INTERVIEW
JILUKA
2020.10.21UPDATE
Member:Ricko(Vo) Sena(Gt) Boogie(Ba) Zyean(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
-なるほど、そうだったのですね。今作は全体的にメッセージ性の強い楽曲が多くなっているとのことですが、作詞者であるSenaさんからRickoさんに対して、レコーディングの前に詳しい解説などが事前されるケースはあったのでしょうか?
Ricko:どれもあんまり言葉で説明されたことはないですけど、「The Purge」に関しては写真が1枚だけ送られてきました。
-写真!? それはどのようなものですか?
Sena:「The Purge」はずっとひとつの景色を思い描きながら作っていた曲だったので、そのイメージに最も近い写真を1枚送ったんです。言葉で伝えるよりも、そのほうが早い気がしたんですよ。
Ricko:これなんですけど、見ます(※スマホを取り出し、雲の合間から幾筋かの光が射す写真を見せる)?
-この写真にある光景は、"雲は ひび割れて/今 絶望が明けてゆく"という歌詞とそのまま重なりますね。
Ricko:そうそう、そうなんですよ。僕も同じことを思いました。
Sena:音と詞で、この写真の雰囲気を表現していったのが「The Purge」なんです。
-この「The Purge」を聴く方たちは、この写真を見るまでもなく、"少し厚めの雲の合間から希望を意味する幾筋かの光が射す光景"を思い浮かべることが、きっとできるはずです。そのくらい、この曲はテーマ性とサウンドが見事に合致していると感じます。
Ricko:僕としては、その雲をすべて切り裂いて取り払ってやる! という気持ちで歌っているんですよ。ただ、まだ今の段階では完全に晴れわたっている状態ではないのも事実で、そこは11月29日のVeats Shibuyaまで続く、初の全国ワンマン・ツアー"THE INTEGRATION"を通して、実現していきたいと思ってます。
-「The Purge」と言えば、この曲はSE的なインスト「-Prologos-」からの流れで始まるイントロにおいて、コテコテのベタな王道メタル・フレーズが響きわたるところも非常に素敵なんですよね。メタル好きな方ならば、間違いなく"キター!"と感じるような心憎いあのイントロで、まずは引き込まれてしまいます。
Sena:良かった、その言葉を待ってました。あれは、あえてのフレージングなんですよ。少なくとも、V系で今こういうことをやってるバンドはあんまりいないはずです。
-かと思えば、「Menace」は重さに全振りしたような音像が圧倒的ですしね。中でも、ここでのリズム隊の活躍ぶりは実に見事です。
Zyean:この曲は今回、一番頭を使った曲でした。ユニゾンのフレーズが多いのもあって、まずは覚えるのに時間がかかっちゃいましたね。
-"Menace"とは厄介者を表すそうですから、タイトル通りの曲だったわけですね(笑)。
Zyean:いやほんと、厄介でしたねぇ。でも、逆に今はそこを乗り越えて楽しくなってきた感じです。むしろ好きな曲になりました。
Boogie:「Menace」は全体的に暗くて重い雰囲気の強い曲ですし、普段のJILUKAはもっと細かい刻みで攻めていくことが多いんですけど、そうではなくてもっと大きいうねりみたいなものを生み出していく必要があったんですよ。ベーシストとしては、ローの音をどれだけ効果的に使っていけるかという点で結構、試行錯誤しました。弾き方の面でも指の角度を変えるとか、細かいことをいろいろやってます。どの曲も同じチューニングではあるんですけど、聴感上ではこの曲が最も低く聴こえるようにしていきました。
Sena:弾き方やニュアンスのつけ方という点では、僕も「Menace」ではこの曲ならではの工夫をしてます。
-歌う立場からすると、「Menace」はどのようなスタンスで歌っていく必要のある曲でしたか?
Ricko:意味合い的な面でいけば「Menace」は音も重いし歌詞でも絶望を描いているんですけど、それだけじゃなくてそこから逃れたいっていう気持ちも表したかったので、この曲では最後のところをハイトーンで歌ってますね。気持ち的には、この現状をぶっ壊したい! っていうのがすごく強かったです。
-それから、このアルバムの冒頭を飾っているのは、インストの「Xtopia」と実質的な1曲目にあたる「Edifice」ですが、今作をこの曲から始まる構成にした理由についてもぜひ教えてください。
Sena:「Edifice」は、作った段階から自分のテンションがすごく上がる曲だったんですよ。順序で言えば、曲の原形としては今回のアルバムに入っている曲たちの中で最後にできたもので、とにかくパンチ力があるし、第3期JILUKAとしての色も明確に出ている曲なので、今回のアルバムに入れるならここだろう! となりました。
-また、「Edifice」には間奏とエンディングの2ヶ所に、Senaさんによるギター・ソロも入っております。こちらも大切な聴きどころとなっておりますよね。
Sena:あのソロはどっちも自分としてはバッキング・ソロというか、ちょっとシーケンス・フレーズ的な立ち回りをしているところもあるんですけど、意識してJILUKAっぽいギター・フレーズを入れたところもありましたね。2ヶ所に入れたのは、そのほうがより効果的な印象が際立つからです。
-「Edifice」はドラム・パートもいい意味でトゥーマッチな味つけになっておりますが、Zyeanさんが最もこだわられたのはどんな点でした?
