INTERVIEW
ARCH ENEMY
2025.03.24UPDATE
2025年04月号掲載
Member:Michael Amott(Gt)
Interviewer: 菅谷 透 Translator:染谷 和美
-今日もAMEBIXのTシャツを着てらっしゃいますもんね。
そう、古いUKのハードコア・パンクだ。「Liars & Thieves」の感じは最初のMETALLICAのアルバム(『Kill 'Em All』)からのものかもしれないし、ハードコア・パンクの影響を受けたスピード感もあるかもしれない。ある時点までは、ヘヴィ・メタルはSAXONやJUDAS PRIESTのようなものだった。でもスピードと攻撃性によって、サウンドに大きな革命が起こったんだ。俺がギターを弾き始めたのはちょうどその頃だったから、そういうリフが好きなんだよ。実は「Liars & Thieves」のリフがアルバムで一番弾くのが難しいリフだったんだ。ギター雑誌みたいな話になってるけど(笑)、あれはアルバムで最も難しいリフの1つだった(※実際に演奏する)。あのタイトなサウンドを得るために4つのギター・トラックを重ねてるんだけど、それが少し難しかった。デモでは2つのギターだけで、俺自身のクオリティ・コントロールもずっと低かったんだけど、スタジオで4テイクを全く同じように弾くのは大変だったよ(笑)。
-タイトル曲の「Blood Dynasty」はヘヴィなナンバーで、ミュージック・ビデオでAlissaが血まみれになるようなところも印象的でした。
あぁ、それも楽しかったよ。あのビデオのほとんどはグリーン・スクリーンだけど、もちろん血はメイクアップだからね。だから彼女は全部血だらけになって......あれはその日の最後に撮影したと思うよ。音楽的には、Danielが書いた部分から始まったんだ。彼もギターを弾けるんだけど、俺はその部分が好きでね。彼がその部分だけのデモを持っていたから、俺たちはこれを作らなきゃいけないと思ったんだ。重なり合う2つのギター・ライン、コール&レスポンスみたいな部分は、かなり雰囲気があると感じていた。それから俺はその曲のキーのために多様なパートを思い付いたんだ。でも、あの曲の音楽のほとんどはDanielのもので、俺は歌詞とヴォーカルのアレンジメントを書いた感じだね。時々はそういうふうに作るんだ。大部分は俺のリフだから、ほとんどの曲は俺が作ったものだけど、あの曲は主にDanielのものだと言えるね。
-「Paper Tiger」はクラシカルなメタルで、明るいような雰囲気も持っているのがユニークでした。
あの曲はすごくクラシカルだよね。ヴォーカル以外の全てがトラディショナルなヘヴィ・メタルって感じだ。ヴォーカルはヘヴィなデスヴォイスとかグロウルだけど。ギャロッピングとかも使っているし、遊び心や明るい側面があるよね。あのリフを弾くのはすごく楽しいけど、バランスが難しかった。もしかしたらARCH ENEMYとして十分なヘヴィさではないんじゃないかって、ちょっと心配だったんだ。でも全員が演奏、録音して、特にAlissaが歌ったら、やっぱり十分に重く聞こえたよ。ヘヴィだと思ったんだ。
-そういう部分も、新境地のサウンドとして意図的に試してみたのでしょうか?
ああいった要素のある曲は他にもいくつかあると思う。前作には「Handshake With Hell」という曲があって、あれもトラディショナル・メタルの要素がたくさんあったんだ。俺もそういう種類の音楽をよく聴くし。古き良きヘヴィ・メタルだね。
-私が日本人だからかもしれないですが、イントロのシャウトはLOUDNESSっぽく感じました。
あぁ、俺たちもLOUDNESSが大好きだよ。たしかにそんな感じだ。でもまた、それは意図したものじゃなかったんだ。ヘヴィ・メタル・サウンドの典型だよね。ハイトーンのスクリームや叫びがあって。Alissaがああいうことをするのがすごく好きなんだ。「House Of Mirrors」(『Deceivers』収録曲)でもやってたよね。そう、ある意味高音のスクリームだ。
-本作にはフランスのバンド、BLASPHEMEのカバー曲「Vivre Libre」が収録されていますが、アルバムの本編では初めてAlissaが曲の全部をクリーン・トーンで歌っています。選曲も含めて、どういう経緯で実現したのでしょうか?
