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INTERVIEW

FOO FIGHTERS

2021.02.05UPDATE

2021年02月号掲載

FOO FIGHTERS

Member:Dave Grohl(Vo/Gt)

Interviewer:山本 真由


だからこそ、このタイミングでアルバムを出したいと考えた。音楽は人を助けてくれるし、癒してくれるし、気晴らしにもなってくれるんだ


結成25周年を迎えたFOO FIGHTERSが、ニュー・アルバム『Medicine At Midnight』をリリース。今作は、幅広いロック・ファンが踊って楽しめて、パンデミックで疲弊した心に元気をくれる、まさに"真夜中の薬"そのものといった内容。とはいえ、今作のレコーディングは2019年にはすでに終了しており、タイトルもパンデミック以前に決まっていたものだという。今回のインタビューでは、ロック・スターとしても人間的にも多くのファンから敬愛されるフロントマン、Dave Grohlにこれまでとは違ったこの1年のバンドの新たな取り組みと、新作について詳しく語ってもらった。

-結成25周年おめでとうございます(※取材は2020年12月)。

ありがとう! とても奇妙な1年だったね。そのぶん26周年がいい年になる気がするよ。

-結成25周年という大切な年でしたが、COVID-19のパンデミックによって、バンドの活動はもちろん、生活にも大きな制限ができてしまったと思います。この1年、FOO FIGHTERSのメンバーはどのように過ごしていたのでしょうか?

今年の始まりはスタジオで迎えたんだ。アルバムの制作は2020年1月に終わった。ツアーに行く準備も万端で、4月にすべてが動き出すはずだったんだ。だけど言うまでもなく、3月頃すべてがシャットダウンしてしまった。そこで俺たちは、まずそれぞれ家に帰って家族のケアに専念した。みんながちゃんと無事で、健康でいられるようにね。そのあとは、たぶん他にも同じことをした人は多いと思うけど、パソコンの前や、キッチンでたくさんの時間を過ごしたり、子供たちとたくさん一緒に過ごして学校の勉強の手伝いをしたり。それから新しい料理を覚える他に、ただストップしてしまうのではなくて、クリエイティヴでいられる新しい方法を体得していったんだ。そんなわけで、とてもチャレンジングな時期ではあるけど、自分に試練を与えるのはいいことだと思う。適応することを覚えるのもね。常に心地よくいられるわけじゃないし、欲しいものがいつも必ず手に入るわけじゃないけど、何か困難な状況に直面したら適応しないといけないときっていうのがある。今年は本当に"適応の年"だったんじゃないかな。

-たしかに、こんな状況でもあなたは常にクリエイティヴでしたね。4月には、COLDPLAYのChris Martin(Vo)やEllie Gouldingなど、多くのビッグ・アーティストが参加したBBCのチャリティ企画"The Stay Home Live Lounge"に、DaveとTaylor(Hawkins/Dr)がサプライズ登場したことも話題となりました。ご自身では、なぜこの企画にFOO FIGHTERSの「Times Like These」(2002年リリースの4thアルバム『One By One』収録曲)が起用されたと考えていますか?

......どうしてあの曲があのプロジェクトに起用されたのか、正直俺にはわからないんだ。本当にびっくりしたけど、心から光栄に思ったよ。あの曲がWHOに寄付されるチャリティに起用されたなんてね。本当に重要な目的があったんだ。連絡を貰ったときは感極まってしまったよ。というのも、俺が曲を書くときは"この曲は他人にとってどんな意味を持つだろう"、"どんな存在の曲になるだろう"とかは必ずしも考えないんだ。ただそのときそのとき感じるままに書いているだけでね。あの歌詞、あの曲を、あんなにたくさんの素晴らしいアーティストがひとつになって歌ってくれたなんて、本当にスペシャルなひとときだったよ。時期的にも、ものすごく大変な1年の始まりだったからね......。しかも、みんなの歌を聴いてみたらみんな最高にうまいんだ。俺はヘタなのにさ(笑)。"Oh My God! みんなのほうがうまいじゃないか!"と思ったね。最高だったよ! そんな感じで、とても不思議な経験だったけど、心から光栄に感じているし、こういう依頼がきて自分は恵まれていると思っているよ。

-あの曲は2002年のアルバム『One By One』に収録されていましたよね。これまでも"あの曲に救われました"と言うファンは多かったのでは?

