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INTERVIEW

MUCC

2019.02.12UPDATE

2019年02月号掲載

MUCC

Member:逹瑯(Vo) ミヤ(Gt)

Interviewer:杉江 由紀

ここまで"いつもと違うね"と言われるなんて、自分でも予想してなかった


-コンセプトが明確だったことも大きいのではないかと思われますが、今作『壊れたピアノとリビングデッド』は、アルバムの音像そのものがトータリティを持っている点も大きな特徴であるように感じます。端的に言えば奥行きや深さを意図的に醸し出しているように聴こえるんですよね。今回はエンジニアリングをミヤさんがすべて手掛けられたそうですし、サウンドの在り方についてどのように考えていらしたのかもぜひ教えてください。

ミヤ:俺が作曲からミックスまですべてをやったことで違いが出たというのは事実でしょうね。ここまでいろんな人から"いつもと違うね"と言われるなんて、自分でも予想してなかったです。それこそ奥行き感についてとかもすごく言われるんですよ。自分はミュージシャンなんで、プロのエンジニアが作る音とは違うということなんだと思いますけど、そこがいい方向に作用したんですかね。

-エンジニアリングには多くの知識や技術も必要だとされていますが、ミヤさんはどこでそれを身につけられたのでしょうか?

ミヤ:俺からすると、エンジニアリングも楽器を演奏するのと同じ感覚でしたよ。頭の中にある"こういうイメージにしたい"という考えに実際の音を近づけていくだけというか。場合によっては、普通のエンジニアだったらやらないようなタブーなことを、タブーと思わずにやっちゃうようなこともありましたけどね(笑)。

-本職ではない者ならではの怖い物知らずなことができてしまったと(笑)。

ミヤ:そこは知識どうこう、技術どうこうよりも、自分の念がより深く入ったところでしょうね。

-そもそも、今回ミヤさんがエンジニアリングまで手掛けることになった理由はなんだったのでしょうか?

ミヤ:最初はミニ・アルバムのサイズにする予定だったのが、途中から話が変わっていったのはいいけど、予算的にはそのままミニ・アルバムとして進行したいたからです。足りなくなった予算をどこで捻出するかというところからですよ。ギタリストとしての仕事以外のことも俺がやることで、フル・アルバムを作れるようにしたっていうことですね。あとはもちろん、前から興味があったからというのもあります。機会さえあれば挑戦したいってずっと思ってたんです。

-バジェット的な部分でもメリットがあったうえに、新たにクリエイターとしての経験値を積めたのであれば、これはもう完全に一石二鳥ですね。

ミヤ:良かったですよ。作業量的なことで言えば単純に疲れるとかはあるんですけど、エンジニアリングは頭を使う必要があったせいか、いつもより回転数が高くなって覚醒してる感じでした。瞬時の判断力もすごくて、紙にメモとかしなくても脳内ですべて答えが出て、それが音としてOKテイクになるみたいな。プロデューサーとエンジニアとミュージシャンとしての脳を同時に動かすことで、活性化してたんだと思う。

-素晴らしいですね。

ミヤ:自分でもそんなことができるとは思ってなかったですよ。でも、やってみたらやれました。そのことに気づけたのも良かった。

-逹瑯さんからすると、ミヤさんがエンジニアリングを担ったことで、録った歌の質感に対する変化を感じることはありました?

逹瑯:歌録りもミヤがやるということは、こういう音で録って、それをどう広げたいかっていうところまで思い描いているだろうなとこっちもなんとなく予測できたので、普段よりも効率が良くなってた気はするかな。今までと比べたら、必要なポイントだけを押さえるっていうことができてたんじゃないですかね。

-と同時に、全体的な音像が変化していることで、逹瑯さんの歌も今作においてはこれまでにない聴こえ方をしてきている印象です。

ミヤ:それは違うと思いますよ。

逹瑯:俺自身は時間がないなかでかなりいっぱいいっぱいでやってたから、歌の聴こえ方がどうとかを気にしてるどころじゃなかったですけど(笑)。

ミヤ:それに、歌に関してはデモ録りをしたときのテイクをそのまま生かしてるものもわりとありますしね。そうなってくると、変化は感じようがなかったりしますから。

-なるほど。

ミヤ:デモの歌って、やっぱりいい具合に力が抜けてるときも多いんですよ。その感じが曲とハマっていい感じに聴こえることが意外とあるので、今回のアルバムではそれをそのまま収録したり、部分的に使ったりしてるケースがいくつかあるんですよね。「アイリス」なんかはドラムもデモのテイクをそのまま入れてます。

-例えば「ヴァンパイア」の歌に対するエコーのかかり方は、なかなかに神がかって聴こえました。

ミヤ:でも今回はそこまで極端な音処理はしてないんですよ。というよりも、録る段階で音をある程度は決め込んでおかないと、あとで変に時間がかかっちゃうのはわかっていたので、あれは歌録りの段階からだいたいああいう雰囲気にはなってたと思います。

-「ヴァンパイア」では途中ドラムの音を左右にパン振りする場面がありますけれど、個人的にはあれがまた非常にいいスパイスになっていると感じましたよ。

ミヤ:あれは単なる俺の遊びです(笑)。いつもみたいにエンジニアに任せてたらやってなかったでしょうね。自分でやるとそういう細かいギミックも入れられるんですよ。今は基本的にイヤフォンやヘッドフォンで音楽を聴く人が多いと思うし、ああいう細かい遊びがある音は俺自身が好きなんです。人からしたら"なんでそんなところにまでこだわるの?"っていうことでも、自分でやっちゃえばちゃちゃっとやれちゃうのはいいなと今回はホント思いました。

-ミヤさんがオーバーワークになってしまう以外はつくづくいいことづくめですね。

ミヤ:きっと本来はそうあるべきなんですよ。自分たちで作って自分たちでミックスしてっていうのが、これからは普通のことになっていくんじゃないですかね。逆にスタジオを押さえてエンジニアを呼んでっていうやり方は、今後もう時代遅れになっていくような気がする。俺としては、そのいいとこ取りをしたいと思ってますね。