ちょっと変わった話なんだ。俺は世界中からの音楽を集めるのが好きなんだよ。アンダーグラウンド・メタルとかアンダーグラウンド・パンクとか、そういうのだね。世界中のメタル――例えばロシアにいれば古いロシアのメタル・バンドやレコードを探すし、もちろん日本にいるときは、隠れた宝物みたいなものを探したりする。それは俺の趣味のようなものなんだ。フランスにいるときも、何年も前からフランスの古いレコードなんかを買ってたよ。あそこにはすごく大きなヘヴィ・メタル・シーンがあった。でも日本と同じように、そのほとんどは彼等自身の言語で歌われていたんだ。もっと言えば、日本の曲は英語の歌詞も混ざってることがあるけど、フランスのは全てフランス語だった。それがとてもユニークなサウンドになっていてね。他とは全く違う響きになるんだ。音楽自体はダークなヘヴィ・メタルとかカルトチックなものなのに、フランス語の歌詞が付いてる。だからすごくユニークなんだよ。数年前のツアー・バスで、Sharlee(D'Angelo/Ba)とDanielにそういう曲をいくつか聴かせたことがあってね。彼等もいろんな音楽を知ってるけど、俺はクレイジーだからもっと詳しいんだ(笑)。だから時々、彼等に超マニアックな曲を紹介してるんだけどさ。飲みながら音楽を聴いてたら、Sharleeがあの曲を"これ、俺たちでカバーできるんじゃないか?"って言ったんだ。Alissaはフランス語を話せるからね。俺はそれをメモしたけど、そのときは何かのボーナス・トラックになるだろうと思ってた。でも最終ミックスを聴いたとき、"うわ、これはすごくビッグなサウンドだな"って感じたんだ。だからメインのトラックリストに入れようかと考え始めたんだけど、そんなことをしたのは初めてだよ。
-前作でもボーナス・トラックで彼女がクリーン・ヴォイスで歌っている曲がありましたよね。
そうだな、あれはオランダのバンド(PICTURE)だった。1982年の「Diamond Dreamer」っていう曲。俺はビッグなバンド、JUDAS PRIESTやIRON MAIDEN、BLACK SABBATHとか大好きだけど、そういうのはもう何度も聴いたから、ある時点からもっとマニアックなものを探すようになった。俺のレコード・コレクションにはいくつか奇妙なものも混ざってるよ。俺はいつもそういう考古学者みたいなところがあるんだ。物事のアンダーグラウンドの部分を深く掘り下げるのが好きだよ。
-そういえば前回のツアーで来日した際([Arch Enemy "Deceivers Japan Tour"])に、Xに松山千春の『長い夜』のレコードの写真をポストしていましたね。どうやってあの曲に辿り着いたんだろうと気になっていたんです。
あの曲は数年前に日本にいたときに聴いたんだ。カラオケとかをやってる人たちと一緒にいたときに聴いてね。美的な感じというか、ギターのメロディが気に入って、"これはなんだろう?"と思って調べたんだよ。
-ちなみにご自身のXではよく日本語で投稿されていますが、それはどういったきっかけがあったのでしょうか?
他の言語でやることもあるね。スペイン・ツアーのときはスペイン語とか。でも俺のXのフォロワーは主に日本の人だと思ってるんだ。今ではXはそれほど人気じゃなくなったからね。ほとんどの人はInstagramにいて、年配の人はFacebookにいる感じだと思う。俺はTikTokにはいないし。だからもし日本のファンが興味を持ちそうなことがあれば、日本語で投稿しない理由がないよ。日本人以外は誰も俺をフォローしてないし(笑)。俺がする唯一のやりとりは日本のファンからだから、日本語で投稿し始めたんだ。これっていいことかな、悪いことかな(笑)?
