに、ついにフル・アルバムをリリースするんだ。レコーディングを始めたのは去年の1月からだからもう1年以上前で、5月か6月頃にはミキシングとマスタリングを終えていたから、俺にとってはすごく新鮮なものというわけではないんだけど、リリースすることには間違いなくワクワクしているね。

-ニュー・アルバムについて具体的な話をお聞きする前に、ラインナップの変更について伺います。2023年にJeff Loomis(Gt)がバンドから離れましたが、これは友好的なものだったんですよね。

そうだね。友好的なものだったし、俺たちにとっては驚きではなかったんだ。そういう話が前から出ていたからね。基本的には、彼が俺たちの予定していたツアーにコミットできない状況になったというのが理由なんだけど、俺たちは相変わらず友達のままだよ。彼がARCH ENEMYに加入するずっと前から友達だったし、今でも普通に話すからね。

-Jeffの後任としてJoey Concepcionが新たに加入していますが、彼が最初から第一候補だったのでしょうか? それとも他の候補者もいたのでしょうか?

コンタクトを取ったのは彼だけだったよ。理由は簡単で、彼は2018年に俺たちと一緒にプレイしてるからね。2回ショーをやったんだ。だから、彼ならできることはもう分かっていた。それに彼はバンドの大ファンでもあって、俺たちの曲をたくさん知ってるから、そんなにリハーサルしなくて済むのも良かったね。

-Joeyはサポートで入った以降もバンドのことをチェックしていたんでしょうか?

たぶんそうやって追ってくれていたんだと思うよ。彼は非常にテクニカルなプレイヤーでもあるけど、リズムもしっかり刻める。ARCH ENEMYはただソロを弾けばいいだけじゃなくて、リフもすごく重要なんだ。かなり速いテンポの曲もあるしね。そういう俺たちのスタイルを、彼はよく知ってるんだ。それに彼は俺の弟(Christopher Amott/ex-Gt)とも多くプレイしてきたし。Chris(Christopher Amott)は10年くらい前にアメリカに引っ越して、そっちでギター・レッスンを始めたんだけど、そこに教わりにきた1人がJoeyなんだ。その頃から知り合いでもあったし、Chrisがアメリカでしばらくやってたバンド(ARMAGEDDON)でプレイしてたこともあるしね。だから、そういうのが上手くハマったよ。

-Chrisの弟子のような感じですね。

そんなところだね(笑)。

-先程レコーディングは去年の1月に始まったとおっしゃっていましたね。前回の『Deceivers』(2022年リリースの11thアルバム)でのインタビュー(※2022年8月号掲載)では、メンバーはできるだけ同じスタジオに集まって制作していたとのことでしたが、今回も同じ方法で行ったのでしょうか?

そうだね。前作のときはコロナによる制限があって、Jeffがアメリカから来ることができなかったりといろいろあったから、今回はずっとやりやすかったよ。JoeyもAlissa(White-Gluz/Vo)もスウェーデンにあるスタジオにやってきた。みんなでそこに集まって、ドラムから最後のヴォーカルとギター・ソロまで、そしてミックスとマスタリングも含めて、全て同じスタジオで録音したんだ。これは『Anthems Of Rebellion』(2003年の5thアルバム)以来、20年以上ぶりにやったことだった。普通はいろんな場所を転々とするんだ。ドラムはここで、ギターは別のスタジオ、ヴォーカルはまた別のスタジオ、ミックスは別の場所、マスタリングはまた別の場所っていう感じでね。だから今回は久しぶりに全部を1ヶ所でやったんだ。

-1ヶ所で制作したことで、どのようなメリットがありましたか?

いい質問だね。ある意味ではシンプルだった。全てのオーディオ・ファイルがまとまっていて、いつでも使えるからね。でも同時に、俺は違うスタジオでの作業も好きなんだよ。そうすると間にブレイクを取れることもあるし。例えば、アルバムのリズム・ギターを全て録るのに2週間くらいかかるんだけど、その後数週間休憩して、それからギター・ソロを録るみたいな感じでね。今回は休みを入れることができなくて、ギター・ソロに直接進んだんだ。というのも、同じスタジオを2~3ヶ月予約していたからね。だから1つのことが終わったら次へって感じで、全てが連続して進んでいった。だからすごく効率的だったと言えるけど、俺としては違うスタジオに移動していくのもいいかもって改めて思ったね(笑)。

-なるほど。その分、集中して作業に取り掛かることができたのでしょうか?

