INTERVIEW
バックドロップシンデレラ
2016.11.04UPDATE
2016年11月号掲載
Member:豊島“ペリー来航”渉(Gt/Vo)
Interviewer:沖 さやこ
-10周年記念にカバー・アルバム(2016年5月リリースの『いろんな曲でウンザウンザを踊ってみた』)とベスト・アルバムの2アイテムをリリースしたのはなぜでしょうか。
ここ2、3年はシングルなどを含めて年に2、3回作品をリリースしていたので、今年もそれをやりたいな......と思いつつも、10周年にあやかって新曲はあんまり頑張って作らないという方針がありまして(笑)。僕らはレコーディングの作業が好きなので、今回の『BESTです』は単純に"再録したらめっちゃ良くなるだろうな"と思った曲を中心に、半分くらい再録しちゃいました。昔の曲は今やった方が断然いいだろうと思うので。
-サウンドのパワーアップにかなり手応えがあると。
かなりパワーアップしたと思いますね。3rdアルバムの『シンデレラはウンザウンザを踊る』(2011年リリース)は今とレコーディング・エンジニアも違うので。でも4thアルバム『ジャクソン』(2012年リリース)からは同じレコーディング・エンジニアとやっていて、環境がわりと似てるなかでの再録だったので、エンジニアは相当プレッシャーを感じてましたね(笑)。やっぱりエンジニアもバンドも毎回"前作を超えるぞ!"と全力を尽くして録っているし、それを超えるにはなかなか頑張らなければいけないんだなぁと今回感じました。でも、結果的に前よりも良くなってると思います。
-アレンジをそれほど変えない状態での再録ですよね。
アレンジはどの曲もレコーディングした段階でベストな状態だな、これ以上はないだろうと思うものだし、これはベスト・アルバムというのもあって、ライヴで何回も演奏されている曲が多くて。"ライヴで培った雰囲気や勢いをがっつり出した方がかっこいい!"ということで、アレンジはあんまり変えませんでしたね。アレンジを変えて演奏がよそよそしくなるのはちょっと嫌だったし。再録のものはクリックもほとんど入ってないんですよ。だから粘り強い演奏になっているんじゃないかなと思いますね。
-たしかに。特にTrack.17「夕暮れにウンザウンザを踊る」(2013年リリースの5thアルバム『スゴい!君!』収録曲)はそれを感じます。ヴァイオリンにも躍動感が出て、さらにしなやかになって。
あれ、すごく良くなりましたよね。歌も良くなったし。
-3rdアルバム収録のTrack.18「ダメ男とジュリエット」は完全に今のバックドロップシンデレラの音ですものね。
「ダメ男とジュリエット」は3rdの時点ですごくハイテンションな曲だったので、"それを超えるテンションにしないとだめだ!"と思って、ライヴでもこんなに疲れることはない! というくらいのすごいテンションで録りましたね(笑)。とにかく気合だ! って感じで頑張りました。
-ははは。あと気になったのは、収録曲がウンザウンザを提唱するようになった3rd以降のものだったことです。なぜオールタイム・ベストにしなかったのかなと思いまして。
やっぱり明らかに3rdから音楽性が変わっているので。20曲という収録曲数はベスト・アルバムにしては多いけれど、それでも入れたい曲はもっとたくさんあって。でも、それ以上に作品としてひとつにまとめておきたかったんですよね。それがまずひとつの理由です。あと、1stアルバムの『ピッチョンインポッシブル』(2008年リリース)と2ndアルバムの『ニッポンインポッシブル』(2009年リリース)もその曲たちだけで、いつかどこかでひとつにまとめられたらいいな......と思っております。まぁ、個人的には、オールタイム・ベストを作ったとしてもこれに近い選曲になる気がします。だから中途半端に1stと2ndの曲を入れることはせず、3rd以降から選びました。
-TOWER RECORDSの購入者特典として「俺がやってくる」の再録CD、ヴィレッジヴァンガードの特典には「おじぞうさん」の再録CDと、それぞれ1stの楽曲の再録がついてきますしね。
実を言うとこの2曲は結成前からある曲なんですよね。もともとバックドロップシンデレラは、解散したふたつのバンドのうちの、まだ音楽を続けたいやる気のある奴らが集まって結成したバンドで。「俺がやってくる」は俺とキャナコ(アサヒキャナコ/Ba/Cho)さんが前に組んでたバンドでやっていた曲で、「おじぞうさん」はでんでけあゆみ(Vo)と一徳(鬼ヶ島一徳/Dr/Cho)がバンドを組んでいたころに、あゆみが他のところでやっていた曲なんです。実は2曲ともバックドロップシンデレラで作った曲ではないという(笑)。だから僕のなかでこの2曲は、過去曲のさらにもうひとつ過去の曲なんです。結成から2ndまでの曲をベストに入れなかったのは、そういう理由もありますね。
-3rdから1年に1枚のフル・アルバムをリリースしてきて、5年間で計5枚。それぞれのアルバムは豊島さんにとってどんな作品になっていますか?
3rdの『シンデレラはウンザウンザを踊る』は民族音楽を足して曲を作ってみよう! という立ち上げのようなアルバムで。だから試行錯誤をしつつ、でも面白そうだからやってしまおう! という感じもあるんですね。1stや2ndの空気も入っていて、あれはあれで今は絶対に作れないなと思います。3rdがある程度ヒットしたので、"僕らがやろうとしている音楽性は間違ってないな"という自信にもなって。じゃあもっともっとその方向性を掘り下げていこう! という感じで作ったのが4thの『ジャクソン』ですね。このアルバムはプロのプロデューサーさんと一緒に作ったんですけど、なかなか厳しい方だったので音楽的にかなり叩き上げられて。そのぶんやりたいことが掘り下げられて、アイリッシュやジプシーだけではなく、さらにいろんなジャンルを取り入れられた、(音楽性が)広がったアルバムになりましたね。でも作るのがすっごく大変で......。プロデューサーにボツられて、でも食らいつくしかないから発狂しそうになるくらい一生懸命曲を作りました(笑)。僕的にはすごく気に入っているアルバムです。