INTERVIEW
Cazqui's Brutal Orchestra
2019.12.09UPDATE
2019年12月号掲載
Cazqui(ex-NOCTURNAL BLOODLUST/猫曼珠)によるエクストリーム・プロジェクト、Cazqui's Brutal Orchestraがついに始動する。会場限定シングル『OSWALD』がサブスク配信されることになり、今回はこのプロジェクトの成り立ちから、2曲の収録楽曲に込めた思いを赤裸々に語ってもらった。「The rupture of a blood vessel (feat. Velladon)」は作編曲家/トラックメーカーのVelladonが担当、表題曲にはDEXCOREの架神-kagami-をヴォーカリストに迎え、名刺代わりの強烈なサウンドが詰まっている。Cazquiへの単独取材を行ったが、途中で電話にてVelladon、架神からもコメントを貰うことができた。
Cazqui's Brutal Orchestra:Cazqui(Gt)
DEXCORE:架神-kagami-(Vo)
Velladon
インタビュアー:荒金 良介
-Cazquiさんは今年に入って猫曼珠を始めましたけど、今回はソロ・プロジェクトという位置づけでいいんですか?
Cazqui:そうですね。このプロジェクトの初ライヴが11月24日に池袋EDGEであり、それはJILUKA主催のイベント("MAD PIT TOUR 2019")で猫曼珠としてオファーを受けてたんですよ。でもメンバーのスケジュールの問題で出演できなくて、"Cazquiさんだけでも出演してもらえないか?"と言われて。それがきっかけなんです。もともと僕はソロ・プロジェクトにあまり興味はなくて(苦笑)基本的に、他のメンバーの得意分野、人柄、個性から逆算して楽曲を作ることに楽しさを感じるので。でもひとりで出ることになったので、ならこの日だけのバンドをやろうと。
-きっかけはそういうことだったんですね。
Cazqui:そこで、イベントの出演者の中にメンバーがいたら話は早く進むかなと思い、DEXCOREの架神君に声をかけました。以前から彼は素晴らしいヴォーカルだと感じていて、もしも仮に自分がイチからデスコア/メタルコアを基盤にしたバンドを作るなら、真っ先に彼に声を掛けているんだろうなと。そうやっていろいろ進めているうちに、本気でこのプロジェクトをやってみようと思い始めたんです。今なら、より過去の作風を昇華できるかもしれない、と。
-それが「OSWALD」のことですね。
Cazqui:そうです。なりゆきで始めたプロジェクトだけど、ちょっとした使命感も出てきていて。これは本気でやったらすごいものができるんじゃないかと。あと、一応ソロなので、他のメンバーとは本来クライアントと演奏者、というようなドライな関係のはずなんですが、その中でも温かみや優しさを感じてウルっときます。"Cazquiさん、気軽に頼ってくださいよ!"みたいに言ってくれたりとか。みんなプロジェクトを自分ごとのように大事にしてくれて、すごくありがたいなと思います。
-最初の音楽的ヴィジョンというと?
Cazqui:僕が作ってきた音楽のパブリック・イメージそのものに加えて、猫曼珠ならアーバンな要素とか。実は前バンド時代から洒落っ気のある和音を重視した曲が多かったので、それらをうまく共存させて、物語の続きを作っていこうと思ってます。
-Cazquiさんの音楽ルーツはどのへんになるんですか?
Cazqui:根本的な部分で言えば、コーラスのハーモニーが重厚な産業ロックや、ハード・ロックですね。JOURNEYとかすごく好きです。あとシューゲイザーと、映画やアニメの劇伴。作曲をするときは、それらとモダン・ハードコア/エクストリーム・ミュージックをクロスオーバーさせるイメージです。
-ちなみに最近はどんな音楽を聴いてます?
Cazqui:ARCH ECHOというバンドが好きで、今回はそういう空気感も出したくて。あとFALLUJAHなんかも好きです。ジェントではない、プログレ・メタルの括りにあるバンドが好きなのかもしれないですね。アングラ且つキャッチーなものが好きなんですよ。「OSWALD」はそういう僕の趣味と、プロジェクトに求められるであろう要素が共存できてると思います。それは架神君の声質、音域も大きいかなと。
-ちなみに好きなギタリストはいます?
Cazqui:ロック・スターとして、Yngwie Malmsteenは大好きですね。ギター・プレイに限って言うとAndy Timmonsですかね。
-元DANGER DANGERですね! たしかにあのバンドもキャッチーです(笑)。
Cazqui:そうですねぇ。Andy Timmonsはなんでもできるギタリストですよね。
-音楽の好みはCazquiさんよりも上の世代ですよね?
