INTERVIEW
バックドロップシンデレラ
2014.10.07UPDATE
2014年10月号掲載
Member:豊島“ペリー来航”渉 (Gt/Vo) アサヒ キャナコ (Ba/Cho)
Interviewer:沖 さやこ
-5thフル・アルバム『スゴい!君!』から1年のインターバルでリリースされる『シンデレラはいい塩梅』。5月にはリリースから1週間で店頭から姿を消したという1000枚限定の1stシングル『台湾フォーチュン』も話題になりましたが、このころにはもうアルバムの構想はできていたのでしょうか?
豊島:そうですね。毎年アルバムを出すんですけど、毎回3回のタームで時期をわけてレコーディングしてるんですよ。その方が1曲ずつ集中してやれるんですよね。10曲以上あるアルバムの曲のドラムを一気に録ったり、ギターやヴォーカルを一気に入れたりすると、ひとりひとりの負担が......(笑)。だから3~4曲ずつ録って、終わったら次の4曲に集中して、というサイクルが僕らには良くて。なので『台湾フォーチュン』は最初にアルバムに向けて録ってたのをちょろっと出したというか(笑)。"出せばいいじゃーん"みたいに言われて。シングルの名目でツアーも回れるし、なんかあった方がお客さんも楽しいんじゃないかと。
アサヒ:シングルを出してみたかった、というのも大きかったですね。これは年末くらいに作ってた曲で。
豊島:シングルを出そうか、という話はしてたんで。だから最初録音してた3~4曲はシングルを意識した曲作りをしてたんです。
-今回のアルバムに入っているTrack.6「ピノキオ」、Track.12「月あかりウンザウンザを踊る」も『台湾フォーチュン』に収録されていますものね。
豊島:本当は「月あかりウンザウンザを踊る」をシングルにするつもりでずっと動いてて。だから「月あかりウンザウンザを踊る」をすごく時間を掛けて一生懸命作ってたんですよ(笑)。「台湾フォーチュン」はね、結構サクッとできて"かっこいい曲できて良かったね~"くらいのもんで......この曲をシングル曲にする意識はほとんどなかったね?
アサヒ:なかったですね。割と土壇場で「台湾フォーチュン」が表題になって。
豊島:最後のレコーディング直前のプリプロの段階で、"あ、これは「台湾フォーチュン」かもしれない......!?"と。周りの人に聴かせて(どの曲がシングル曲っぽいかを)リサーチしたからね。そしたら9割「台湾~」で、マジか!? って(笑)。「月あかり~」はめっちゃ頑張ったのにね。構成をひっくり返したり、アレンジを根本から変えてみたり、メロを変えたり......歌詞も頑張ったんです。熱がこもってる感じがありますね。
-「台湾~」は前のめりな四つ打ちのリズムとキャッチーでクールなメロで、一聴してとても引きのある曲ですしね。とはいえ「月あかり~」もヴァイオリンが入ったアイリッシュ的な美しい音と詞で、「台湾~」とは逆ベクトルで気持ちよく体を動かせるものだと思います。
豊島:「月あかり~」みたいなアイリッシュ・パンクみたいなものがバックドロップシンデレラに求められてると思ってたんです。僕らも好きだし。そういうものを出していこうと思ってたんですけど――そこが「台湾~」と「月あかり」で最後まで悩んだ理由だったんです。それを他人に聴かせたところ、あっさり「台湾フォーチュン」だったんで......求められてないのかな(笑)? 第三者めっちゃ冷静だな~と思ったり。主に「月あかり~」を頑張ってて、「台湾フォーチュン」はほとんどシングルを作ることの鬱憤を書いただけなんですよ(笑)。
-(笑)「台湾~」はパッとできたゆえに明快な曲になっているから取っ付きやすかったのかもしれないです。「月あかり~」はアルバムの最後に来るからこそより輝きを増すところもあると思いますし。このレコーディングのころにはアルバムのビジョンはある程度あったのでしょうか?
豊島:とりあえず『スゴい!君!』より良い作品を作らないと、僕らは解散なんですよ。そういう法律があるので(笑)。だから『スゴい!君!』を超えなきゃならん、ということで。でも僕は――前回のインタビューでも言った気がするんですけど――『スゴい!君!』が結構好きなんですよ(笑)。だから、ただただ曲をかっこよくしよう、良い曲を作ろうとしてましたね。あ、でも『スゴい!君!』以降、僕がブラジリアン・サンバにハマってたので、ブラジリアン・サンバ色はかなり入れてますね。あと"遅いウンザウンザを作ろう"と。速いウンザウンザばっかり作ってきたので、遅いのもあるはずだ! と思って(笑)。
-『シンデレラはいい塩梅』は、進化したウンザウンザがたくさん詰まってますよね。ウンザウンザはコサック・ダンスが踊れそうな民族音楽的なものだと思っていたので、今回のアルバムでこんなに自由でいいんだ!と思って。そしてもう最早何がウンザウンザなのかわからないというか(笑)。
豊島:(ウンザウンザは)僕らしかやってないんで、僕らがやってるものがウンザウンザになるというか、どんどん自由になってしまう(笑)。
-もともと豊島さんはワールド・ミュージックに精通されてますが、ブラジリアン・サンバにハマったきっかけはどのようなことで?
豊島:ブラジリアン・サンバをずっと聴けてなかったんで、聴いてみようかなーと手を出してみたら予想以上にかっこよくて。ひとりで堀り下がっていきました(笑)。それで「卑しくも旅立ちの歌」とかにちょっと入れてみたり。
アサヒ:"こういう感じの曲にしたい"という提案を(豊島から)受けて、みんなで悪戦苦闘して、ルーツを掘り下げていって聴いてみたりしながら"こういうフレーズにしてみよう"というアイディアが出てくる......という感じに曲を作っていって。
-バックドロップシンデレラはパンク、スカ、ハードコア、メタル、レゲエ、アイリッシュなどなど様々な音楽性を持ってらっしゃいますが、それはもともとメンバーさん全員にあるものなのでしょうか?
アサヒ:豊島さんほどマニアックではないかもしれないけど(笑)、みんなそれぞれ好きなものはありますね。
豊島:僕が持ってきたものや、いろんな音楽を聴かせたときの吸収度はすごいなと思ってます。やっぱりすぐに各々の音のリアクションがあるので。お陰さまで僕の欲求が満たされる、こんな音楽をやれてます(笑)。
-『スゴい!君!』はいろんなジャンルがごった煮になってわくわくするような全曲リードという勢いの曲の応酬でしたが、『シンデレラはいい塩梅』はそれぞれの曲のカラーが立ったアルバムになっていると思いました。"メタル馬鹿にする奴も死ね""メタルも聴かなきゃダメー!"という名言が飛び出したTrack.2「メラメラ」はメタル・ナンバーですし。
豊島:メタルは楽器陣は全員好きですね。この人(アサヒ)は隠れメタラーなんで(笑)。
アサヒ:でも「メラメラ」もついついスカを入れたくなっちゃって、入れちゃいました(笑)。
豊島:これは『スゴい!君!』に入ってる「カンフーライフ」のパクリなんですけど。音をパクったので歌詞もパクろうと、同じ歌詞を入れたり(笑)。