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FEATURE

映画“ゴリラホール”

2026.02.19UPDATE

2026年02月号掲載

映画"ゴリラホール"	が描く 音楽に賭けたバンドマンたちの夢と現実、その先にある未来

Writer : 梶原 有紀子

2020年代を照らす青春群像劇の新しいマスターピースが誕生!


東京、大阪での先行上映を終え、いよいよ映画"ゴリラホール"の本上映が始まる。ライヴハウスでアルバイトをしながら、バンド GIRL TALKING ABOUT LOVEで成功する夢を追う朝子と、恋人であり自他共に認めるブレイク寸前のバンド SUMMER JOEの壱夜を中心に物語は展開してゆく。監督/脚本を務めるのはXMAS EILEENのフロントマンであり、アイドルや他アーティストの楽曲/映像も手掛けるKoji Uehara。彼と旧知の仲であるKj(Dragon Ash/The Ravens)が劇中歌を担当している。


劇中曲「アンダンテ/GIRL TALKING ABOUT LOVE」作詞作曲:Kj【Music Video】


物語の中心になる朝子は、バンド活動を陰に陽に応援している両親、そして顔を合わせると憎まれ口を叩くが仲のいい姉妹と、都会の瀟洒な家に暮らしている。賑わう街中を自転車で颯爽と駆けて向かうバイト先が、本作のタイトルであり物語の舞台になっている大阪に実在するライヴハウス ゴリラホール(GORILLA HALL OSAKA)だ。

朝子はゴリラホールで働きながら、GIRL TALKING ABOUT LOVEのギター・ヴォーカルとして活動。メンバーもバイト仲間も、朝子の作る楽曲を愛し彼女のセンスと才能を疑っていないが、肝心の本人だけが自分を信じ切れずにいる。その迷いや自信の持てなさ加減が、朝子がバンドで夢を叶えることへ踏み出そうとする一歩を押し留めている。このあたり、夢を追う若者にありがちな"自分には才能がないと思い込んでしまう不安"や、"挑戦して失敗し傷付くことの怖さ"がとても生々しく映し出されている。

この作品が観る者の心を捉えるのは、音楽と共に生きる若者たちの葛藤を美しく描きすぎていないところ。音楽が好きであることと、好きな音楽で生きていくこととの間には、想像を軽く上回る隔たりがある。例えば、朝子のバンドはライヴに出演する際にメンバーが数枚ずつチケットを売るノルマが課せられている。アルバイトをしながらのバンド活動や、チケットを手売りすること、バンド練習の後に飲みに行けば、自然と自分たちの将来について話が及び、それは決して明るいだけのものにはならないこと......バンドマンなら誰しもが経験するであろうことに、朝子ももれなく直面する。

映画の中にこんな場面がある。朝子の両親は、娘のライヴのチケットを必ずと言っていい程購入している(その理由は終盤明らかになるのでお見逃しなく)。チケット・ノルマを達成した朝子は、嬉しさのあまり飛び跳ねる勢いで階段を駆け上がり自室へ急ぐ。自室の壁はGREEN DAYのポスターや"京都大作戦"のTシャツが埋め尽くし、CD棚にはKen Yokoyamaや10-FEET、SEKAI NO OWARI、ヤバイTシャツ屋さん等個性も音楽性も様々なバンドがぎっしり。大好きなものに囲まれた部屋のベッドに横たわり、天井を見上げる朝子の瞳には、さっきまでの喜びとは違った翳りのようなものが見える。

別の場面では、壱夜に将来のことをどう考えているかと問われ、朝子はわずかな沈黙の後に"このままでいられたら"と消え入りそうな声で返す。音楽をやめるつもりはないが、本気で夢を掴みにいく覚悟が持てないでいる。"夢"そのものを直視することさえつらいときもある。そんなふうに揺れる中途半端な状態が、彼女自身を一番苦しめている。

朝子は思いの全てを口にすることはしないが、ふとしたときの眼差しや表情、言葉と言葉の間(ま)にはセリフ以上の感情が含まれているようで、観る者にいくらでも深読みさせ、感情移入することを許してくれる。それもこの作品の魅力の一つだ。

この物語において大きなウェイトを占めるのが、タイトルにもなっているライヴハウス ゴリラホール。劇中にENTHのライヴ・シーンが登場するが、ENTHが大好きな朝子にとって、ライヴハウスはそういった憧れの存在が立つ場所であり、またアルバイトとしてステージを作る一翼を担いながら、バイト仲間や人生の先輩である店長たちと交流するひとときをくれる場所。そして、音楽を鳴らしながら生きるありのままの自分でいられる居場所であり、夢を見続けることを許してくれる大切な場所でもある。ライヴハウスが単なる会場ではなく喜怒哀楽の全てを受け容れる多面的な場所であり、登場人物たちの、場合によっては観る者にとっての居場所でもあることが本作では丁寧に描かれている。

物語が大きく動くのは、大手レーベル主催のオーディションが開催される場面。壱夜のバンドが当然のように参加を表明し、逡巡の末に朝子たちのバンドも参加へと踏み出す。朝子が一歩踏み出すに至るまでの時間は、決して短くない。その短くないためらいこそがリアルだ。逡巡したり迷ったりするのは若者ゆえの弱さではない。自分が本当に好きなものはなんなのか。大切なことはなんなのか。好きなもの、大切なものは1つじゃなくて、どれも大切だからこそ簡単に選ぶことができない。

