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INTERVIEW

ARCH ENEMY

2017.08.31UPDATE

2017年09月号掲載

ARCH ENEMY

Member:ARCH ENEMY:Alissa White-Gluz(Vo) Michael Amott(Gt)

Interviewer:米沢 彰

ARCH ENEMYのことをわかったと思っているって? いやいや、まだ知らない俺たちがいるよ


-アルバムの幕開けとなる「The Race」はイントロもAメロもゴリゴリでエクストリームなサウンドで、聴き始めた瞬間からガツンと目を覚ますようなトラックですね。節目の作品でこの曲を1曲目に持ってきたのは個人的にかなり嬉しかったです。

Michael:この曲を1曲目に持ってくるのは意見が分かれたんだ。俺の中のキッズ心が"人を驚かせたい"って囁いたりもして。"ARCH ENEMYのことをわかったと思っているって? いやいや、まだ知らない俺たちがいるよ"ってね。まだまだエクストリームなことができるという意思表示でもあるし、目覚ましのような曲を持っていきたいという気持ちがすごくあったんだ。昔ながらの普通のARCH ENEMYで始まるよりは、この方が僕としてはいいかなと思ったんだよね。

-作品全体としては、エクストリーム性を大事にしながらも様々なアプローチを試した作品だと感じました。

Michael:今回のアルバムはすごく幅広いものになったと思っているよ。3分くらいの勢いのある「The Race」のような曲もあれば、「Dreams Of Retribution」のような雰囲気重視のプログレっぽい曲もあったり、「Reason To Believe」はいわゆるARCH ENEMYらしさを感じさせる曲だけどそれに新しい要素を加えて、新しい音の追求をしてみた。「A Fight I Must Win」はオーケストラと一緒にやってみたりと、とにかく幅の広さを追求したんだ。

-話は逸れてしまいますが、リリースを重ねるうちに、初期のエクストリームさを薄めていってしまうバンドもいますが、そういった風潮についてはどのように思っていますか?

Michael:どのアーティストのことを指しているかにもよるけど、音楽性の変化はアーティストによるし、一概には言えないかな。あとは年齢だね。特に若いころって好きだと思っていたバンドがソフトな方向に走ったりとか、幅を広げたことをやりだすと"これはダメだ"とか"合わない"とか言って次のバンドに走ってしまったりね。とにかくへヴィなもの、速くてエクストリームなものしか受けつけない時期が俺にもあったけど、年齢と共に少し違う色合いの音楽を受け入れられるようになってきていて、変化が成長や進化と思えるようになってきた。若いときは激しさ一辺倒な時期があると思うから、一概には言えないかな。でも、バンドには好きなものを作る権利があると思うんだ。様々な試みをしてバンドはサウンドの幅を広げていくと思うけど、ファンからすればなかには気に入らないものがもちろんあると思う。でも、バンドはファンのため"だけ"に音楽を作るというより、自分たちが好きなものを作るということを続けていかないと、バンドとして成長できないと思うよ。

Alissa:アーティストが家に上がってきて"これが新しいアルバムだから、今までの私たちの音楽は忘れてね"って捨てて回るわけじゃないからね(笑)。"初期のころが好きだったのに"というファンはそれを買って家に置いてくれているわけだから、今の自分たちが気に入らないなら自分の好きな時期のアルバムを聴いてくれればそれでいいの。"前の方が好きだったのに"と言われても、今バンドがやろうとしていることは、それはそれとして受け入れてもらうしかないと思う。Michaelも言うとおり、人としてミュージシャンとして成長していくために、違うことをやるのはバンドの持つ権利だと思うわ。そうやって新しい扉をどんどん開いていくバンドにずっとついていくのもいいと思うし、気に入らなくなればそこでストップするのもいいと思う。ファンのみんなを全員喜ばせることはできないから、バンドは自分の好きなことをやる。これは大前提。ただ周りに合わせるものはダメ。トレンドを追い掛けているだけで、本当の自分たちを持っていないと、新しいアルバムができたときにはそのトレンドの後追いになってしまうわ。でも、METALLICAがいい例だけど、新作が出たときに新作の曲だけでライヴをするということはまずないし、昔の曲も、新しい曲も、みんなが観たいと思う曲をやるから、そこでバランスは取れてるんじゃないかしら。

-ちょっと脱線のつもりが、かなり深く答えていただき、ありがとうございます。曲に話を戻しますが、先ほどもAlissaの声への理解が深まってきたという話も出てきていて、「The Race」の途中のスロー・ダウンしたパートではAlissaらしい、まとわりつくようなグロウルがすごく生きていて、Alissaらしさを生かした曲作りの方法が固まってきたのかなと感じたのですが、実際のところはいかがですか?

Michael:俺たちの方からヴォーカルなしのデモを送って、それにAlissaが歌を乗せる形で制作を進めたんだ。だから、逆にこっちが驚いたんだよね。今も現在進行形で驚いているぐらいなんだ。ヴォーカル・ワークに関しては基本的にAlissaに任せているんだ。ここでスロー・ダウンする、とか、あらかじめ構成は決まっているなかで、Alissaが何をどう表現するかはAlissa自身が全部決めている。お互いに話し合いもするし、もちろん俺から意見を出すこともあるけど、結局ライヴで歌うのはAlissaだから、彼女が納得した表現が大事だと考えているね。Alissaから送り返してきた、その98パーセントくらいは俺が聴いても完璧だと思う。たまに俺らから返してまた話し合いをしたりもするけどね。俺はAlissaの曲作りのスタイルがすごく好きなんだ。

-「The World Is Yours」はMVも先行して公開されていますが、名曲「Nemesis」(2005年リリースの6thアルバム『Doomsday Machine』収録)にも通じる曲だと個人的には感じました。制作上、過去の曲との対比や以前に試した手法といったことを意識することはありましたか?

Michael:過去の楽曲を参照したり対比させて考えることはあえてしていないんだ。仮にしたとしても別に悪いことではないけどね。同じ人が作るんだから、どこか似るところがあるのも無理はないと思うし、それをあえて排除する必要もない。「Nemesis」は自分たちの楽曲のなかでもヒットした曲だけど、"あのギターの音だ"ってみんなが覚えてくれているものをそのまんまやるのは、それはそれで難しいんだ。とても不思議なことだけど、同じことをやろうとしてもなかなかできない。バンドとして自分たちを定義づける音ができるとそれにこだわって同じ材料で曲を作り続けるバンドもいるけど、ARCH ENEMYはいったん白紙にして最初からまた書き始めることで進んできたバンドのような気がする。でも、過去作と似ているという指摘は、言われてみると、そうだと思うところもあるね。それは僕たちの音楽的なスタイルと大きく言えばそうなんだろうし、そういう例はほかにもたくさんあるんだろうなと思うよ。「First Day In Hell」も、「Mechanic God Creation」(『Doomsday Machine』収録)とか「Exist To Exit」(2003年リリースの5thアルバム『Anthems Of Rebellion』収録)とか、そういった曲に似ているというのと同じで、それはリフの雰囲気とか歌メロの乗り方の印象からくるものだし、それは決して過去作と似たものを作ろうとしたわけじゃないんだ。言うとおりたしかに、「Nemesis」と「The World Is Yours」もスピードがあってツーバスの構成があって、壮大なメロディがあって、そこに自分のギターの雰囲気が重なっていく、という似た要素はあると思うね。ある意味、12年がかりでその要素がまた出てきたのかもしれないね。