INTERVIEW
ARCH ENEMY
2011.05.12UPDATE
2011年05月号掲載
Member:Angela Gossow(Vo) Michael Amott(Gt)
Interviewer:米沢 彰 Translator : Yuga
-ニュー・アルバム『Khaos Legions』の完成おめでとうございます。前回のインタビュー時(2009年10月)に予告されていた通りの日程でのリリースとなりましたね。完成しての率直な感想をお聞かせ下さい。
Michael Amott (以下M):ありがとう!率直に言って、『Khaos Legions』についてはすごく満足しているよ。このアルバムはバンドの目標を達成したと考えている。これを聴いたらきっと俺たちが心と魂をこのプロジェクトに注いだことが分かると思うよ。予定通りにリリースできたのも、Angela Gossowが素晴らしいまとめ役だということの証明だよ!
-"Khaos"というのはギリシア神話の"原初の神"の名ですね?これまでのアルバム・タイトルで神話の世界観はほとんど出てこなかったと思いますが、今回このタイトルを付けるに至った経緯を教えて下さい。
Angela Gossow(以下A):"Khaos"というのは宇宙の始まりのことを意味していて、ギリシア神話に限らず私たちも無神論的な世界観とその創造を信じているの。天地創造以前の混沌で、とても想像力豊かで何でも生み出すことができる状態でもあるわ。政治的に、無政府状態という意味もあって、そこでは法律もルールもない新しい社会を始めることができるの。私たちは今、世界の信仰におけるシステムが圧政的で停滞しているように思えているわ。膨大な知識や科学、様々な教育や情報に手が届くはずなのに、現代世界はまったく自由ではないわ。政府や多国籍企業、ロビイストや宗教上の恐れ、迷信による恐怖心によって支配されている。だから私たちはそれらのシステムを破壊し、この世界をカオスの中に放り込んで、新しくてより良い社会を築くべきなのよ。『Khaos Legions』は革命と再開発やアナーキーと無神論者の軍隊のこと。今こそ古い世界を壊して新しい社会を獲得する時よ!
-日本盤ボーナス・トラックの2曲を含めると全16曲とかなり曲数が多く、大作と言っても過言ではないのではないかと思いますが、収録曲がここまで膨らんだのはどういった経緯からですか?
M:自然にこうなったんだよ。俺たちは新しい音楽を4年も書き貯めていたから、去年の6月にアルバムを作り出した時にはもう既に様々なコンセプトやアイデアがあったんだ。だからリハーサルを始めた時に本当に色々な材料があることに気付いたよ!『Khaos Legions』が普通の10~11曲のアルバムではないってことが俺はすごく好きなんだ。本当は20曲くらいレコーディングをしたんだけれど、収録していない曲はだいたいがカバーだった。ARCH ENEMYとしての新曲も一つあるから、それはいつかミックスしてリリースしたいと思っているよ。
-今作ではアグレッシヴな曲はよりアグレッシヴに、一方で、ミドル・テンポの曲はよりヘヴィで変化を強調した楽曲となり、それぞれの曲の個性が際立っているように感じました。こういった楽曲それぞれの個性はかなり意識して作られたのですか?
M:君がそういう風に感じてくれて嬉しいよ。最初から『Khaos Legions』では様々な動きを音と曲の中に入れたいと思っていたんだ。3年も同じ音楽をプレイし続けていると、ARCH ENEMYがどういう存在か、またどういう音であるべきかという考えが大体みんな同じになってくるんだよね。いつも俺が中心に音楽のアイデアを出して、他のメンバーがそれにアイデアを加えて馴染ませるんだけど、それがバンドの音楽に継続性を与えているんだと思う。俺はいつでも他のメンバーのアイデアを受け入れてきたし、そういったアイデアが様々な新しいスタイルや味を生み出すんだ。それはバンドの成長と進歩にとても大事な要素だと思うよ。
-ARCH ENEMYらしい、というかAmott兄弟らしいコード展開が随所に見られる一方、ギター・ソロに関してはテンションの効いたカオティックなフレーズが多く、これまでにない新しい印象を強く受けました。これまでのARCH ENEMYらしさを大事にしながら、変化する部分は変化を求めた結果のように感じましたが、ご自身では今作での変化をどのように捉えられていますか?
M:そうだね、それはとても正しいと思うよ。今回俺たちは"ノー・ルール"をテーマに曲を書いていたからね。ARCH ENEMYはこれまで様々な音楽から影響を受けてきた。スラッシュ・メタルやデス・メタル、それにクラシックなハード・ロックからもね。このバンドは始めから、ヘヴィでエクストリームな音とたくさんのメロディを混ぜて音楽を作ろうと考えていた。俺は本当にたくさんのギター・サウンドのアイデアを持ってたけど、それはこの4年間で温めてきたリフやメロディを上手に織り込んでいい曲を作るためだったんだ。君が言った通り、『Khaos Legions』にはこれまでになかった音もあって、俺はすごく良いことだと思っている。簡単に予想ができないバンドでいたいからね。俺たちの真髄の音に正直でいながらも、常に変化し成長し続けたいんだ。
-今回のアートワークはこれまでのあなた方のものとかなり異なっているようですが、アートワークに関して、何か目指すところの変化があったのですか?
A:あのアートワークはフランスの絵の"Liberty Leading The People"から影響されたの。ある女性がフランス革命を、旗を高く掲げて指揮をとっている。私たち自身やファンや今の世の中で起こっていることを力強い革命的なテーマと共にアルバムのカバーに使いたかったの。『Khaos Legions』の歌詞や音楽的なメッセージを伝える皮肉で残酷なアートワークがほしかったのよ。Brent Elliot-Whiteは私たちが伝えたかった全てを見事に捉える素晴らしいアートワークを作ったわ、終末論的な意味での破滅と革命、そして最終的に獲得する勝利よ。
-中央の人物が女性のようですが、これはAngela(Vo)ですよね?ということは5人の人物はあなた方を表しているのですか?
M:その通りだよ!みんな実物よりハンサムに見えるけどね。ライヴではこのカバー・アートにあるTシャツを着るんだ。新しい音楽と共に温めてきた『Khaos Legions』のテーマを表現するひとつの方法だよ。
-つまりこのアートワークが意味するところは、リスナーやファンをあなた方が導いていくというようなイメージということですか?
A:そうよ。このバンド自体も『Khaos Legions』の一部なの。私たちはファンに軍隊への動員を命じて、それを率いる反抗の象徴なの。そして世界や町が燃え崩れて行くのを横目に黒旗の下で行進していくのよ。
-音をほとんど弄っていない生々しさを持ったドラム音のように聴こえますが、もしかしてDanielのドラムは全くクオンタイズせずにミックスされているのですか?
M:そうだよ!Danielのドラムでは、ドラマーの音をみんな同じにしてしまうような変なソフトウェアは使っていないんだ。自然の温かみがあって、それでいてモダンで重厚な音を作りたかったんだよ。