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INTERVIEW

HYDE

2022.07.26UPDATE

HYDE

Interviewer:杉江 由紀

-それから、先ほど歌に集中すればするほどHYDEさんは憑依モード、もしくはイタコ的になっていくとのお話がありましたけれど、こちらのボックスには"20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU"の模様も収録されておりまして、あの平安神宮で歌われているHYDEさんの姿は、いい意味で"人間離れ"していて実に憑依的だと感じました。実際に、何かが"降りてきている"ような感覚はあられたのでしょうか。

あの場所はとても特別でしたね。MCもあえてなしにしていたし、なんだか自分がどこかからの遣い手というか、神が作った生命体のひとつとして発声して歌っていたような感じがすごくありました。要は、カラスが鳴くようなものですよ。

-カラスはカラスでも、それは神の遣いであるヤタガラスということですかね。

とはいえ、僕たち人間も神が作った生命体であることには変わらないはずですからね。そのことを認識しながら発声していくことで、僕は歌が神様に届けばいいなと願いながらあの場では歌っていました。

-精神的にはトランス状態に近かったとも言えますか?

そこまで大したものではないです(笑)。強いて言うなら、役者みたいな感覚に近かったような気がしますね。HYDEという人物がプロデュースした舞台の上に立ち、歌っている役者もまたHYDEなんだけど、いざ始まってしまうとそれこそ憑依に近いところもあって、そこに遣わされた"あのHYDE"になりきるような感じはありました。

-雅楽とのコラボレーションという点につきましては、HYDEさんからすると雅楽の持つ長所とはどのようなところであると感じられたのでしょうか。

神社での奉納行事で使われることの多い楽器なので、やはり日本の神様と近い楽器であるだけに神聖さというものをすごく感じました。西洋の楽器とはちょっとそこが違うかなと。また、雅楽って結構細かい決まりごとも多いんですよ。

-古くからあるものだけに、しきたりがあれこれとあるわけですね。

そうそう。神様と繋がっているものだから、こういうタイプの曲はやらないほうがいいとかね。精神世界と神様のことありきの音楽だなということは、つくづく感じました。

-あの平安神宮では、陰陽師のごとき衣装を纏われていたところも秀逸でした。あの貴重なお姿をこうして映像で堪能できるというだけでも、今作は永久保存版ですね。

衣装に関しては京都の呉服屋さんと相談をさせていただきまして、そのときに"安倍晴明とか陰陽師のような感じがファンの方々は嬉しいんじゃないでしょうか"ということから話が盛り上がり(笑)、色もこれまた神様の遣いといわれる白蛇を思わせる真っ白にしようということになったんです。

-「ZIPANG」では白い衣装にプロジェクション・マッピングにて白蛇が映し出される、という神秘的な演出もありましたね。

美しいだけではなくて、ちょっとどこか怖いみたいなところも醸し出したかったんですよ。そういったところも僕がHYDEをプロデュースしているわけです。

-プロデューサー HYDEから見ても、あの日の表現者 HYDEは人ならざるもの、異形なるものとして舞台上に存在していたと感じましたか?

僕が客席側から自分の姿を観ることはできないので、お客さんたちからどう見えていたかというのはあくまでも想像になってしまうんですけど、プロデューサーの視点としては"みんなからそう見えていたのであれば"良かったなと思います。あれがもしコスプレ・ショーになっちゃってたら、それはちょっと困りますからね。

-いえいえ、あれはショーどころか神事に限りなく近かったかと。

僕の場合、これまで"HALLOWEEN PARTY"(HYDE主宰のハロウィン・ライヴ・イベント)で仮装に関しては長年培ってきたものもあるんでね(笑)。どこまでクオリティを上げられるかというのはだいたいのイメージとしていつも肌で感じることができるんですけど、でもやっぱりあの平安神宮でのパフォーマンスはコスプレとはまったくの別モノでした。

-HYDEさんは美少女アニメ・キャラからハリウッド映画の主人公、歴史上の人物まで、次元も性別も時代も超越し何にでも化して歌うことができてしまう方ですけれど、それはご本人からしても楽しいことですか?

どうなんですかね? 僕の場合、なんかそこはたぶんもう宿命に近いですよ。別に楽しくてやっているというよりは、それも自分にとって職業のひとつでもあるというか。自分がやりたいかどうかはむしろ二の次で、プロデューサー目線で"やったほうがいいんじゃない"っていうことをやってるだけですね。プロデューサーが"やれ"って言うから半ば仕方ないなぁと思いながらやらされてる(苦笑)。

-あはは(笑)。さて。ここでまた映像作品についてのお話に戻らせていただきますが、平安神宮での公演は野外ということもありまして、「EVERGREEN」での夕暮れの光景が水彩画のようにきれいでした。いわゆるマジック・アワーが記録されておりますね。

