INTERVIEW
MUCC
2017.01.23UPDATE
2017年01月号掲載
Member:逹瑯(Vo) ミヤ(Gt)
Interviewer:杉江 由紀
-不穏と言えば、モダン且つヘヴィな「EMP」(Track.7)も、音も詞もかなり不穏な内容ですが。こちらは何の略として解釈すればよろしいのでしょう?
逹瑯:エンプティの略です。"EMP"でネットで調べると、核兵器とかにも使われる"電磁パルス"っていうおっかない言葉で出てくるんですよ(苦笑)。本来はそこを特に意識していたわけではなくて、不穏なことや、怖い出来事がいっぱい世の中では起きてるけど、表面的には空っぽで誰もが見て見ぬふりをしているよね、みたいなことを詞では描いてます。
ミヤ:「EMP」は久しぶりにKORNみたいな16ビートの曲が欲しいなと思って作った曲で、今回のアルバムではこれに限らず激しい曲のビート感は全体的に90年代に戻したかったんですよ。90年代のニューメタルやラップ・メタルみたいなアプローチで、めちゃくちゃラウドでヘヴィなんだけどビート感がわかってないと作れないタイプの曲、というのを今回はMUCCなりの形でできたと思います。
-そうした激烈なヘヴィ・チューンがあるかと思えば、叙情的なバラード「勿忘草」ではひたすらセンチメンタルな響きが生み出されているあたりも、実にMUCCらしいところです。それでいて、アレンジの面では今までのMUCCにはなかった斬新さも感じました。
逹瑯:それはですね、このアルバムの中で、Kenさんのエッセンスが一番強いのが「勿忘草」だからなんだと思いますよ。
ミヤ:Kenさんからは、むしろ"ここまで俺っぽさは入れなくてもいいよ"って言われたんですけど、そこは要素として入れたかったところだったんです。"ギター・ソロはラルクの「虹」みたいな雰囲気にしていいですか"って俺から言いましたから(笑)。サビのコーラスにセブンスの響きを入れているところも、今までにはなかったアプローチですね。
-「勿忘草」は、歌詞も美しくまとめられていますね。
逹瑯:MUCCでは、これまでも歌詞に花言葉を使うことって多かったんですよ。"私を忘れないで"って言いたいのに、口では言わないけど本当はわかってほしいみたいな......そういうウザさをここで表現したかったっていうね(笑)。そういうのって、"素直に言いなさいよ!"って思いません?
-難しいところですが、日本人的なワビサビ、情緒があるからこその奥ゆかしさというのはあると思いますよ。
逹瑯:だからこそ、"言いたいことがあるならちゃんと言いなさい"というじれったさを、この詞では奥ゆかしい言葉を使って表しているわけです。メロディとかアレンジもわりとねちっこいので、そこはうまく噛み合ったと思いますね。
-また、曲の美しさという点では「シリウス」(Track.12)も負けてはいません。シングル曲になっていてもおかしくないほどの輝きを持ったキラー・チューンで、ある意味アルバム曲にしておくのはもったいないくらいかと。
ミヤ:そうですか? なんか、そういうふうに言われることはわりと多いんですよ。まぁ、実際のところ2年くらい前に作ったときはシングル用に作った曲でしたし。一応、これはそのころの原曲とあまり変わらない形でここに入れました。方向性的には、これはLUNA SEAをイメージしながら作っていたところもありましたね。20周年っていう部分で、当時の自分たちが聴いて影響を受けた音楽に対するオマージュがここにも入っているんです。
-アーティストである以前に、まずは音楽ファンであるというMUCCのそうした姿勢は、とても素敵だと思います。
ミヤ:あと、この曲は2016年のクリスマス時期に限定配信した「ブリリアント ワールド」から、詞の面では繋がる曲になってます。だいぶ時間差はあったんですけど、これはあの曲の後日談なんです。
-ディープな夢烏(ムッカー/※MUCCファンの名称)にとって、それは貴重な情報ですね。なお、今作はそんな「シリウス」から先ほども話題に出ていた「孵化」、そして「ハイデ」へと続いて感動的に締めくくられます。結果として、まるで隙のない名盤に仕上がったのではないでしょうか。MUCCの20周年がここから幕開けていくのかと思うと、胸が熱くなってきます。
ミヤ:このアルバムは作っていた期間が長くて、作っては間を置き、作っては間を置き、っていうことが続いていたのもあって、まだ自分ではあんまり客観的に作品として聴くことはできていないんですよ。でも、今の段階でもこれまでよりは洗練したものを作れたのかな、という手応えはなんとなくありますね。
-さて、2月からはこのアルバムを携えての日本武道館公演2デイズを含むツアー"MUCC 20TH ANNIVERSARY 97-17 羽化 -是朽鵬6極志球業シ終T脈殺-"が始まりますね。
逹瑯:なかなか難しいんですよ。"今年が20周年だっていうことは、そんなに意識しないでおこう"と思うこと自体がすでに意識していることにはなるんだけど(笑)、今年はできればそのくらいの感覚でツアーもやっていきたいと思います!
ミヤ:受け止め方はそれぞれ自由だけど、できればお客さんたちには自分なりの解釈でこのアルバムを聴いて感じたことを、ライヴの場で表現してみてほしいですね。あとは各地でだいぶチケットが売り切れているので、お早めにって感じです。