INTERVIEW
HEAD PHONES PRESIDENT
2017.05.16UPDATE
2017年05月号掲載
Member:ANZA(Vo) HIRO(Gt) NARUMI(Ba) BATCH(Dr)
Interviewer:荒金 良介
HEAD PHONES PRESIDENTのニュー・アルバム『Realize』は、バンド最大の危機に直面しながら作り上げた作品だ。昨年は彼らの楽曲を舞台化したロック・ミュージカル・エンターテイメント"STAND IN THE WORLD"という新たなチャレンジを試みる一方で、台湾のフェスにてBATCHが複雑骨折し、ライヴ活動を中止せざるを得ない状況に追い込まれた。その中でバンドは原点を見つめ直し、心機一転で楽曲制作に臨むことになったという。ANZAのヴォーカルはより生々しく、楽器陣はシンプル且つストレートなヘヴィネスを獲得した今作について、メンバー4人に話を訊いた。
-まずは前作(2015年リリースのアルバム『alteration』)以降の状況から教えてもらえますか?
ANZA:前作は企画盤で、本当はフル・アルバムを出す予定だったけど、一度自分たちの過去を集約しようと。それから2016年にロック・ミュージカルをやったんですよね。で、そのあとの台湾公演でBATCHが骨折して、当初は去年の11月には復帰できるんじゃないかと思っていたけど......複雑骨折のうえに神経までやってしまって、年内も無理だなと。発表していたライヴはアコースティックでやったり、ドラムはサポートで2本ほどやったけど、サポートで自分たちの世界観を作る自信がなかったというのが本音です。
-なるほど。
ANZA:BATCHを含む4人じゃないと世界観を見せられないなと。去年の7月からきちんとしたライヴはやってなくて。17年間バンドをやってきて、活動が止まったのは初めてですからね。実は解散も考えました。
-えっ、解散まで!?
ANZA:はい。ライヴしない人生は何の意味があるんだろって。正直、BATCHもいつ復帰ができるかわからない状態で、本人が一番つらかったと思うけど、バンドのモチベーションもすごく下がってしまったんです。曲作りすればいいのに、そのアイディアもひとつも浮かばず......私はメンバーと話をするのも一時期嫌になっちゃって。私はネガティヴ要素満載で、NARUMIはわりとポジティヴでやろうぜという感覚の持ち主だけど、そのNARUMIでさえも"無理かもね"と言ってましたからね。HIROだけはその状況でもマイペースに曲を作ってて、今回MVになった「Alive」(Track.1)を聴いたときに、まだやりたいと思ったんですよ。あの曲が生まれなかったら、こうして取材していただくこともなかったですね。
初めてバンドを組んだときの、あの喜びを感じました
-「Alive」には曲名どおりの意味があったんですね。NARUMIさんも心が折れてしまったんですか?
NARUMI:そうですね。ANZAがやりたくないと言うんなら、やらなきゃいいんじゃないって。楽しくやれなかったら意味がないし、残りの人生の無駄使いになるから。でもANZAがまたやりたいと言い出したので......やろうかって(笑)。それからは早かったです。
ANZA:2週間で曲の骨組みはできましたからね。いままでの中で一番早かったです。ある意味、BATCHの件があったから、見つめ直せたんですよ。危機的状況を経験することで、初めて見えてくるものがありました。自分たちが作る音楽に引っ張られた感覚は初めてですね。
HIRO:今回はNARUMIもソングライティングに積極的に参加してくれたから。
-改めて見つめ直したものとは?
ANZA:初心に戻れたんですよ。曲を作れる、ライヴができる、CDを出せるかもしれない。初めてバンドを組んだときの、あの喜びみたいなものを17年後に感じました。
-それはリセットされた感覚ですか?
ANZA:気持ち的にはそうですね。地獄から天国に戻りました。ただ、いままで新曲はリリース前にライヴでやっていたけど、今回はいきなり音源をリリースするんですよ。それは初めてですからね。17年間やってきたけど、まだまだやってないことがあるんだなと。リハでも曲はまだ合わせてないんですよ。これからドラムのリハビリが始まるので、スタジオに入るんですけど、すごくドキドキしてます。どうなるんだろって。
-BATCHさんは当事者になるわけですが、どんな心境でした?
BATCH:自分が本当に戻れるかどうか不安で......。骨が粉砕して、病院の先生からも"こんなのは久しぶりに見た"と言われましたからね。少しずつ動くようになってるんですけど、足を心臓より下に下げられない状態で、不安はかなりありました。このバンドでやれるのかなって......でも絶対に戻りたい気持ちがあったから。