あの平安神宮での公演は2日間あって、1日目は豪雨だったんですよ。もともと音を出していい時間が決まっているので、結果的に開演時間を遅らせるぶんの曲を削らなくてはいけなくなってしまったので、そのときはとても悔しい思いをしましたし、正直"もう二度とやりたくない"とも一時的には思ったんですけど、そのぶんあの2日目に晴れたときにはひとしおのものを感じました。でも、神社では歓迎の印として雨が降るという説があるらしいので、ああやって雨が降った初日と翌日に晴れた日で2日間がひとつのものとして完成したと考えるなら、あれはとてもドラマチックで美しいものになったなとも思うんですよね。このボックスではDISC2のほうに"Orchestra Concert Documentary"というのが入っていて、こちらにも非常に力を入れたんですよ。あの雨の日の平安神宮1日目のコンサートはそこに5曲ほど入っているんですけど、あれを観たときに"1日目は雨で良かったんだな"と思えるほどの作品になっております(笑)。

-完璧なプロモーション・トークをありがとうございます(笑)。かくして、DISC2"20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU"の本編は「MY FIRST LAST」にて締めくくられることになりますが、曲の最後でHYDEさんが跪きお辞儀をしてから大極殿へと帰って行かれる姿には、ある種の畏怖と感動を覚えました。

もともと「MY FIRST LAST」という曲は宗教的な考えもありながら作ったもので、魂は死んだあとにどうなるのか、宇宙に還るのではないか、というイメージが根底にあったので。個人的には生まれ変わりとかって信じてませんけど、でももとの状態に戻るっていう意味で宇宙に還ることはあるような気がするんです。そういう気持ちで作った曲を神社でああやって演奏して歌ったときには、自分でもあの景色の中に魂が吸い込まれるような感覚がありましたね。

-いずれにしても、今作は実際に現場で生のライヴを体験された方々にとってはもちろんのこと、あとから映像でその日の臨場感を追体験してみたいという方々にとっても、またとない作品に仕上がっていることは間違いありませんね。ただし、現在のHYDE さんは9月5日まで続くツアー"HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH"の最中でもいらっしゃいますので、ここでは2022年後半へと向けた活動ヴィジョンについても少しお言葉をいただけますと幸いです。

コロナが落ち着くのかどうかという問題はあるにせよ、ここから来年に向けてはロックのモードをさらに加速させていきたいと思ってます。

-たしか"20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021"のほうのMCでは"『ROENTGEN Ⅱ』を作ろうかな"という発言をされてもおりましたが......。

去年の段階ではそう言いましたけど、それに関しては今とりあえず棚の上に置いてます(笑)。急いで曲を作ることはしたくないし、今年はスタンディングでのライヴをすると決めたんで、そうなると今は無理をしてまで『ROENTGEN Ⅱ』を作っている場合じゃないなと思って。できれば来年はアメリカにも行きたいし、だったらそれに向けてのアルバムも作りたいしなぁ、ってなってくるわけです。『ROENTGEN Ⅱ』も作りたい気持ちはあるけど、でもそれは今じゃないっていうことですね(笑)。

-承知いたしました。それと、先日のcoldrainとの対バンとなったZepp Haneda(TOKYO)では"世間の飲食店ではすでに酒飲んで普通に騒いでます。ところが、俺たちのライヴはどうですか? なんか、忘れ去られてるんじゃないかなって思うんですよ。いったいいつになったら声出せるのかなぁ? なんて言いながらも、俺たちならここで自分たちのカオスな世界を作ることができるんじゃないの? 俺たちは自由なんだから"とHYDEさんはMCにて明言されていました。よくぞ言ってくださったと感じたのですが、あのお言葉は多くのアーティストや音楽ファンが"言いたくてもなかなか公には言えなかったこと"だと思いますので、本当に胸のすく思いで聞かせていただいた次第です。

この問題に関しては、日本の中にリーダーがいない感じはしますよね。様々なデータから計算をするなりして、居酒屋でこんな感じなんだったら我々エンターテイメントの世界でもこのくらいのことはできるんじゃないか、とか。感染者数がここまでこうなったら、次のステップに進めますよとか。そういう指針みたいなものを然るべき機関が明確に示してくれたら、みんなすごくやる気になれるのにね。でも、誰も何もそういうことは言わないでしょ? かと思うと、どこかでは勝手に始めちゃうところも出てきたりするし。いろんなことが不透明すぎますよね。

-先日のG1競馬中継では、野外+マスクありとはいえ普通に大歓声が上がっておりました。海外に関しては、東アジア以外の国はノーマスクでサッカーもフェスもほぼ以前通りに開催しているようです。いろいろな面での矛盾を感じますね。

日本人って、ちゃんと納得できることを言ってくれたらみんな律義に守る人たちなのにね。他ではバンバン自由にやってるのに、我々のいる"ここだけ"が誰も何も言ってくれないことで、どんどん歪んでいっちゃうんじゃないのかな。

-HYDEさんにはこれからもぜひ忌憚なきスタンスにての活動を続けていっていただきたい、と心より願っております。きっと、HYDEさんの示されるアーティストシップは激ロックに載る若い世代のバンドたちにも良き影響を与えてくださるはずですので。最後に、そうした後輩たちに向けてのエールをいただけますと嬉しいです。

いやもう、僕以外に素晴らしいバンドがいっぱいいるんで、みんなそれぞれ突き進めばいいと思いますけどね。けど、僕みたいにエンターテイメントするロック・バンドはわりと少ないんじゃないですか? 今年出ることになってるフェスも、完全に肉弾戦なバンドが多い印象なんですよ。それだけに、僕は自分の進んでいる路線が狙い目だと思ってやってますね。今んとこは独占市場という形で頑張ってます(笑)。