-(笑)日本のファンにとっては非常に嬉しいことだと思います。
なら良かったよ(笑)。
-(笑)アルバムについて話を戻しますと、本作にはもう1つカバーとしてボーナス・トラックにDEATHの「Evil Dead」が収録されていますね。カバー曲でバンドのルーツを知ることができるのは音楽体験として素晴らしいですし、個人的にDEATHのファンだったので選曲にも驚きと喜びがありました。実際に曲を聴いてみるとARCH ENEMYがこの曲をやることは理に適ってると感じたのですが、選曲の理由を伺えますか?
実は俺が最初にツアーしたバンドの1つがDEATHだったんだ。最初のアメリカ・ツアーが1990年の『Spiritual Healing』のツアーで、DEATHのオープニング・アクトだった(※CARCASS在籍時)。俺が20歳ぐらいのときだ。アメリカでツアーするのは楽しかったし、素晴らしかったよ。Chuck(Schuldiner/Gt/Vo)は俺より2歳年上だったけど、もう伝説的な存在だった。彼とギターを弾いたり、アドバイスを求めたり、ギター・テクニックや曲の書き方について教えてもらったりしたよ。本当に素晴らしかった。彼へのトリビュートができて良かったよ。俺は彼等の初期のアルバムが大好きだった。DEATHには異なる時期のファンがいるけど、俺は特に『Spiritual Healing』までが好きなんだ。彼等はその後『Human』、『Individual Thought Patterns』、『Symbolic』と進んでいったけど、その頃にはもう自分のスタイルを見つけていたから、それ程影響を受けなかった。でも、最初の作品からは間違いなく影響を受けたよ。
-そういえば、AlissaがChuckのヴォーカル・スタイルに影響を受けたというインタビューを見掛けました。
デス・メタルのヴォーカル、デスヴォイスとかいろいろな呼び方があるけど、それをやってる人はみんなChuckの影響を受けているだろうね。"DEATH"なんだから(笑)。俺にとって、その手のヴォーカルは2人いて、ChuckとMORBID ANGELのDavid Vincentだと思う。彼等は本当に何か強力なもの、クールなものを届けることができた。彼等はRonnie James Dio(BLACK SABBATH/RAINBOW/DIO etc.)やBruce Dickinson(IRON MAIDEN)、Rob Halford(JUDAS PRIEST)と同じくらい素晴らしいけど、ただスタイルが違うだけだよ。
-Alissaはこのカバーをあなたが提案したとき、どう反応したんでしょうか?
分からないけど、"えぇ、もう1曲?"って感じだったんじゃないかな(笑)。でも楽しかった。あの曲は実際、とても早く完成したんだ。演奏も1回でやったしね。ほとんどの機材はもう片付けた後だったから、ギターはスタジオのレスポールで録音したんだ。ネックが太くて弾くのがとても難しくてね。俺とJoeyでソロを分けて、交互にやったんだ。たしかJoey、Mike(Michael)、Joey、Mikeみたいな感じで4パートあった。"オーケー、次のソロはお前が弾け"、"じゃあ俺が弾く"って感じで。でも本当に即興で、難しく、ただクレイジーに何かイカれたことをやろうとした。楽しかったな。忘れられない瞬間だよ。恐らくスタジオで一番楽しかった日だったと思う。
-今後の活動予定についても教えてもらえればと思いますが、明日(※取材は3月1日)は日本のファンと交流する企画("トゥルーパー座談会 in 渋谷 vol.4")があるんですよね。
小さな会場でのイベントだね。ありがたいことにソールド・アウトだ(笑)。きっと面白いだろうね。以前にも日本でリスニング・セッションみたいなのをいくつかやったことがあるよ。ファンがこうやって座って静かに聴いて、俺はステージに座って観客と向かい合って(※ぎこちなく手を振る仕草)、自分が2年かけて創ったものを彼等が聴くのを観てるんだ。ちょっとプレッシャーだし、変な状況だよね(笑)。
-(笑)リスニング・セッションの間は話もしにくいですもんね。
そう、なんだか緊張感があって落ち着かない感じだよね。明日はちょっと違うと思うけど。もっとラフな感じになるかも。ビールがあるって聞いたし、みんな飲んだり食べたりできる。俺はテツ(トゥルーパー・エンタテインメントの宮本哲行氏)が観客を楽しませてくれることに頼ろうかな(笑)。
-きっと明日来場するファンも一番気になる質問だと思いますが、今後バンドでの来日の予定は計画しているのでしょうか?