Zyean:この曲はですね、Senaから"好き放題にやっていいよ"ってあらかじめ言われてたんですよ。だから、自分としてはわりと攻めた感じで作っていったんですけど、"あれ? そんなもん!? もっとやっていいのに"って煽られちゃって(苦笑)。そこからは、とことんやりまくりました!
Sena:いや、別に煽ったわけじゃないんですよ。純粋に、もっとインパクトが欲しいなって思っただけなんで。遠慮とかしなくていいよっていう意味で言っただけです(笑)。
-この容赦ない感じのドラミングと、激烈なギター、底力を持ったヴォーカル。その3者に囲まれているとなると、「Edifice」ではBoogieさんも、独自のアプローチを探していくのが難しかったりはしませんでしたか?
Boogie:そうですねぇ、それなりに難しいところはありました。基本的にはドラムのキック、ギターの刻みに対してユニゾンしていきながらサビでは疾走感を醸し出していって、あとはコードの移り変わりのきれいな響きを、ベースで強調させていくことを特に重視してます。この曲に関しては"ベースで爪痕を残してやろう!"というよりも、トータルで聴いたときのまとまりや、荘厳で神聖な空気感を作ることを大切にしているんです。
-「Edifice」の歌詞については、SenaさんからRickoさんに対してなんらかのガイドはありました?
Ricko:一応、簡単にフランスのジャンヌ・ダルクがモチーフになってるっていう話くらいは聞きました。
-「Edifice」もまた、コロナ禍を軸とした現在の世界について描かれた歌詞となっておりますが、そこにジャンヌ・ダルクを登場させた理由はなんだったのですか?
Sena:今回のアルバムでは、"自分から動かなければ何も変わらないよ"ということを歌っているのが「Ignite」で、"その時々の状況に応じて適応していくことが必要だよ"と歌っているのが「Flux」なんですね。そして、「Edifice」で言いたかったのは"本当に怖いのってウイルスとかじゃなくて、結局は人間じゃん"っていうことなんですよ。そのことを歴史と重ねたときに出てきたのが、ジャンヌ・ダルクの存在だったんです。"Edifice"という曲タイトルは直訳すると建造物って意味で、これは社会自体が、人間が生み出したひとつの建造物であるっていうところで付けたものになります。
-なおかつ、先ほども「The Purge」についてはお話をうかがいましたが、この曲で肝になっているのは混迷の世を照らす光の存在にほかなりません。ただそれでいて、曲タイトルは直訳すると粛清という言葉を意味するものとなりますよね。ここに込めた思いについても、少し解説をしていただけると嬉しいです。
Sena:僕が今回のアルバムで最終的に示したかったのは、あくまでも希望なんですよ。アーティストとしても人間としても、この現状をただ受け入れてしまうつもりはないし、ここで僕が粛清したいのはわかりやすく言えば世の中の悪い流れについてなんです。それをPurge していきましょうという歌なんです。もっと言うと、語源に近い"清めよう"というニュアンスのほうがより近いかもしれません。
-つまり、そうした悪い流れを断った先にはUtopia ともDystopia とも違う、新たなる世界="Xtopia"が開けていくことになるということなのでしょうね。コロナ禍において、エンターテイメント全般が世の中から不要不急なもの扱いされてしまった世界線は、エンターテイメントを愛する者たちにとってDystopia でしかありませんでしたけれど。新しい世界を生み出していくために動き出したJILUKAの存在は、なんとも尊いです。
Ricko:僕なんかは、そもそもDystopiaを感じることもなかったですけどね。まぁ、今回はたまたまウイルスが原因だったっていうだけで、震災だったり、台風だったり、自然災害だったりでもエンターテイメントが打撃を受けることはあるじゃないですか。いずれにしても、どんな状況になろうと、前に進む人がいないと始まらないっていうだけの話なんじゃないかと思ってます。
-さすがです。11月29日のVeats Shibuya公演まで続く初の全国ワンマン・ツアー"THE INTEGRATION"でも、その雄姿を感じさせてください。
Sena:一時的には生配信の企画なんかもやりましたけど、やっぱり現場でファンのみんなと空気が揺らす感じの楽しさを、バンドとしてずっと伝えてきた僕らにとっては、細かいガイドラインがあったとしても、それを遵守しつつ実際にライヴができるなら、それに越したことはないという思いが強いですからね。そして、すでにツアーは始まってますけど、ぶっちゃけ手応えはかなりいいです。アルバムを出してワンマンで回るということ自体も初めてのことですし、いろんな面で新鮮さもあって楽しいんですよ。
Zyean:もう、楽しいという言葉しか見つからないくらいほんとに楽しくて(笑)。もちろん、安全面は徹底して対策をしてますし。今はまだ社会情勢を見ながら徐々に再開されている状況だと思うので、来る側の人たちも不安を感じてるかもしれないですけど、感染防止のガイドラインを守りながらJILUKAがライヴをやっていくことで、ライヴ本来の楽しさというものを、少しでも取り戻してもらえればいいなと思いながら日々やってます。
Boogie:ただ、それでも家族のことを思うと今はまだ来られないとか、会社から止められているとかっていうような人たちもいるとは思うんですよ。僕らとしては、そういう人たちがいつまた来てくれてもいいように、これからもJILUKAとしてみんなの戻ってこられる場所を常に作り続けていきますので、安心してください。
Ricko:まぁ、僕はそんなみんなの居場所を守っていく守護神なんでね(笑)。まだ空に残ってる雲たちも、ここから僕が振り払っていきますよ。音楽は希望になります。大丈夫です!