Cazqui:それもあって、最近はよく"独特なギター"と言ってもらえるのかなと。
-なるほど。メタル以外の音楽だと、どのへんが好みなんですか?
Cazqui:僕はCOALTAR OF THE DEEPERSが大好きで。かつてNARASAKIさんのクリーン・ヴォイスとデス・ヴォイスのギャップにやられて、それはこのプロジェクトの音楽性にもよく出てると思います。そこからシューゲイザーにもハマって、MY BLOODY VALENTINEのフォロワーとされているバンドはだいたい聴いてます。
-今回は自分のルーツ音楽と向き合ったところもあります?
Cazqui:Crossfaith、Fear, and Loathing in Las Vegasあたりが認知されてからは、メタルコアがメジャーなシーンでも求められるようになりましたけど、10年前は日本でデスコアなんて誰も求めてなかったし、エクストリームなメタル・シーンでは蔑視対象でもありました。つまり僕は、前のバンドのときから、ずっと自分のためだけに音楽をやってきた人間なんです。ですが今回、10年の時を経て、自分の音楽を長年信じ続けてくれたファンのために作りました。
-そういうふうに心変わりした理由は?
Cazqui:まず、この1年で自分たちが信じていたものが揺らいでしまった、終わってしまったと感じているファンも多いんじゃないかと感じていたんですね。自分がそのコンテンツの根幹を担い、誰よりも愛情を注いでいた自負はあるんですけど、ファンの方から見える自分の表面的な立ち位置からはどうしても、何を伝えようと語弊が生まれると思います。ですので、こうして「OSWALD」のような楽曲を出すことで気持ちに寄り添えたらなと。
-このタイミングで前のバンドを意識したのはなぜですか?
Cazqui:そもそも自分は過去にやってきた音楽そのもの、かつて掲げてきた理念は、今も間違ってないと思ってるんですよね。激ロックにおける過去インタビューをご覧になっていただければその本気度がよくわかると思います。だからこそ、その頃の自分にも、みんなにも嘘をつきたくないので、昨年ひとつの区切りを打ったつもりだったんです。ただその結果、置いてけぼりにされたような気持ちになったり、肩身狭い思いをしてる人がいる現状なのだとしたら、自分がその責任を取ろうと。っていうか、もう正直、喜んでほしかっただけです。本来、バンドや音楽は人を楽しませるものであるべきですし、ミュージシャンとして明るい話題を提供していたいですよね。誰もが昔が良かったとため息をついているより、みんなが明日に期待を抱いて生きる世界のほうが、全方面にいい結果をもたらすと思うので。自分自身、そういう気持ちで生きています。
-エゴで作っていた頃とリスナーを意識した曲作りではまたアプローチに変化はありました?
Cazqui:昔はこの展開ならブレイクダウンするだろってところで、あえてそれをやらなかったりしましたね。でも、水戸黄門が印籠を出さなかったら、超ガッカリっていうか、むしろそいつ黄門様じゃないかもしれないじゃないですか。スパイダーマンが糸を出さなかったら、アクションも面白くないだろうし。結局、音楽以外のコンテンツに置き換えれば自分もリスナーの方々と同じ視点ですから、そういうお約束も当たり前のように受け入れられるんですよね。そういうところを俯瞰して作れるようになりました。冒頭からブラスト・ビートを入れるとか、近年はやってなかったですからね。音源のドラムはブラスト・ビートの名手、Shuhei(Imperial Circus Dead Decadence/MALIKLIYA)です。
-今回はエクストリームに振り切ってしまおうと?
Cazqui:そうですね。猫曼珠はヘヴィ・メタルの輝かしいキャリアの人たちが揃っているから、メタルっぽいことをやってもつまらないかなと思いますし、自分含むメンバー4人の意向もあって、先入観に対する裏切りの要素が圧倒的に強いです。ソロはその逆です。近年、ジャケ、歌詞、アートワークのトータリティをここまで突き詰められたことはなかったので、自分の中では満足してます。
-今作でCazquiさんのカラーを前面に出せたと。「The rupture of a blood vessel (feat. Velladon)」、「OSWALD」で組曲的な意味合いもあるんですか?
Cazqui:そうですね。これはずっと好きな手法で。ジャーマン・メタルのフル・アルバム冒頭だとか、X JAPANの有名曲なんかもその最たる例ですよね。静寂からの爆発感がいい。映画も音楽もダイナミクスが大事だと思うんです。例えばホラー映画も、ずっと怖いシーンが続くわけじゃないですよね。日常が壊れる瞬間が最も怖いんです。「The rupture of a blood vessel (feat. Velladon)」は作ってくれたVelladonさんに電話してみます。