今それを検討してるところなんだ。いくつかスケジュールの問題があったけど、間違いなくそれに取り組んでる。俺たちはいつも日本でたくさんのツアーをやってきたから。俺が日本でどれだけ演奏したか分からないよ。"LOUD PARK"も含めるとさらに多いし、俺はCARCASS、SPIRITUAL BEGGARS、BLACK EARTHでも演奏したことがある。BLACK EARTHは3回、そしてARCH ENEMYは覚えきれないくらいだ。だから、とても幸運だよ。日本とARCH ENEMYの間には素晴らしい関係があるんだ。俺たちにとってのグラウンド・ゼロみたいな場所だよ。全てはここから始まったんだ。バンドを始めた頃、90年代半ばの世界的なメタル・シーンは今とはかなり違っていた。当時、デス・メタルは廃れていて"死にそう"だった(笑)。80年代後半から90年代初頭のブームは終わっていて、ニューメタルやインダストリアル・メタル、ヒップホップとメタル、ラップ・メタルが登場した。リード・ギターはなくて、代わりにDJがいたりした。そんな時代だったから、ARCH ENEMYは最初のアルバムをすごく小さなスウェーデンのレーベルからリリースしたけど、ほとんど反応がなかった。1人の日本人以外はね(※宮本氏を指差す)。彼が日本でリリースしたいと言ってくれて、突然"11,000枚のCDが売れた"と聞いたんだ。それが多いのかどうか分からなかったけど。 そして97年に日本に来て、CATHEDRALのオープニング・アクトをしたんだ。たしかON AIR EAST(現Spotify O-EAST)で演奏したと思う。俺はCARCASSでのライヴ経験があったけど、他のメンバーはそれほど経験がなかった。だからバックステージで彼等に"今夜の観客はCATHEDRALのファンで、きっと誰も俺たちを知らないから、なんのリアクションもないと思う。でも頑張って彼等を味方につけよう"って言ったのを覚えてる。でもステージに上がったら会場全体が熱狂して、一緒に歌ってギターのメロディも歌ってくれた。本当に驚いたよ。観客が俺たちを観ることを楽しみにしていたなんて、誰も俺たちに教えてくれなかったからね。それはとてもエモーショナルな瞬間だったよ。
-次のツアーでは、ニュー・アルバムの曲のメロディもきっと歌ってくれるでしょうね。
ファンがそうしてくれるのは、いつもとても素敵で感動的なことだよ。......でも正直、今はもう予想できるんだ(笑)。最初のときは"うわ、何が起こってるんだ?"って感じだった。誰かが実際に俺たちの曲を聴いてくれてるなんて知らなかったからね。日本のレーベルと契約するチャンスを得たけど、あれはインターネット以前の時代だったから、俺たちは全く知らなかった。だからこそ日本とは特別な関係があると思うんだ。少なくとも俺たちのほうは日本をとても愛してるし、いつもここに来る努力をしてる。そして日本のファンに何か特別なものを提供したいと思ってるんだ。
-日本のファンももちろんARCH ENEMYを愛していますよ!
(笑)アリガトウ!
RELEASE INFORMATION
ARCH ENEMY
『Blood Dynasty』
「Trooper Entertainment」
2025.03.28 ON SALE!!