INTERVIEW
バックドロップシンデレラ
2016.11.04UPDATE
2016年11月号掲載
Member:豊島“ペリー来航”渉(Gt/Vo)
Interviewer:沖 さやこ
-5th『スゴい!君!』はキャラクターの立った濃いめの曲が多い印象があります。
5thはまたセルフ・プロデュースで制作することになったので、ちょっとした解放感もあります(笑)。だから4thの『ジャクソン』よりもだいぶふざけてる感じですね。「池袋のマニア化を防がNIGHT」(Track.8)や「市長復活~さいたま市ヨリ与野市ヲ解放セヨ~」(Track.14)みたいに、ちょっとバカさ加減も加わりつつ。でも、4thで培った音楽制作に対してのプロ意識だけはしっかり継承しよう、と頑張りました。そのあとの6thアルバム『シンデレラはいい塩梅』(2014年リリース)はポップだなと。力の抜きどころがわかってきたのか、ガツッとやる曲はガツッと、力を抜く曲は抜く。そういうバランスが取れてきて。これくらいのころからレコーディングが楽しくなってきましたね。
-ではレコーディングが楽しくなってきたのは、実はここ2年くらいのお話なんですね。
『ジャクソン』や『スゴい!君!』は"正確に演奏しなければ"、"正確に歌わなければ"とピリピリしてたんで。でも『シンデレラはいい塩梅』あたりからそれに対応できる実力もついてきて、そういうところをクリアしたうえで自由にやれるような雰囲気が出てきましたね。だから、僕は7thアルバム『OPA!』(2015年リリース)が一番好きで。『シンデレラはいい塩梅』でできるようになった力の抜き差しもさらにできるようになって、スカッとしたアルバムになったと思いますね。良いアイディアを潰さずに、良いままガツッと出せてる曲が多いので、曲のキャラ立ちもひとつひとつガシッとしているような気がしますし。キラー・チューンが多いです。
-バックドロップシンデレラは"前作を超える"のが毎回のモットーですから、それを実現しているということですね。
今回はベスト・アルバムなので楽勝で超えられましたしね(笑)。
-ははは。5年間で生み出された強豪揃いの全20曲+ボーナス・トラックですからね。
だからどの曲もギラギラしていて濃すぎて! いつも曲順にはこだわるし、流れとかもすごく考えるんですけど、今回は濃すぎてそれをやるのが無理でした(笑)。曲順はずっとiTunesのプレイリストでぽちぽち作って悩み続けて......。この曲順に納得いっているかと言われると"うん"とは言えないんですけど、正解もないなと思って(笑)。
-そうおっしゃっていながらも流れが考えられている曲順だと思いますし、再録もされているので、ずっとバックドロップシンデレラを聴き続けている人も新鮮な気持ちで聴ける理想的なベスト・アルバムだと思います。
需要がありそうなものを選んで入れていきましたね。"これを聴いてイマイチだなと思ったら、バックドロップシンデレラは嫌いでいいと思いますよ?"という感じのベスト・アルバムにしました。この1枚を聴いてくれれば、いつどこのライヴに来てくれてもまあまあ楽しいと思います(笑)。
-さらに楽しむためには過去音源もマストですね。『BESTです』は新曲がボーナス・トラック含め3曲収録されていて、Track.7「ブラスト和尚」はこれまでのバックドロップシンデレラにはない感じの曲だと思いました。音もヴォーカルも飛び道具が入り乱れ......。
今年、IRON MAIDENの来日公演を観に行って、それからは初期のメタルしか聴いてなかったんですよ(笑)。ずっとスラッシュしてるような音楽ばっかり聴いてたので、新曲があんなふうになってしまった(笑)。"速いでござる"という言葉をどこかで聞いた覚えがあったので、デス・メタルのビートを木魚で叩く和尚がいたら面白いなぁと思って歌詞を書いて。茶坊主はブラストを叩く和尚のことを尊敬していたんですけど、大人になったらだんだん和尚のことが嫌になってきて(笑)。和尚はずっと我が道を行き続けていて、それを見ている茶坊主が戦慄しているというストーリーですね。あゆみが最近デス声にハマッてて、嬉しそうに歌ってました(笑)。
-みなさん、ヴォーカルのレパートリーもどんどん増えているような。
あ、そうかもしれないですね。キャナコはあんまり変わってないですけど(笑)。最近は"ここは誰が歌おう"と決めて作るのではなく、"歌って一番面白い奴が歌おう"みたいな感じになっているので。
-Track.15「君がやってくる」もみなさんで歌っていらっしゃいますし。
この曲は"他がガチな曲ばかりなので気の抜けた曲が欲しいな"と思ってささささ~っと作ったもので。CDだけ持っててライヴに来ていない人が、これを聴いてひとりでもふたりでもライヴに来てくれればいいかなと思って歌詞を書きました(笑)。
-(笑)ボーナス曲として収録されているTrack.21「さらば青春のパンク~突き進め柏~」は、Track.2「さらば青春のパンク」(7thアルバム『OPA!』収録曲)の柏レイソルの応援歌(チャント)バージョンということで、レイソル応援団の幹部である"みゃ長"さんと共同作詞をしたそうですが、どういう経緯で?
レイソル応援団のなかに、たまにライヴに来てくれる人がいたらしく、勝手にチャントとして「さらば青春のパンク」を使っていたんですよ。それをTwitterで知りまして、単純に嬉しかったので"嬉しいです"とツイートをしたら、応援団の方から"ありがとうございます"と連絡が来まして。それがきっかけで"どうやって歌われてるのかな?"と思って試合を観に行ったんですよね。そこで一緒に応援しながら歌って、何千人もの観衆が歌っていることにももちろん感動したんですけど......なんかちょっと寂しいなという気持ちにもなって。
-"寂しい"?
"あ、この曲はもうバックドロップシンデレラの曲ではないな。レイソル応援団の曲になってるんだ"と思ったんですよね。このときに"曲というものは歌われた時点で、歌った人の曲になるんだな"とも思って。応援団の人たちもこの曲がもともとバックドロップシンデレラの曲だというのはわかってはいるんですけど、そう思って歌ってない。"俺たちの歌だ"と思って歌っているように思いまして。良くも悪くも曲がひとり歩きをしてバックドロップシンデレラの元を離れている。だからこの「さらば青春のパンク~突き進め柏~」は、"だったらもう1回俺らをそこに交ぜてよ! 一緒に作ろうぜ!"という感覚ですね(笑)。サビの部分しか(チャントとしての)歌詞がなかったので、みゃ長さんと一緒にすべて歌詞を作り変えることにしたんです。もともとみゃ長さんが書いてきた歌詞があったんですけど、チャントとは交わらない独自の世界観を発揮してきたので(笑)、いったんそれをボツにして(笑)。僕は今まで、あんまり人の応援をしてこなかった人間なので、サポーターの方は何を考えてるのかな? どういう気持ちで応援してるのかな? と思って、レイソルに人生を捧げているみゃ長さんにインタビュー形式で質問をしたんです。