集中できすぎたかもしれないね(笑)。俺たちが滞在してたスタジオは何もないような地域にあったし。俺は飽き性だから仕事の合間に休みがあっても、何もすることがなかった。去年の1月はマイナス20度くらいだったから、とんでもなく寒かったんだ(苦笑)。まぁ、それでもアルバムが完成できたのが一番重要なことだよ。邪魔が入らなかったとも言える。――もし東京でアルバムを制作することになったら、ここでは常に何かが起きてるよね? 今夜はあのショーに行こうかな、友達に会おうかなとか、レストランに行こうとか、きっと何か別のことをしようといろいろ考えてしまうだろう(笑)。アルバム制作にはもっと時間がかかるかもしれないね(笑)。

-(笑)東京で制作したらどんなアルバムができあがるのか、見てみたい気もします。

じゃあ、次は試しにここで制作してみようか(笑)!

-ぜひお願いします(笑)。ギターに関して、ソロは大まかに分けるとこれまでと同様にメロディックなパートはあなたが、テクニカルなパートはもう1人が担当していますが、Joeyに指示だったり、どういうふうに制作しようという話し合いだったりはしたのでしょうか?

ソロの下に流れるパートのほとんどは俺が書いて、ソロをどこに入れるかも俺が決めるんだ。どこを自分でどういうふうに弾きたいかっていうのはあるからね。彼がデモを送ってきたのを覚えてるよ。自宅でテスト的にソロのデモを作って送ってきたんだ。俺は"いや、こっちに来なきゃダメだ"と言って、彼をスウェーデンに飛行機で呼んだ。実際に会って顔を突き合わせたほうがずっと簡単に演奏できるし、"ここを速くしよう"とか"この小節はこうして"、"曲の終わりにこれをやって"とかいろいろ言えるし、スタジオならもっと柔軟に、思い付いたこともその場でできるからね。それに時差があると、ファイルを送って24時間待って、別のファイルが来て"いや、これは俺が求めてるものじゃない"となってしまう。余計な複雑さも出てくるし遅くなる。だから一緒にレコーディングしたいんだ。もっと早く進められるし、もっとクリエイティヴになれる。ソロについては俺もいくつか意見を伝えたよ。ソロは曲の雰囲気や歌詞に合ったものがいいし、エネルギーを保ってほしいってね。でもJoeyはすごくいい仕事をしたと思うよ。彼は本当に曲のために弾いていた。これはすごく重要なことだと思うんだ。自分のエゴや自己アピールのためじゃなく、曲のために弾くってことだね。もちろん、いくつかのクレイジーなテクニカル・プレイもあるけど、それは常に曲のためって感じだったから。

-本作のプレス・リリースでは"ARCH ENEMYがこれまでやってきたことの限界を押し広げており、ARCH ENEMYに期待されるもの全て、そしてそれ以上のものがある"とコメントしてらっしゃいましたね。アルバムを聴くとまさにその通りに、リズム・チェンジや曲の変化等、昔のARCH ENEMYの曲を彷彿とさせるような大胆さを感じましたが、これは制作時から意識していたのでしょうか?

俺たちには特に多くの作曲ルールがあるわけではないんだけど、"ルール無用でやってみよう"って感じだった。Daniel(Erlandsson/Dr)とデモを作るときに俺が言ったのを覚えてるよ。長年やっていると、曲のアレンジがプロフェッショナルになりすぎる傾向があると思うんだよね。何もかもが完璧な流れになっていくのを追求しすぎてしまうような。そういう音楽作りも好きだけど、今回は思い切って雰囲気を急に変えるようなことをやるのも面白いと思ったんだ。初期の頃にやってたように、テンポを劇的に変えたり、キーを変えたり、雰囲気や気分を変えたりする感じだね。それは楽しいし、ライヴでもすごく効果的だと思う。例えば「Liars & Thieves」みたいな曲は特にそうだけど、そういう劇的な変化があるとみんなモッシュ・ピットでワイルドになるからね(笑)。

-(笑)「Liars & Thieves」はもうライヴでもプレイしていますよね。

最初の2枚のシングル、「Dream Stealer」と「Liars & Thieves」は去年のツアー("RISING FROM THE NORTH TOUR 2024")ですでに演奏しているよ。これからは......正直ライヴのセットリストを組むのがどんどん難しくなってきてるんだ。今や12枚のアルバムがあるし、特にここ10年は俺たちにとってすごく成功した時期だったからね。有名な曲やファンのお気に入りがたくさんあるし。だから難しいよ。各都市で違うセットリストのショーを2回やる必要があるかもしれない(笑)。IRON MAIDENは最初に新しいアルバムのツアーをやって、それから昔のセットリストを演奏するツアーに出ているけど、その考えが今は理解できるな。1つのショーに全てを詰め込むのは難しすぎるからね。

-既存のルールから離れた作曲をしてみたくなったのは、Joeyが加入して新体制になったことも影響したのでしょうか?