挑戦することは現実と向き合うことでもあり、自分の限界を突き付けられる可能性もある。夢を選ぶことは、何かを捨てる行為に繋がるかもしれない。けれど、夢から逃げ続けることもまた自分自身を失うことなのだと、この映画は静かに訴え掛けてくるようだ。これは、音楽に限らず何かを"本気でやりたい"と思いながら踏み出せずにいる人なら、誰もが心当たりのある感情なのではないだろうか。

この映画を何度も観たくなる要素の一つは、この作品が単なるサクセス・ストーリーではないこと。1つの夢を叶えることができたら、その先にまた違う新しい夢や目標ができる。朝子をはじめ登場人物の誰もが自分が今立っている現状をゴールとすることなく、一人一人が自身の夢を叶える途上にいることをこの物語は伝えているのだ。劇中でGIRL TALKING ABOUT LOVEが演奏する「アンダンテ」の歌詞にもこうある、"こんな歌口ずさんで/朝と夜を幾つ数え"、"恋に落ちて 胸焦がして/夢を追って 春になって"。

お気付きの人もいるだろうが、朝子と壱夜の名前にある"朝"と"夜"が歌詞に登場する。光の差す眩しい朝と漆黒の夜は対照的なようだけれど繋がっていて、日々も人生もその2つの繰り返しだ。悪天候の日も、戦火の下でも朝が来て夜が来る。

音楽を鳴らし、歌を口ずさみ、仲間と肩を組みながら未来に向かってゆっくりとしっかりと歩みを進める登場人物たちの姿そのものが、映画を観る者へのエールとなり、メッセージとなっている。それは朝子や壱夜たちと近い世代の人はなおさらだろうが、かつて夢を追う日々を生きた人や、夢に敗れた先の未来を闊歩している人の心にも充分に届く。ぜひ劇場の大きなスクリーンで、大音量で心ゆくまで楽しんでもらいたい。

映画『ゴリラホール』本予告60秒【2026年2月20日〜本上映!】


▼MOVIE INFORMATION
"ゴリラホール"


2026年2月20日(金)
栃木 小山シネマロブレ
2026年2月27日(金)~
東京 kino cinéma新宿
大阪 kino cinéma心斎橋
他、全国順次公開予定

出演:AIK / 門間 航 / 松下恭子 / Ruu / モリヲ / 森山みつき / 安部伊織 / 中川可菜 / 神嶋里花
松本享恭 / 葉月ひとみ / 織原まよ / ナカニシヨシキ(RIOT JUNCTION) / 大地 陽 / 冠 徹弥(THE冠)
山口智充 / 黒谷友香 / 伊藤 歩 / 古田新太 / ENTH(特別出演)

音楽:Kj(Dragon Ash/The Ravens)
エグゼクティヴ・アドバイザー:やべきょうすけ

監督/脚本:Koji Uehara

エグゼクティヴ・プロデューサー:ナカムラトシヤ
プロデューサー:塩野恵麻 / 上原聖史
アソシエイト・プロデューサー:加藤真悟
助監督/編集:中嶋淳志
撮影監督:田口俊介
照明:朴 昌根
録音:安田すすむ
整音:筒井 靖
衣装:太田旨人
ヘア・メイク:北脇茉梨子
制作担当:吉中 健 / 大里牧子
宣伝担当:政田悠希/木村風花
アート・ディレクター:山崎誠至
美術/小道具:金田研人
スタイリング・サポート:金谷勇仁
バンド楽曲制作:HidetoshiNishihara
バンド監修:先田匡男
製作:映画「ゴリラホール」製作委員会
(中村俊也 / BABYOWL / ハルク・エンタテイメント / 株式会社PIF / 株式会社アッシュ)
©2025 映画「ゴリラホール」製作委員会
公式サイト 公式X 公式Instagram

▼MOVIE INFORMATION
"ゴリラホール"


2026年2月20日(金)
栃木 小山シネマロブレ
2026年2月27日(金)~
東京 kino cinéma新宿
大阪 kino cinéma心斎橋
他、全国順次公開予定

出演:AIK / 門間 航 / 松下恭子 / Ruu / モリヲ / 森山みつき
安部伊織 / 中川可菜 / 神嶋里花 / 松本享恭 / 葉月ひとみ / 織原まよ
ナカニシヨシキ(RIOT JUNCTION) / 大地 陽 / ENTH(特別出演)
冠 徹弥(THE冠)/ 山口智充 / 黒谷友香 / 伊藤 歩 / 古田新太

音楽:Kj(Dragon Ash/The Ravens)
エグゼクティヴ・アドバイザー:やべきょうすけ

監督/脚本:Koji Uehara

エグゼクティヴ・プロデューサー:ナカムラトシヤ
プロデューサー:塩野恵麻 / 上原聖史
アソシエイト・プロデューサー:加藤真悟
助監督/編集:中嶋淳志
撮影監督:田口俊介
照明:朴 昌根
録音:安田すすむ
整音:筒井 靖
衣装:太田旨人
ヘア・メイク:北脇茉梨子
制作担当:吉中 健 / 大里牧子
宣伝担当:政田悠希 / 木村風花
アート・ディレクター:山崎誠至
美術/小道具:金田研人
スタイリング・サポート:金谷勇仁
バンド楽曲制作:HidetoshiNishihara
バンド監修:先田匡男
製作:映画「ゴリラホール」製作委員会
(中村俊也 / BABYOWL / ハルク・エンタテイメント / 株式会社PIF / 株式会社アッシュ)
©2025 映画「ゴリラホール」製作委員会
公式サイト 公式X 公式Instagram

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