そうだね。そう言ってくれる人はときどきいるよ。「Best Of You」(2005年リリースの5thアルバム『In Your Honor』収録曲)とか、「Everlong」とか、「My Hero」(共に1997年リリースの2ndアルバム『The Colour And The Shape』収録曲)とかについてね。音楽の素晴らしいところのひとつは、2万人が同じ曲を歌っているとして、2万通りの解釈があるということなんだ。俺は俺の理由があってその曲を書いているけど、別の人はその曲を別の理由で歌っているかもしれない。いろんな人の心や魂がひとつの曲に繋がっていくのは素晴らしいことだよ。「Times Like These」は人生の瞬間のひとつひとつのありがたみについて、そしてまたやり直すことについて書いた曲だったんだ。あの曲をライヴで歌うとき、オーディエンスが一緒に歌ってくれるのを聴くのが大好きだね。心がみんなと繋がっている、理解してもらっているという実感を味わえるから。"自分の居場所があるなぁ"って思えるんだ。

-また、2020年は多くのアーティストがライヴ配信を行っていましたが、FOO FIGHTERSもロサンゼルスのライヴハウス、The Roxy Theatreからライヴ配信を行いましたね。スタジアムいっぱいのオーディエンスを前に演奏しているいつものライヴとは、だいぶ勝手が違ったとは思いますが、実際オンライン・ライヴを行ってみていかがでしたか?

本当に不思議な感触だったよ。俺たちが初めてライヴ配信をやったのは、"NIVA(National Independent Venue Association)"という団体に向けてのオンライン・チャリティ("Save Our Stages Fest")だったんだ。そのときは、Troubadour(※ハリウッドのクラブ)でやって、アコースティックだったから、大がかりなロック・ショーではなかった。とにかくおかしな感じで笑うしかなかったよ。あまりに不思議でさ(笑)。

-(笑)

自分たちだけしかいないパレードで行進しているような感じだった。変だったよ。"みんなどこにいるんだ? ファック!"という感じでね(笑)。でも、楽しかったよ。楽しめるとは思っていなかったけどね。何しろ俺がライヴで一番好きな部分、つまりオーディエンスが欠けていたわけだから。"オーディエンスがいないんだよ? 俺が一番好きなところなのに!?"ってね。でも、やってみたら後味がすごく良かったんだ。それで今度はRoxy(The Roxy Theatre)でやってみた。大がかりなロック・ショーだったよ。現実離れに感じることも不条理というか......大半のミュージシャンが一度は似たような夢を見たことがあると思うんだけど、いざステージに向かうぞと思ったらギター・ピックが見つからないんだ。あるいは靴紐が結べないとか、ギターの弦が切れたとか。それでやっとのことでステージに立ったら観客が誰もいない(笑)。

-(笑)

俺はそんな夢を1,000回は見たね(笑)。

-あなたみたいな方でもそんな夢を見ることがあるんですね。

もちろんさ! 同じ夢を何回も見るんだよ。同じ心配を何度もしているからだね。で、メンバーと一緒にステージに立つと、音がファッキンなくらいデカいんだ。照明も点いて、俺はシャウトしてる。でも、目の前には誰もいない。まるで悪夢だったよ(笑)!

-(笑)

でも俺にとって2020年で一番重要だったのは、みんなに少しの幸せ、あるいは苦しみからの解放感や喜びを届けることだったんだ。それがインターネット上でライヴをやったり、曲を録音してインスタにアップしたり、イギリスに住んでいる人とドラム・バトルをやったりすることを意味するなら......そういうことが人々に幸せや解放感を与えてくれると俺は信じている。今の俺にとってはそれが一番大切なことなんだ。だからこそ、このタイミングでアルバムを出したいと考えた。今人々は音楽を必要としているからね。音楽は人を助けてくれるし、癒してくれるし、気晴らしにもなってくれるんだ。インターネットというのは難しい場所だけど、いいこともある。インターネットを通じて幸せや喜びを拡散することができればやるべきだ。それが俺の責任というものさ。

-おかげでたくさんの人が楽しませてもらっていると思います。大きなプロジェクトもSNS上の小さなプロジェクトも。最近の"The Hanukkah Sessions(※Greg Kurstinと共に実施中のセッション・プロジェクト)" も楽しんでいますよ。

良かった。