FEATURE
ASKING ALEXANDRIA
2013.08.09UPDATE
Writer 沖 さやこ
UK出身ながら、前作『Reckless & Relentless』が全米ビルボード・チャートで9位を記録したASKING ALEXANDRIA。メタルコア/スクリーモ・シーンのトップ・バンドのひとつとなった彼らの、約2年振りのニュー・アルバム『From Death To Destiny』が完成した。ASKING ALEXANDRIAと言えばメタルコアにユーロ・トランスを中心としたシンセ・サウンドの要素を盛り込んだ、ダンス・ミュージック×メタルコア・ブームを巻き起こしたバンドの1つであることは間違いない。だが今作においてそのシンセ・サウンドは、ほぼ姿を消し、バンドはこの新たなフェーズへと突入したのだ。
ASKING ALEXANDRIAは2008年にイギリスで結成。活動開始から間もなく拠点をアメリカに移し、大手マネージメント会社と契約。2009年にSUMERIAN RECORDSからリリースした1stアルバム『Stand Up And Scream』でデビューを果たす。彼らが慣れ親しんでいたテクノやトランスなどのエレクトロ・ミュージックとハード・ロック、メタルの要素を融合したサウンドで瞬く間にメタルコア・シーンのトップ・バンドのひとつとなった。2010年にはセカンド・アルバム制作の合間を縫って突如『Life Gone Wild EP』をリリース。本作にはSKID ROWのカヴァーを2曲、新曲1曲に加え、リミックス/デモ3曲を加えた全6曲収録したものであった。2011年2月にはSCREAM OUT FEST 2011で待望の初来日。キッズの予想をはるかに上回る圧巻のライヴ・パフォーマンスで会場を沸かせた。4月に2ndアルバム『Reckless & Relentless』をリリース。このシーンでもはや知らないものはいないだろうJoey Sturgisをプロデューサーに迎えた同作は、チャートの好成績だけでなく、Warped Tourではメイン・ステージに抜擢されるなどの成功を収める。そしてバンドはツアーを重ね、更なる成長を遂げていった。
約2年振りのニュー・アルバム『From Death To Destiny』も前作に続きJoeyをプロデューサーとして迎え、ミックスにはDavid Bendeth、マスタリングにTed Jensenが起用されている。ではサウンドは2作目がパワー・アップしたものなのか?というと、冒頭でも申し上げた通りそうではない。彼らの代名詞とも言えるエレクトロ・サウンドは影を潜めているのだ。確かにメタルとエレクトロの要素を融合させるサウンドが近年主流とも言えるが、彼らはそのブームから逸脱。今作はよりメロディや歌心、楽器が奏でる音色ひとつひとつが持つ濃度に重点が置かれている。特に感銘を受けたのは“歌心”だ。前作に収録されている「Someone, Somewhere」ではその美しくも繊細なメロディに心を奪われたリスナーも多かったのではないだろうか。日本盤のボーナス・トラックにはBen Bruce(Gt/Vo)による同曲のアコースティック・ヴァージョンが収録されているが、その清らかさは非常に感動的だ。
今作の幕開けとなる「Don't Pray For Me」はストリングスとコーラス・ワークが憂いのあるメロディを引き立てる。では彼らのサウンドは丸くなってしまったのかと言うとそうではない。あくまでも曲の奥行や情感が豊かになったということだ。「Killing You」はスピード感ある楽曲で、襲いかかるシャウトと悲痛で切ないサビはドラマティックでありながらも狂気を感じさせる。攻めの曲とも言える「The Death Of Me」はアグレッシヴなシャウトが炸裂しているが、以前のようなメタルコア的なモダンなスクリームではなく、80~90年代のオーセンティックなメタル・シンガーに通じるスタイルへと変化している。シンセが主役としてではなく、サウンドを支えるひとつの要素として反映されたことにより、彼らの繊細な表情が浮き彫りになった。そしてもうひとつ特徴的なのはギター・リフなどにアクセントとして80年代のHR/HMのニュアンスが取り込まれていることだ。非常に二肉感的で生々しい演奏は、バンドにその血がしっかり通っていることを如実に表していると言えるだろう。力強く突き進む痛快な「Breaking Down The Walls」はライヴでオーディエンスがシンガロングする様子が鮮明に想像できる。80年代風HRバラード「Moving On」は、これまでのロックの歴史を踏襲するようなサウンドスケープだ。懐かしくも新しい――まさしく成熟という言葉が相応しい『From Death To Destiny』は、ASKING ALEXANDRIAの大きな飛躍をまざまざと見せつける。
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