INTERVIEW
THE STARBEMS
2014.11.10UPDATE
2014年11月号掲載
Member:日高 央 (Vo)
Interviewer:荒金 良介
-終わりかたが気に食わなかった、というのは?
もっとやれただろって。先輩の怒髪天やニューロティカがいまだにずっとやってて、年々内容が右肩上がりになってるし、俺もあれを目指したかった。でもバンドはひとりのものじゃないから、他のメンバーがやりたくなければ無理にやらせるのも嫌だし。自分もビークルの運営をちゃんとやれば良かったという反省もあるし。でも終わったことを四の五の言ってもしょうがないので、今できる最前を尽くして、それを叩きつけることが1番誠実なことじゃないかと。
-その気持ちがより強くなったのはいつごろですか?
アメリカに行ったことがでかかったかもしれない。SXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)は観に来る人も知らないパンク・バンド目当てだし、フラットなスタートだから。俺らの前にやったブラジルのパンク・バンドはお客が5人しかいなかったけど内容は最高で。ウチらのときはラッキーなことに70、80人お客さんが入ってくれて。でも日本だと予備知識があって、みんな観に来るわけじゃないですか。その予備知識抜きの人たちの前でどこまでやれるのか、それが自分的には新鮮で。THE STARBEMSの曲もテレビやラジオでちょっと流れただけでも引っかかるものを作りたいから。今回はこっちもゼロからの気持ちで、間口を広げようと思って。
-そういう意味でも自分たちが持ってる武器を隠してる暇じゃないだろうと?
そうっすね。世間的にメロディ・センスがいいと言われるなら、それを武器にしない手はないだろうと。
-日高さんにとってはビークル時代を踏まえて、"これがTHE STARBEMSですよ"と堂々と言い切れた作品になったんですね。
海外からも『BECK』を通じてビークル好きでした、今はTHE STARBEMSを応援してますとFacebookでメールをもらうし、届いてるところには届いてるんだなと。それが去年ぐらいまでは信用できなくて......。それは震災の影響もあって、報道するセシウムの量がメディアによって違うし、こっちも懐疑的になってた。でも発信する立場としては、こっちが疑っていたら何も進まないからね。疑われることを恐れて、発信をやめちゃダメだなと。去年は自分も発信するタイミングが難しかったけど、今はタイミングも関係ないかなと。bloodthirsty butchersの吉村さんとか親しい人が若くして亡くなったこともあり、いつ発信が途絶えるかわからないから、出せるうちに出しておきたいなと。
-今作で鎧が取れて、生身で勝負できる強さが出てきたんですね。なんか、ビークル時代も似た話をしたような気がします(笑)。
はいはい。ビークルのときは売れすぎて、ガヤが大きくなりすぎて、ライヴ中にダイブしてくる人がいるからウザイというクレームがこっちに来る苦しみがあったしね。その迷いが取れたのが3rdアルバム『popdod』のタイミングで......人は悩みと闘いながら生きてるから。音楽を作るスタンスはリスナーのみなさんと同じで、日々の生活で悩むことはたくさんあるからね。俺は音楽があるから、まず自分が発散できるものを作りたい。1stアルバムは自分発散がメインでしたけど。
-今はリスナーの立場も踏まえて考えられる?
そうですね。1stアルバムの内向きな感じも嫌いじゃないんですけどね。
-でも伝える立場としては、180度スタンスが違うじゃないですか。
最近はライヴでもお客さんと話すようになったし。ビークル後期はメディアやお客さんのクレームも信用できないから、客席に出向くこともなかったけど、今はガンガン話すようになって、逆に常連ファンからはフランクすぎですって、マイナス評価ももらってますが、それもまた面白いかなと(笑)。
-日高さん自身がリスナーを信用できるようになったんでしょうね。
そうっすね。自分がリスナーだったら、何を聴きたいんだろうという余裕が1stアルバムの時はなかった。当時は周りを考えるよりも、メンバー6人で向き合う作業に集中してたから。
-話を聞くと、合点が行きます。「Sweet Nothing Blues」はビークルっぽさを彷彿とさせますもんね。
こういう曲も1stアルバムのころならビークルを連想させちゃダメだって、ボツにしてたと思う。でもリスナー目線で考えたら、ビークル節、日高節を聴きたい人もいるだろうし、そこはフラットになれました。今は120%のものを見せる覚悟ができましたね。
-今作は日高さんのヴォーカルの表現力も多彩だし、コーラス・ワークの味付けも多様性に富んでて、ヘヴィさも過去最高ですね。「Sublime」はダイスケはん(キャーキャーうるさい方、マキシマム ザ ホルモン)ばりのスクリームも入ってますもんね。
はははは。その振り切れ具合は1番あるかも。対バンでいろんなバンドを観て勉強しました。kamomekamomeもそうだし、普通のメロディック・バンドでも表情がすごくあるなと。Northern19の健太郎、locofrankの正行もガムシャラに歌うだけじゃなく、思いっきり朗々と歌ったりして。それは同期の市川君(LOW IQ 01)もそうだし、みんな声の表情で聴かせることに頑張ってるなと。友達や後輩だと、ライヴ全体を観て良かったという感想になりがちだけど、ヴォーカルをじっと見てたんですよ。ここで水を飲むとか......。