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FEATURE

ALEXISONFIRE

2009.08.13UPDATE

2009年08月号掲載

このアルバムはある意味スクリーモというシーンにナイフを突き刺すような作品さ

Writer MAY-E

元々はメタル・バンドやポップ・パンク・バンドをやっていたメンバーが集まり、2001年にカナダはオンタリオ州にて結成されたALEXISONFIRE。セルフ・タイトルとなるデビュー・アルバム『Alexisonfire』をきっかけにポスト・ハードコア・ファンから熱狂的に迎え入れられ、セカンド・アルバム『Watch Out!』の頃には‘カナダが生んだスクリーモ・シーンの救世主バンド’として祭り上げられるほどの人気を獲得、サード・アルバム『Crisis』を含む過去作全てがプラチナム・ディスクを獲得するなど、カナダやアメリカで圧倒的な人気を誇っているバンドだ。そして09年、バンドは新たにヨーロッパと日本のエリアでロードランナー・レコーズと契約を結び、ロードランナー移籍第一弾となる最新作『Old Crows / Young Cardinals』のリリースが決定した。

これまで同様、Julius "JUICE" Buttyをプロデューサーに迎え、60年代にはKING CRIMSONを、最近ではGREEN DAYやFOO FIGHTERSのミックスを手がけた伝説的エンジニア、Nick Blagonaを迎えてバック・トラックをヴァンクーバーのスタジオでレコーディング。そして、地元オンタリオ州にあるジュリアスのホーム・スタジオにて全てのヴォーカル・トラックをレコーディングした、4thアルバム『Old Crows / Young Cardinals』。
 ALEXISONFIREらしい際立ったメロディーラインやギターのドライヴ感はそのままに、本作『Old Crows / Young Cardinals』では、より多様なアプローチと様々なスタイルの楽曲が揃った、新たなALEXISONFIREサウンドが詰め込まれている。冒頭を飾る「Old Crows」は混沌とした世界観がダイナミックに広がる一曲。続く「Young Cardinals」は一転してRISE AGAINSTを髣髴とさせるメロディック・パンク・ナンバーに。同じくオールドスクール・パンクな「Sons Of Privilege」も、彼ららしい男気が溢れた仕上がりだ。賛美歌「Roll Jordan Roll」を元に書かれたという「The Northern」は、ストーナーロックのようなどっしりとした重たさの中にも壮大な美しさを感じさせる。その他、パンク/ハードコアを通ったアグレッシヴな楽曲が多く、いずれも漲るようなダイナミズムを感じさせるが、それぞれのサウンドに合わせるようにヴォーカル・ワークも多様であるのがまた優秀。

衝動的ではあるが過激さから一歩引き、ヘヴィさの中にも美しさを感じさせるなど、静と動のバランス感覚はこれまで以上だと言えるだろう。「Born And Raised」をはじめ破壊力のあるメタリックなナンバーも健在だが、私達が考えるALEXISONFIRE像を遥かに飛び越えた凄みが凝縮されている、バンド史上最も芸術的なアルバムに仕上がった。

「このアルバムはある意味スクリーモというシーンにナイフを突き刺すような作品さ。前作のようなアグレッシヴさという‘原点’はそのまま残し、そこからさらにサウンド自体に幅を持たせるようなアルバムにしたかったんだ。‘スクリーモ’というジャンルの救世主になるつもりはないし、どちらかというとそいつの息の根を止めるようなバンドになりたいんだ」George Pettit(Vo)

ALEXISONFIREは、いわゆるスクリーモのムーヴメントとは対極ともいえる独自の方向性を見出した。シーンというものは、ある程度のキャリアがあるバンドにとってはまとわりつくだけのただの足枷に過ぎないが、その反動あって、バンドは更なる高みに到着したというわけだ。もともとシーンの中でも個性的な存在ではあったが、ポスト・ハードコア・シーン全体を見てもこのアルバムはかなり独創的な作品だと思う。
SUMMER SONIC 05他、来日公演を2度果たしているバンドだが、06年のtaste of CHAOSジャパンツアーではラインアップされるもスケジュールの都合で残念ながらキャンセルになってしまった。本作を引っ提げてのリベンジ来日公演にも大きく期待したい。ALEXISONFIREの新たなエナジー、これは体感するべきだ!

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