いや、違うよ。彼は曲作りには関わってなかったからね。それはただ......分からないけど、たぶん自分自身がちょっと退屈になってたんだと思う。俺が若い頃、スラッシュやスピード・メタルに夢中になってたときに好きだったものを聴き直し始めたんだ。そういうバンドはアレンジにおいて、言ってしまえばプロではないんだよね(笑)。それが好きなんだ。つまり、ARCH ENEMYは常にかなりプロフェッショナルなサウンドだし、演奏技術も素晴らしいと思うけど、もっと予想外のことをやるのも楽しくて、エネルギーを得られるんだ。エネルギーは最も重要なことの1つだね。バンドが歳を取り、多くのレコードを作るにつれて、通常はそのエネルギーを失うものだ。初期アルバムのクレイジーなエネルギーは消えて、別のことをやり始める。俺たちはそこから何かを取り戻す方法を探そうとしているんだと思う。俺たち自身の興味を保つためにね。このアルバムは多様性に富んでいるよ。多くの異なるタイプの曲があると思う。だからこそ、最初の曲として「Dream Stealer」をリリースするのは難しかったね。あれには少しブラック・メタルの影響があって、コーラスにはJUDAS PRIESTの影響もあるかもしれない。そしてあまりメロディックではないギター・ソロもあって、もっとSLAYER風なものだったりする。だから人々は"あぁ、新しいアルバムはこんな感じなのかな?"って思うかもしれないけど、違うんだ。これはこの曲の音であって、アルバム全体じゃない。どの曲も少しずつ違うんだ。

-たしかに「Dream Stealer」が最初のシングルとして出たとき、アルバムの内容を示唆しているように感じましたが、全部を聴いてみると、それぞれの曲が独特に展開していきますよね。

でも、アルバムのオープニングはいつも速い曲にしたいんだよね。「Bury Me An Angel」(1996年リリースの1stアルバム『Black Earth』収録曲)から「Beast Of Man」(1998年リリースの2ndアルバム『Stigmata』収録曲)、「The Immortal」(1999年リリースの3rdアルバム『Burning Bridges』収録曲)、「Enemy Within」(2002年リリースの4thアルバム『Wages Of Sin』収録曲)もそうだし、いつも最初の曲は速くてエキサイティングなテンポにしたいと思ってる。それが重要だと思うんだ。できればいいフックも入れたい。「Dream Stealer」は俺たちにとってかなり速いよ。本当に速いSLAYERビートだし。

-ARCH ENEMYの曲で一番速いんでしょうか?

どうだろう。「Nemesis」(2005年リリースの6thアルバム『Doomsday Machine』)もかなり速いな。BPMは速いけど、ハーフタイムになってる。200 BPMくらいなのかな? ウォームアップしないと演奏が難しいよ(笑)。「Dream Stealer」は少なくとも俺たちの中で最速の曲の1つだね。スピードが全てだ(笑)! 16歳の頃はスピードが全てだったよ。とにかく、すごく楽しかった。こういう異なる要素もARCH ENEMYらしいよね。曲が1つの方法で始まって、ある時点で全く違う場所に行って、それからまた戻るような展開。そういう変化が好きなんだ。それこそがメタルだよ。本物のメタルだと思う。何がメタルかについては多くの異なる考え方があるよね。でも俺には自分の感覚、自分の解釈がある。今メタルと呼ばれてるものの多くは、俺から見れば全くメタルじゃないものもある。チャグの要素があるだけで、チャグ以外にメタルの感覚が音楽にないんだ。俺にとってそれはリフじゃない。チャグ・パートはリフじゃなくて、ただのリズミカルなパターンだ。物足りないんだよね。すぐに飽きる。ただのチャグ・パターンと何かの音では、俺にとってリフじゃない。本物のリフが必要なんだ。そういう意味で、ARCH ENEMYの全曲はギター・リフとメロディで構築されてる。それは古風なアプローチ方法なのかもしれないね。俺はMETALLICAやSLAYER、MEGADETH、Dave Mustaine(Vo/Gt)のようなものを聴いて育って、それを自分のところに持ってきたんだ。そうやって俺たちは曲を作ってるよ。

-メタル感のある「Dream Stealer」を出した一方で、第2弾シングルの「Liars & Thieves」はハードコアのルーツを感じる楽曲になっていますね。

俺はいつもああいうハードコアなものが好きだったんだ。GBHやDISCHARGEのようなバンドと一緒に育ったしね。