INTERVIEW
Octaviagrace
2018.10.10UPDATE
2018年10月号掲載
Member:実稀(Vo) Youske(Ba)
Interviewer:吉羽 さおり
実稀の力強いハイトーンが冴えるドラマ性の高いメロディアスな歌と、メタルを軸に様々な要素がミックスされた、構築的で密度の高いアンサンブルで独自の世界観を生み出すOctaviagrace。昨年12月、バンドの特色のひとつを担っていたキーボディストのReanneが脱退し鍵盤なしの4人編成となったが、活動を止めることなく最新EP『new eclosion』を作り上げた。今作でもReanneが鍵盤アレンジを手掛けたり作曲をしたりした曲もあるが、基本的には4人を中心にギターやベースといった弦楽器をよりフィーチャーした、ソリッドで新たな感触によるドラマチックなサウンドを生み出している。今作について、バンドとしてどう向き合っていったのか、実稀とベーシスト Youskeに話を訊いた。
-年末にReanne(Key)さんが脱退したところから、ノンストップで来た感じですか?
Youske:活動を止めるということはしてないですね。彼が抜けましたけど、今作『new eclosion』でも手伝ってくれたりとか、1曲「Breaking dawn」という曲を作ってもらったりもしているので。関係が途絶えているわけではないんです。それでそのまま突っ走ってきましたね。
-ライヴでの鍵盤、キーボードについては誰かにお願いしているんですか?
Youske:ライヴは同期演奏を流していますね。
-では完全に4人での活動になっているんですね。
Youske:ひとまずは4人でやってみようかなというのが、この1作品ではありますね。
-今作はどんなふうに進んでいった感じですか?
Youske:毎年これくらいの時期にリリースできていたので、今年もそのペースからは外れないようにしようというのがまずありました。昨年末くらいから曲作りを始めていきましたね。作品としてのイメージは......メンバー脱退というところが、今までのオクタヴィア(Octaviagrace)をご存じの方からすると大きな出来事なので。初めて聴く方にどう伝わるのかわからないですけども、今まで聴いてくださった方にとっては、4人になったからこそ出せる何かがあるというのをアピールしていこうかなとは考えましたね。作品を通してでは、1stフル・アルバム『Outward Resonance』(2016年リリース)がいろんなものをやりましょうということで、色とりどりな作品で、前作のEP『Polyhedra』(2017年リリース)がライヴ盤じゃないですけど、ひとつのライヴのセットリストがテーマだったんですけど。今作はどちらかというと、全力投球でぶつけまくって。またひと皮剥けた感を出していきたいというのはぼんやりとしたテーマではありました。
-そういったテーマがあってからの曲作りという感じだったんですね。
Youske:そこから作っていった曲もありましたね。例えば大きなところでは、静かになるパートやイントロとか、今までシンセが担当した部分を、今回の1曲目の「oddeye」とかもそうですけど、ベースのタッピングでムーディに始まるとか。最後の「Tales of us」のラスサビの前は、今までならシンセでいきがちだったバッキングをベースでやったりとか。僕の個人のテーマでもあった部分があるんですけど、そういうやり方を今回は採用していますね。
-アルバム・タイトル"new eclosion"は"羽化する"という意味でもあり、作品にはぴったりですね。
実稀:今回4人になったので、再スタートという意味合いも含めて、新しくもう1回羽ばたこうという意味を込めて。そういった作品にもなりましたね。
-一方で、より4人でという意識も強いなかで、「sorrow joker」などは鍵盤でもオルガンだったりシンセだったりいろんな音色を使っていますね。こういう曲もやはり面白いです。
Youske:これは実稀が作った曲なんですけど、Reanne君がシンセのアレンジを手伝ってくれていたのもありつつ、もともと実稀にあったイメージもオルガンというのがあったようで。
実稀:鍵盤自体はデモからはそんなに大きく変わっていないですね。ひとりではここまでしかできないというところを、Reanneさんがキーボディストとしてのノウハウで広げてくれている感じなので。
-実稀さんはデモをガッチリと作り込むんですか?
実稀:私は弾ける楽器が鍵盤しかないから、ピアノ・サウンドがベースのデモになっちゃうんですけど、ある程度は完成形と大きく違わないようにと、今回は特に細かく他の楽器も入れた方ではあるかなと思います(笑)。初期のころはベースとか何も入れてなかったですけどね。ピアノとメロディと簡単なドラムを入れて、あとは自由にという感じで任せてました。
Youske:今回、デモのベース・ラインがすごく良かったんですよね(笑)。めちゃめちゃ動いてるなと思って。曲が曲なだけに、同じ音をルートで弾き続けるんじゃなくて、ジャジーに動き回ってたんです。曲としてもそれが正解だと思うしね。なので今回は作曲者のイメージどおりに、フレーズをなるべくなぞることはしました。いろんなニュアンスとか、プラスアルファのフレーズもありますけど、結構俺にしては忠実に。
実稀:どうせ変えてくるだろうと思ったら、そのまんまで来たから珍しいパターンかな(笑)。
-今回なぜそういった作り込んだデモにしたんですか?
実稀:一応、作品を出すにつれて、もっとちゃんとしたものを出していこうっていう積み重ねもあったんですけど。あとは今回、ちゃんとデモ選考をしようというのもあったので。なるべく曲のイメージがつきやすい、完成形が見える形で出そうという意識はありましたね。弦が弾けない勢としては難しいんですけど(笑)。なるべくギター・サウンドも入れた状態で出したいなと。ギターもなぞって弾いてくれているところがまぁまぁ多かったので。完成形が、デモ段階から大変身しているということはなかったかなと思います。